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10店舗を越えるチェーン店の店長になるために
シリーズ第14回
体験的店長実務ステップアップ講座第6回目


店舗を運営する能力:フロアーコントロールとは何か?

やっと不得意だったペーパーワークをマスターしたし、アルバイトに作業手順書を作成させその達成度をチェックするチェックリストもできあがった。こうやって今まで問題だったオープニングとクロージングの体制が確立した。

まあ、ここまでは要領よく体制固めを出来た。しかし、フロアーコントロールという難題が待ち受けていた。マクドナルドのマネージャーに要求されるのはハンバーガー類の製造や販売でなく、マネージメントだった。そのマネージメントで最も要求されたのがフロアーコントロールだった。

8月号でも述べたがファーストアシスタントマネージャーに昇格するときにテストを受けた。ではどんなチェックをされたのだろうか?当時の筆者のノートを基にチェック内容を見てみよう。

1ST ASST MGR CHECK LIST  

店舗名         被評価者氏名

入社日         勤務年数

店舗経験

ハンバーガー大学受講口座と受講期間

  1. マネージメントの知識の評価

    1. モチベーション能力

      部下が最高の仕事を成し遂げることが出来るように部下に対するモチベーションになる 雰囲気を作る能力があるか?

    2. プランニングとオーガニゼーションの能力

      決められた時間の枠内で、自分の基本的な職務のプランを立て、組織的に編成する能力 があるか?

    3. 評価とカウンセリングの能力

      当社のQSCの最低基準と関連づけてアルバイトの仕事を正しく評価する能力がある か?更に仕事の質を高める必要のある分野についてこれら部下の相談にのる力量があ るか?

    4. 命令と伝達の能力

      命令系統の上下の方向のコミュニケーションを明確に伝える能力があるか?

    5. フロアーコントロール(スケジューリング、ポジショニング含む)能力

      QSCと人事管理とを適切に行えるように、フロアーの状況を予想し処理する能力がある か?

    6. 知識と熟練(正しい判断)

      詳細なインストラクションを参照にしなくても正しい意志決定を行える能力があるか?

      評価者は不可になった項目の理由と改善案を具体的に述べよ

  2. 基本的な業務知識についての評価
  3. (ペーパーワークの知識と能力)

    1. 週間原価コントロールシートを全部正確に作成する能力があるか?
    2. 週報の正確なレポートを作成する能力はあるか?
    3. 全ての月末の書類を作成する能力があるか?
    4. 週と月の店舗売り上げ予想を正確に立て、それを基にアルバイトのスケジュールを効率よくたてられるか?
    5. 発注の為の知識として原価の知識と理解があるか?
    6. 日、週、月の正確な売り上げ予想と製品原価を基に原材料を正確に発注できるか?
    7. 週、月単位で原価ロスを評価し、正確な対策を立てる能力があるか?

    (現金管理能力)

    1. 釣り銭や小口現金などの現金管理を正確に行える能力があるか?

    (損益計算書の知識と能力)

    1. 店舗の運営に関係のある全ての請求書を正確に分類し、処理することが出来るか?
    2. 管理可能費と不能費に分類し損益計算書を正確に作成できるか?

    (施設・設備・調理機器の知識と能力)

    1. 全ての調理機器類の故障がわかり、その対策を簡単に出来る基本的な機器の知識があるか?
    2. 全ての調理機器の調整を正しく行えるか?
    3. 事故防止メインテナンスマニュアルを理解し、店舗の事故防止メインテナンスプログラムを作成、実行できる能力があるか?

    (労務管理能力)

    1. 労働基準法、タイムカードの計算、給与支払い業務、募集、面接、オリエンテーション、給与管理などに関する人事管理についての知識があり実行できるか?

    (トレーニング能力)

    1. アルバイトのミーティングや意識調査をアルバイトの参加意識を高めながら有効に行 えるか?アルバイトにモチベーションを与え活性化させられるか?
    2. アルバイトの基本的なトレーニングとフォローアップを行う能力があり、店舗のアルバイトトレーニングプログラムを有効に行える知識があるか?
    3. ベテランのアルバイトをトレーニングし彼らの弱点に注意を与えられるか?

    (コミュニティリレーション活動能力)

    1. コミュニティリレーション活動を通じて会社のイメージを高く維持できるか?

    (品質管理能力)

    1. 店舗の朝晩の準備と清掃作業についての知識があり、品質管理基準に基づき品質を維持できるか?

    (苦情処理能力)

    1. 顧客からの店舗へのクレームや従業員の労災事故の際の処理能力があるか?

