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10店舗を越えるチェーン店の店長になるために
シリーズ第17回
体験的店長実務ステップアップ講座第9回目


店長への昇進

筆者の弱点だったフロアコントロールも優秀な店長の元で向上していった。店長が手を取り足を取り丁寧に教えてくれるわけではないが、やはりそばに手本となる優秀な店長がいることは最も勉強になった。だんだん自信もついてきた筆者はある日SVに「王君ちょっと話があるんだ」と呼ばれた。当時のSVはマクドナルドポリスと言われていたくらい怖い存在で、話があるという事は怒られるか、誉められるかのどちらかだった。

筆者は怒られるような失敗もしていないので、店長昇格の話かなと期待した。案の上、店長昇格を申し渡された。「で、どこの店ですか?」「え、ここに決まっているじゃないか」には思わず絶句してしまった。筆者は新規開店の店長になるのだとばかり思っていたら、今までの店長が新規開店の店に行き、筆者がこのどうしようもない店に残るわけだ。店長への昇格はうれしかったが、またこの店に長くいるのかと思うと暗澹とした気持ちになった。

前任の店長は「王君、この店をよく知っているのだから問題ないね、引継はしないよ、後はグッドラック!」と言う軽やかな言葉を残してうれしそうに出ていった。

店長に昇格し店舗をスムーズに回せるように飛び回ってあっと言う間に数ヶ月が経過した。そして、又、SVに呼ばれた。しかし、今度は厳しい叱責が待っていた。

店舗改造の問題点とその副作用

繁華街のターミナルの百貨店の一階に位置してS店舗を最近改造したのだが、それは改造でなく改悪であった。元々の店は、1週間くらいで組み立てたプレハブの様な簡易店舗であり、排水がたまり異臭がする、空調が効かない、床が滑る、配管が露出してつまずく等、動きにくく、衛生的でないと言う色々な問題を抱えており、恒久的なしっかりした店舗に作り替える必要があった。しかし、改造の過程で百貨店の入り口との間に壁が出来、レジの数が減少し、開口面積が減少しただけでなく、客席が全くなくなってしまった。

この当時、まだマクドナルドでも店舗の規模と売り上げの関数を把握していなかった。店舗そのものの大きさよりもロケーションが売り上げを決定していたからだ。初期の銀座、新宿二幸、お茶の水店等の客席無しの立ち食いの店は、同時期に開店した大井町店、代々木店などの客席のある広い店舗より売り上げが良かった。しかしながら、客席がないとはいいながら、当時流行しつつあった歩行者天国により、歩道にテーブルが置かれ、実質的には客席が無制限にある状態だった。また、百貨店などへ出店した店は、ショーウインドー的に通路に対して開口部が広く、奥行きが浅いと言う形状で、レジスターの数をかなり置けるようになっていた。

後で分かってきたのだが、厨房の能力に見合った客席数、レジスターの数、カウンターの幅、入り口からカウンターまでの距離と言うのが店舗の売り上げの能力に影響すると言うことだ。たとえば入り口からカウンターまでの距離だが、当時は入り口から近い方がよいと思っていた。ところが、忙しいときにレジスターの前に数人並ぶと、通行している人からはすごく込んでいるように見え、並ばないで他の飲食店に行ってしまう。入り口からカウンターまでの距離はある程度はあった方が込んでいないように見えて時間当たりの売上は高くなるるのだ。

最近、ファミリー弁当を経営している東秀がオリジン弁当という弁当とお総菜の店舗を展開した。従来のファミリー弁当は路面に直接カウンターが面している、いわゆる「ほっかほっか弁当タイプ」だったが、コンビニエンスなどのCVSの競合の増加により苦戦をしていた。それが、30坪ほどの大型の面積で、店内にお総菜を置き、奥のカウンターで弁当を注文生産する形態のオリジン弁当の店舗を開発し大成功している。お総菜を置いてはいるのだが、売れ筋はあくまでも弁当だと言われている。

