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バーガーキング社の日本撤退の背景


飲食店経営 2001年5月号

米国バーガーキング社がJT(日本たばこ産業)との合弁会社事業のハンバーガービジネス、バーガーキング社の日本の展開から撤退することになった背景を分析してみよう。

1)ファーストフードビジネスの難しさ。

今回バーガーキング社が合弁事業から撤退したのは、米国バーガーキング社やJTの経営の手法に問題があっただけではなく、日本におけるファーストフードやハンバーガーチェーンの展開が難しいという事実だ。

マクドナルドが30年前に日本に進出する前には、不二家との提携で大手のバーガーシェフが茅ヶ崎に1号店を展開した。その後、大手商社と手を組んだハーディーズ、ファミリーレストランのサトが数店舗展開したホワイトキャッスル、同じくフレンドリーの展開したカールスジュニア、等ことごとく撤退している。現存している、ダイエーのウエンディーズ、山崎製パンのデイリークイーン、等はかろうじて運営しているだけであり成功しているとは言い難い。成功している外資系の外食チェーンと言うと、マクドナルドとKFC、最近ではスターバックスのみである。デニーズやミスタードーナツは成功しているが米国企業自体が不振で、日本側企業が商標権を買い取り純日本企業としての経営を行っている。

ファミリーレストランは米飯という日常食を出しており、立地の良い場所に出店すれば最初から売り上げを上げることが出来る。しかし、ハンバーガーのようなファーストフードは日本人にとってスナックの範疇を越えることは出来ず、ロケーションが良いだけではなく、ブランドを浸透させるテレビコマーシャルの存在が必要不可欠だ。カップラーメンと同じスナックの位置づけであり、大量のテレビコマーシャルを放映により消費者を洗脳し、強制的に食べさせるという技術が必要になってくる。首都圏で大量のテレビコマーシャルを放映するには最低限度100店舗の出店が必要であり、それまでは赤字を覚悟する必要がある。つまりファーストフード展開の最大のノウハウは商品の味ではなく、マーケティングのノウハウなのだ。それを知らない大手商社や、味だけにこだわるファミリーレストランチェーンでは成功するはずがない。日本企業ではファミリーレストランのロイヤルも2回ハンバーガーチェーンの展開を行ったが、いずれも失敗に終わったのはマーケティング戦略を知らないファミリーレストランの限界を物語っている。

100店舗を展開すると簡単に言うが、そのためには100億円までの累積赤字を覚悟する必要があり、それだけの資金を黙って投入することが可能な企業だけが生き残れる難しいカテゴリーである。

2)合弁会社の難しさ

合弁会社というのは大変難しい事業である。どちらかが過半数の株式を握りコントロールできれば意志決定は簡単であるが、今回のような対等の出資比率の場合にはどちらに主導権や決裁権限があるか明確でない。そのような中途半端な状態の中で、米国、日本の親会社の経済的な状況が変化し、合弁事業を断念するに至ったのである。

<バーガーキング社の事情:リーダーシップの不在>

バーガーキング社は昔から大会社の子会社として経営を行ってきた。バーガーキング社が最も成功したのは大手食品メーカー・ビルズベリー社の子会社の頃である。ピルズベリー社は製粉関係の商品を販売している会社であり、商品開発力が大変強く、バーガーキング社の商品開発に多大な貢献をした。しかし、その後、英国の複合企業グランドメトロ社が親会社になり、数年前にさらに現在のディアジオ社(Diageo)に変わった。英国企業は金融改革後、その優れた金融技術により米国の数多くの企業を買収しその参加に納めている。英国系の企業戦略は長期の展望よりも期間損益をきちんと求めるという厳しい物であり、バーガーキングに要求された条件も大変厳しかったようだ。子会社の運営は自由裁量権は広く与え自由闊達に経営させる場合と、日常の決済まで厳しく行う場合とある。バーガーキング社に対する子会社運営の手法は後者であり、日常の運営に必要な経費決済に至るまで米国親会社が厳しく管理をしていたと言われる。その結果、米国バーガーキング社の社長(CEO)の交代は大変頻繁であり、12年間で8名が交代している。米国では社長のリボルビングドアー(しょっちゅう入れ替わる)と揶揄されている。それに引き替えマクドナルド社の場合は1955年の創業以来、創業者のレイ・クロック氏を入れて4名しか変わっていない長期安定政権である。

特にここ数ヶ月は実質上の社長が不在であり、Diage社が直接管理をしていた。その結果過去半年の売り上げを見てみると既存店の前年比の売り上げと利益は大幅に低下していた。

競合のマクドナルドとウエンディーズ両社の同時期の売り上げと利益は増加していたのにも関わらずだ。

そして、やっと3月にバーガーキング社の新社長が決定した。新社長のDasburg氏は外食とは畑違いの航空会社ノースウエスト社の社長を勤めていた。不振のノースウエスト社を建て直し、上場した手腕を買われてバーガーキング社の社長に就任したのである。