    評価者は不可になった項目の理由と改善案を具体的に述べよ。

    以上の他に被評価者の成果があれば具体的に述べよ。

    今回の審査の結果     店     MGRを推薦致します。

                                    致しません。

    審査年月日      審査者氏名

当時のマクドナルドは米国のチェックリストを直訳で使っていたため堅い文章だが、かなり膨大なチェック内容だと言うのがおわかりだろう。しかしながら現在のマクドナルド社のファーストアシスタントマネージャーのチェックリストは上記の数十倍もの内容を網羅しており、それに合格するのには1000ページ近いマニュアルを暗記しなければならないほど精密になっている。筆者の能力では今だったらとうてい通過しないだろう。

知識は殆ど合格だったのだが、どうも筆者のフロアーコントロールが問題だったようで、チェックのSVから「フロアーコントロールがちょっと弱いね」と一言釘を刺された。

フロアーコントロールのチェックは売り上げの高い日曜日のピーク時間に店長の代行として店舗を切り回す時を見て、店長になれるかどうかの判断をするわけだ。当然そのときにはまだフロアーコントロールの力はまだなかったから、店のアルバイトたちの協力をもらいあたかも自分の采配が良いかのごとく誤魔化して何とかパスしたわけだ。

そんな優秀なアルバイトのいないS店ではそんな誤魔化しは効かなかった。それに前の店舗とは比較にならないくらい日曜日の売り上げが高いから、ちょっとしたミスが命取りになったわけだ。優秀なアルバイトがいてもフロアーコントロールは難しいのに、まだ再建中のS店ではなかなか旨く行かなかったわけだ。

チェックリストのフロアーコントロールという項目を見ると、フロアーコントロール(スケジューリング、ポジショニング含む)能力とは「QSCと人事管理とを適切に行えるように、フロアーの状況を予想し処理する能力があるか?」とだけしか書いていない。

 そこで悩んでいたら、店長に「原点に戻って、入社時に習ったマネージャートレーニングプログラムの項目をもう一度見てはどうだ」と言われた。

そこでもう一度見直してみた。

フロアーコントロールの章

『オープニングマネージャー(朝番社員)』

(開店時)

  1. 店舗外観のチェック(店舗の位置するブロック全体)
  2. 夜間清掃作業のチェック
  3. 店舗内をチェックし5感を使い異常箇所を発見する
  4. 前日の調理機器清掃状況のチェック
  5. 金庫内の釣り銭の確認
  6. レジスターに釣り銭を用意
  7. 原材料の品質チェック
  8. 電源を入れる
  9. 原材料の在庫表のチェック
  10. マネージャー連絡ノートの伝達内容確認
  11. 調理機器の調整
  12. アルバイトのスケジュールの確認
  13. 原材料の補充の確認
  14. 原材料の業者搬入の検品
  15. 開店準備作業の進行度チェック
  16. 売り上げ目標のチェックとその準備

(課題)

  1. 店舗を定刻に開店する
  2. 人、物、金の点検をして問題があれば対処する

(開店から昼のラッシュまで)

  1. 常に店舗全体を見える場所で管理する
  2. 店舗を離れる際には代わりの責任者を置くこと
  3. アルバイトの配置のバランスをとり、最も生産性が上がるようにする。
  4. 品切れや廃棄処分の出ないよう、客足を常に見ながら商品を製造する
  5. スロー時とピーク時を理解し、スロー時に清掃や資材の補充を行いラッシュに備える
  6. 厨房ばかりでなく客席、店外にも気配りをし、問題がないようにする。
  7. カウンタ前の客に注意し、正しいサービスをしているか、待たせていないか、古い商品を出していないか注意する。
  8. 各エリアの仕事ぶりに注意を払い、正しい仕事をしているか確認する。
  9. 時間帯売り上げをきちんと把握する
  10. 休憩を計画的にアルバイトにとらせ、昼時などのピークに出すことのないように気を配る。
  11. アルバイトが休憩から時間通りに戻るかチェックする
  12. 数多くあるレジスターを有効に開き、レジ担当者を配置する。

(目標)

  1. 顧客に最高のQSCを提供できるよう気を配る
  2. ピークに向けて暇な時間から用意をし、落ち着いて客を迎える

(遅番社員への交代の準備)

  1. 各エリアの清掃をきちんとする
  2. 客席の清掃とゴミ箱の点検と交換をする。店外に散らかっているゴミを綺麗に片づける。
  3. 夕方に備えて原材料を補充する。
  4. アルバイトの休憩漏れがないように確認する

(目標)

  1. 顧客に最高のQSCを提供する
  2. 閉店までの営業に備え、準備をきちんと行い、後任者が慌てなくても良いようにする

『クロージングマネージャー・遅番社員』

(昼過ぎから夕方のピークを迎えて)