なぜ従来より弁当が売れるかというと、弁当屋は注文してから待たされるが、数人の人が待っているのを見ると、すごく込んでいるように見える。また、女性は道路で待っているのが何となくみすぼらしく感じる。ところが、オリジン弁当の場合は広い店内の奥にカウンターがあるから、10人くらい弁当を待っていても込んでいる感じがしない。また、待っている間にお総菜を見たりして飽きることがないし、空調の効いた店内にいるから待っていても快適だ。オリジン弁当の成功の秘訣は色々あるだろうが、筆者はこの待つことが出来る空間作りが消費者に受けピーク時の売り上げに貢献していると思っている。

そんな理論的な裏付けがない状態で改造した店舗だから、ピーク時の売り上げをとることが出来ないし、従来、百貨店が閉店した後ロビーに置いていた客席が使えなくなり、百貨店営業時間外の売り上げが激減してしまった。

また、顧客のマクドナルドに対するイメージも変化が生じてきた。マクドナルドのハンバーガーとマックシェイクを歩行者天国で歩きながら食べることはファッション的な流行となっていた。しかしながら店舗の増大と共にその希少価値が薄れてきた。従来はわざわざ繁華街に来ないとマクドナルドはなかったが、今回、前任の店長が赴任した郊外の店舗などの増加により、わざわざ繁華街までこなくなるという、自社内競合も生じてきた。S店舗の存在する同じエリアでもすでに数店舗ができ、ターミナル駅から出る私鉄沿線にも数多くの出店が開始されていた。

そのような周囲の環境の悪化にも関わらず、店舗の改造が売り上げを取れないような形態にした物だから売り上げは、低迷の一方だった。ところが店長になり立ての筆者にはそんな危機感がなく優先順位も間違っていた。以前から書いているがこの店舗の最大の問題点はアルバイトがスケジュール通りに店舗に入らない、マニュアル通りにQSCを守らないと言う低いモラルだった。そのためにどうやってスケジュールを守らせて、QSCを維持するかに優先順位を置いていた。当日の天気が悪化し売り上げが低下してもアルバイトを帰すことをしなかった。そうすることがモラルをしっかり維持する上で必要だという信念を持っており、その投資のお陰で店舗のモラルは高くなり、無断欠勤や遅刻はほとんどなくなってきた。しかし、スケジュールの基本となる売り上げは徐々に低下していっているのに基本スケジュールは以前のままであり、当然のことながら売上高人件比率は以前より増加をしていた。

マクドナルドはシビアーな厳しい会社だった。SVは「QSCが大事なのはわかる。でも我々は慈善事業をしているのではない。利益をきちんとださないと会社はつぶれる。もっと利益を重視するべきだ。」と厳しい注文を付けだした。マクドナルドの店舗を判断する基準はQSCと人物金だ。幾らQSCが良くても人物金もきちんとしていなくてはならない。その中でも金に対する目は特に厳しい物があった。売上高の達成度、利益管理に対する要求は厳しく、同じような悪い数値が2週間も続くと店長会議で厳しい叱責にあう。

統括SVを経験してから米国シリコンバレーにある日本の直営店に責任者として在任していたときに米国の会社の厳しさを実感させられた。ある時期、売り上げが落ちたことがある。直ちにSVが電話をしてきただけでなく、遠いシカゴの本社の財務担当副社長から直々に電話があり、その理由を細かく聞かれたのには驚いた。当時すでにマクドナルドは全米で5000店舗近くあるのにも関わらず、副社長という多忙な地位にいながらも各店舗の売り上げに目を光らしているのだった。そんな数値に厳しい理由はマクドナルド本社は株式上場をしており、株主への責任として絶対に前年度の利益を上回るという厳しい方針からだった。QSCと言うモットーと共にこの厳しい財務コントロールがマクドナルドを2万店舗以上の巨大チェーンに成し遂げたわけだ。