米国バーガーキング社の売り上げ不振は同社のフランチャイジーに大きな打撃を与え、フランチャイジーは親会社による不当な経営介入を嫌い、バーガーキング社を分離し米国において上場させるように要望をしており、それに対する親会社の回答が新社長のDasburg氏のスカウトである。新社長の任務は新しい広告代理店による主力商品のワッパーのキャンペーンによる売り上げ奪回と、親会社からの分離上場と言う難しい物である。その難しい状況にさらされている米国バーガーキング社が日本の合弁事業に対する精神的、経済的なサポートを継続するのは大変難しいというのが客観的な状況であったわけだ。

<日本の事情>

バーガーキング社の日本における当初のパートナーは西武鉄道系の西武商事であった。バーガーキング社はマクドナルドが日本に進出する以前より、日本への進出を検討していた。筆者が30年前にレストラン西武(現、西洋フードシステムズ)に勤務していた際に、バーガーキング社との業務提携を模索していたが、バーガーキング社は日本が牛肉輸入を自由化していないことを理由に断ってきた経由がある。その結果レストラン西武はコルネットという独自のハンバーガーチェーンの展開や、米国ダンキンドーナツ社との業務提携を行うことになった。それ以来、数多くの日本企業と合弁や業務提携の話はあったが、その都度消極的なバーガーキング社の姿勢がその実現を妨げていた。西武商事との業務提携(当時は正式な合弁契約ではなく試験的な店舗展開であった)は親会社のグランドメトロポリタンが所有していたインターコンチネンタルホテルをセゾングループに売却した経緯から、日本での展開として西武鉄道系の西武商事が浮かび上がったようだ。グランドメトロとしては、西武鉄道とセゾングループを同一の会社と認識し、多店舗展開をするパートナーとして選定したと言われている。

しかし、その後、西武グループの所有物件を中心とした店舗展開を考える西武商事との経営戦略の違いから、より資本力の強いJT社との合弁に転換をすることになった。JT社はタバコという農産物を扱う関係から、食品や外食事業に対する取り組みは古くから行っており、以前、シカゴのホットドックチェーンのポチュロ社と提携しシカゴドックという名称で店舗展開を行ったことがある。その当時のベテランの外食事業担当者などが中心となり日本におけるバーガーキング社の展開を開始した。そして、資金力に物を言わせ、小規模なハンバーガーチェーンの森永ラブの店舗を買収するという荒技で店舗数を拡大した。

しかし、ハンバーガービジネスは首都圏で大型店舗を100店舗展開後のテレビコマーシャルを行うまでは大規模な投資が必要であり、それを実現するための積極的な投資戦略は、短期的な利益の実現を要求する英国親会社の消極的な経営方針とはそぐわず、店舗展開の遅れというジレンマに陥っていた。

そのような状況の中、JT社は海外タバコ会社の買収という莫大な投資金額の必要により、ビジネスの絞り込み、本業回帰を迫られることになり、積極展開の出来ないバーガーキング社のビジネスを断念するのは当然の成り行きであろう。

3)バーガーキング社の海外展開の難しさ

<バーガーキング社とマクドナルド社の海外展開の差>

米国においてマクドナルドが12000店を展開しているのに対して、バーガーキング社は8000店舗を展開する第2位の巨大なハンバーガーチェーンであり、地域によっては互角の商売を行っているが、海外の展開に関してはバーガーキング社が成功したのはオーストラリアだけだと言われている。オーストラリアに関してもバーガーキングの商標は使えず、他の商標名を使用している。

この海外展開の違いは海外における合弁会社選択の手法の異なりだろう。海外での展開は単に経済的な物だけでなく、政治、経済、宗教、生活習慣の異なる国にどうやってとけ込むかという難しさがある。ハンバーガーという日常食を食べさせるには最も保守的な人間の習慣を変えなくてはいけないのだ。

マクドナルド社が日本に進出して30年(初めての海外展開)なるが、当初は日本円のドルレートは360円、牛肉は自由化されておらず高価、米と魚と醤油が主食、ポテトも種類が異なる。と言うような難しい時代であった。しかしながら外食産業の将来性に目を付けた大手商社や流通企業、外食企業がマクドナルド社にアプローチした。一番執着したのは流通トップのダイエーの中内社長(当時)であり、契約直前までこぎ着け、日本人として最初にマクドナルドのハンバーガー大学に学んだと言われている。そんな大企業のアプローチを横目に、当時は小さな輸入商社を経営していた藤田田氏がマクドナルドとの合弁契約にこぎ着けた。その理由は藤田氏の米国のビジネスパートナーと、創業者のレイクロック氏が知り合いであり、その縁で藤田氏とであったレイクロック氏がその経営センスに着目したというのがビジネスの始まりである。

<合弁会社の経営者の条件>

マクドナルドが日本を始めとする東南アジアで大成功を納めたのは、現地での合弁相手の選定方法である。マクドナルドの合弁相手の選定は相手の会社規模ではなく、経営手腕を持った個人である。日本マクドナルドとの契約は藤田田氏との個人契約であり、氏が万一の際には契約が白紙に戻るという条項が入っていると言われるように、契約はあくまでも経営能力のある個人と行うということだ。そして、契約期間中は対等の出資比率であっても現地の合弁相手の経営者の全面的に経営判断を任せるという徹底した権限委譲を行っている。