  1. 店舗の外観と周囲1ブロックをチェック
  2. 客席チェック
  3. 売り上げ目標の達成状況のチェック
  4. オープニングマネージャーとの引継
  5. 原材料在庫の確認
  6. 釣り銭の確認
  7. マネージャー連絡ノートを確認する。
  8. アルバイトのスケジュールをチェックする

(目標)

  1. 引継を完全に行い、顧客に最高のQSCを提供する

(夕方のピーク後から閉店前まで)

  1. オープニングマネージャーのピーク後からシフト交代までと同様
  2. 顧客の不快感を与えないように閉店作業準備に取りかかる

(閉店清掃作業)

  1. 看板、客席照明等を消す
  2. ドアに鍵をかける
  3. 閉店清掃作業を指示する
  4. 現金日報などの書類を作成
  5. 店舗の最終の安全確認
  6. 夜間清掃への指示を与える。

以上のチェックリストは入社後見習いを卒業するときのチェックリストで、店長と同じ能力になるにはそれだけでは足りないようだった。

ではどんな現象があったか振り返ってみよう。忙しい状況下では問題点に対して即座に正しい決定を下さなくてはいけないし、ピーク時に向けての準備を具体的にしていないと同じアルバイトの人数でも時間帯の売り上げが大きく異なるのだ。つまり、時間帯責任者のマネージャーの準備と人員配置により売り上げが異なるという点だ。

ドーナツ時代は売り上げを上げるためには美味しいドーナツの品質に気をつけて、近隣への販売促進が必要だったが、ブームにのったハンバーガー店舗ではマネージャーのフロアーコントロールが売り上げを決定するのであった。

少し余裕が出てきたので店長と自分のフロアーコントロールを比較してみた。そうすると、店長は一カ所に落ち着いていないで、隅々まで定期的に確認して歩く動きが素早いのだ。朝入店するときには、入り口からすぐに事務所に行くのでなく、店舗に入り夜間清掃員の清掃をさっとチェックし問題があればやり直しの指示をする。歩きながら冷蔵庫や調理機器などの全てのドアーを開け内部をチェックする。そしてなかの原材料の確認や清掃状態をチェックするわけだ。

大きな問題がなければすぐに事務に行き、金庫内の売り上げと釣り銭をチェックし、連絡ノートを見ながら必要な物を手配する。すぐに店舗に入り開店のアルバイトの作業をチェックしながら原材料の発注とアルバイトのスケジュールを確認し、必要ならすぐに電話して手配する。全く無駄がない。

そこで、店長の真似をしてきびきび動くことにした。細心の注意を払い機械のチェック、原材料のチェック、従業員の配置を確認してピークを迎えた。

我ながら完璧なQSCだと自己満足していたら、アルバイトからブーブーと不満の声が聞こえる。あまりフロアーコントロールに集中しすぎてアルバイトを休憩に出すのを忘れていたのだ。そこで慌てて複数のアルバイトを休憩に出したら、客の波がまた押し寄せて店内はぐちゃぐちゃになってしまった。

更に悪いことに、売ることばかり考えて食材の補充を忘れていたから、バンズはないし、ソースもなくなると言う滅茶苦茶の状態だった。古手のアルバイトには馬鹿にされるし、苦虫を噛みしめる店長の顔を横目で見ては冷や汗をかくなどいまだに夢に見る事があるくらい悲惨だった。

フロアーコントロールを得意のチェックリストでカバーすることは不可能だった。店の状況は日々変化するし、アルバイトが急に欠勤したり、天候が変わり温度が急上昇しシェークが出たりと、一日たりと同じ日はなかったからだ。そこで、その優秀な店長が何をするのか徹底的に真似をする事にした。

そうして観察を続けたところ、数枚の紙を持ち気がついた時にすぐにメモをしているではないか。一日の終わりになるとそのメモが数枚の紙にぎっしりとなっている。次にその優先順位をつけている。一日の終わりにはその各項目に優先順位をつけて、終わった項目には線を入れ消し、終わっていない項目は赤丸をつけている。聞いてみたら赤丸は優先順位の高い物で、翌日にその赤い印からすぐにやるのだという。また、緊急の場合はマネージャー連絡ノートで翌朝のマネージャーに指示をしておく。

そこで、どれだけ気がつくか筆者も真似をして、気がついたことをすぐにメモするようにし始めた。最初の内は店長の1/3もメモを取ることが出来なかった。そこで店長と同じレベルまで気がつくようにしようと毎日メモを取りそれを整理するようにした。こうしてだんだん自分なりのチェクリストが頭の中に刻み込まれるようになってきた。

次回はフロアーコントロールをどう科学的に分類し、誰でも出来るようにしていったかを見てみよう。

続く

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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