<合弁相手へのサポートと教育>

もちろん、権限は委譲するのだが、金銭的、技術的な問題が生じれば米国の専門家を派遣し徹底的にバックアップするという姿勢を示している。マクドナルド社が特に優れているのは命令ではなく、徹底した教育を施すと言うことだ。その国に問題があればそれは殆ど経営手法を知らないと言うことであるから、まず徹底的な教育、いや、洗脳を施すと言うことだ。そのために米国に数百室のホテルを併設した立派なハンバーガー大学を建設し、翻訳者を用意し、世界各国の経営陣を母国語で教育している。教育内容は店舗の日常的な運営に必要な店長コース、スーパーバイザーコース、統括スーパーバイザーコース、部門部長コース、フランチャイジー指導者コース、トレーナーコース、等のチェーン展開に必要なライン教育にとどまらず、マーケティングコース、店舗開発コース、会計コース、商品開発コース、等、会社経営に必要な経営手法まで詳細に教えている。また、教育のみならず、問題があれば専門家を派遣し指導するようにしている。場合によっては、各国に専門家を長期出向までさせてのサポートを厭わない。

また、単に教育するだけでは実務が身に付かないと言うことで、日本や東南アジアの国に関しては米国マクドナルド社の店舗をフランチャイジーとして運営させたり、米国本社の各部に出向をさせたりの実務経験を提供している。

それに対してバーガーキング社の経営指導方針は全て米国と同じ基準であり、厳しい店舗運営水準を要求している。教育もマクドナルドと同様のマニュアルや教育体系を持っているが、どちらかというと店舗運営面の教育システムであり、ライン以外の教育を行うという考え方はないようだ。このサポートの差が世界各国におけるバーガーキング社の店舗の差であると言えるのではないだろうか。

4)店舗運営、味、価格

米国におけるバーガーキング社はマクドナルドにひけをとらない強力な会社だ。その秘訣は効率のよい店舗設計、優れた商品開発能力、優れたマーケティング能力、であり、技術的には立ち後れたマクドナルド社よりも優位に立ち、時々マクドナルド社よりも高い売り上げの伸びを示すことがある。(技術的な説明については今月号別項の飲食業の技術革新を参考にしていただきたい)

マクドナルドとの一番の違いは経営効率の高さである。マクドナルド社は当初をのぞいて同一フランチャイジーに多店舗展開を許していない。現在では多くても10店舗ほどであり通常は3〜5店舗を任せるのが普通だ。これは、1フランチャイジーが多店舗を展開すると投資家のようになり、店舗への関与が薄まるという考え方だ。

それに対しバーガーキング社は1人のフランチャイジーが最大300店舗を持つという、企業経営のフランチャイジーの存在を許している。日本のKFCやミスタードーナツのように地方の有力企業や、地元財界人を選び、その人に複数の店舗展開を許している。その結果、フランチャイジーの経営能力は高く、各ジーは自前のスーパーバイザーを抱えるケースも多く見られる。このように経営能力の高いフランチャイジーを抱えるバーガーキング社のジーに対する経営指導の労力は少なく、経営効率は大変高いと言える。その反面、緻密な経営指導の必要な海外展開においては、きめ細かな経営指導能力のある店舗管理者が不足し、現地での展開がうまくいかないと言う傾向があるようだ。

味の点ではバーガーキング社のハンバーガーは米国では本格的な炭火焼きと、大型の野菜たっぷりのハンバーガーで人気を呼んでいるが、日本人は大型の肉よりも軟らかいパンを評価するように、日本人独特のハンバーガーに対する品質基準が大きな課題であった。さらに日本経済の不振とマクドナルドの65円ハンバーガーの攻勢という経済状況に、バーガーキングの肉の大きさと、おいしさが消し飛んでしまったのだ。この味の現地化への取り組みの遅さと、価格の高さは現在の不況の日本では致命的であったといえるだろう。

5)日本での外食合弁会社の成功の要因

上記のように難しい日本での合弁会社の成功の要因を分析すると人であろう。

成功した、日本マクドナルドの藤田社長、KFCの大河原社長、スターバックスの角田社長を見てみると共通した項目がある。

<1>外食の経験は少ないが、マーケティングの手法に熟知している。

先ほど申し上げたように文化の異なる日本でなれない食品を販売するためには卓越したマーケティング手法の知識が必要であるからだ。スターバックスの日本側のパートナーであるサザビー社は輸入商品販売などのアパレルのビジネスが本業であり、マーケティングの手法に大変優れているというのは、輸入商社を経営している藤田氏と同じである。

<2>英語に堪能

合弁会社との交渉は文化や価値観の異なる提携相手への熱心な説得が必要であり、流暢な英語と海外文化への理解が必要不可欠である。

<3>優れたリーダーシップ

合弁会社の難しいのは海外との交渉だけでなく、日本の出資会社への説得、交渉という難しい仕事もあるというわけで、成功した3氏は際だったリーダーシップを持っている。

<最後に>

以上のようにバーガーキング社が撤退したのは、日本のマーケットにおけるファーストフードの取り組みの難しさを物語っていると言えるだろう。

 


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