当時の日本マクドナルドは急速展開中で一見順風満帆のように見えたが、急速展開のために資金を調達しなければいけないし、郊外の新店舗の売り上げはまだ低く、利益をだすには至っていなかった。そのため筆者のS店のような繁華街立地の売り上げの高い店への収益に大きく依存していたから、筆者のようにノホホンとしては困るのだった。

マクドナルドでは同じ注意を2度与えない。同じ注意を2度されるときには降格か他店への左遷が待っている。また、モットーに「ノー・エクスキューズ」、つまり「言い訳は無用」と言うのがあり、言い訳、弁解は通用せず、実際の成果で答えなくてはならなかった。当時のアルバイトの時間給は250円から300円くらいであり今と比べると格段に低かった。売り上げの高い店舗の場合アルバイトの売上高人件比率は5%と低かった。しかし、石油ショックのために、だんだん人件費が上昇し、当時のS店の人件費は8%以上になろうとしていたが、SVからその人件費が8.5%を越えないように死守する指示を受けた。

人件費管理が甘くなっていたのにはもう一つ理由があった。ファーストアシスタントマネージャーの時にはスケジュールを担当し、きめ細かく管理していたが、店長になりそのスケジュールの作成、管理業務をアシスタントマネージャーに任せっきりにしていたということだ。幾らアシスタントマネージャーに任せてもその内容をチェックし、悪ければ修正をすることを怠っていたということだった。

そこで、人件比率が確実にコントロールできるように毎日人件比率をコントロールすることにした。従来は、予算と実際の売り上げや人件比率の誤差は月末にならないと分からず、改善が出来ないような状態だった。そこで、毎日予算と実際の売り上げと人件費を計算し、1週間で予定の人件比率になるように考えた。最悪の場合次の一週間で予定の人件比率になるようにした。目標の人件比率差異は0.1%を目指した。

労務費コントロールシート

まず、予算の売り上げを日別に記入する。次に累計売り上げだ。次に日別の予定労働時間数と平均時間給、人件費、人件比率と記入する。次にそれぞれの実際の売り上げと人件費などを記入する。そして、毎日累計の人件比率が予算通りかチェックする。良くあることだが、売り上げが減少しているのに労働時間が予算通りでは人件比率は大幅に増大するからだ。

基本スケジュール表の作成

次に行ったのは適正なスケジュールの作成だ。表1は当時使用していたスケジュール表でマクドナルドが最初に日本に導入し、今では外食チェーンや食品スーパーなどで採用されている。スケジュールを棒線で引いてありビジュアルに確認できる物だ。

まず、計画売上の欄に時間帯別の売り上げを書く。計画売上を記入する上の注意点は、現実的な売上予測をすると言うことだ。多くのチェーンは年頭に売上予測を行い、その予測に基づいて活動をするが、経済状況の変化や、競合などの環境の変化、昨年のような夏の大腸菌騒ぎによる売上の低下など、思いがけない要素があり、日々刻々と状況は変わってくる。そこでこの計画売上は最近の状況を見ながら最も確実な数字を入れていく必要がある。毎日、毎時間売上を記録しているから、その前月の同曜日の時間帯売上の平均値を使用する。ただし、単に平均値を使用するのではなく、4―5日の同曜日の売上全体を参考にする。何故かというと、雨や気温の変化で売上は変動するから、それを加味して平均値を使うか、特殊な日を省くか決めるわけだ。決して機械的に平均値を使用してはいけない。

人時生産性(一人当たり一時間の売上)

次に必要なのはその売上に応じた必要なアルバイトの時間数を記入していく。当時のマクドナルドはまだ人時生産性の基準は明確ではなかった。ここで言う人時生産性とは一時間当たりの売上をアルバイトの人数で割った数字を言う。人時生産性は2つに分けることが出来る。朝の開店前や閉店後に必要な清掃と準備作業、原材料の搬入作業、深夜の清掃作業など、売上に関係なく必要な作業時間を非生産性労働時間(固定労働時間)という。この作業はどんなに売上が低い店舗でも発生する。ただし、店舗が大きいと清掃時間を増加する必要があるし、2階や3階の客席があると営業時間中でも清掃作業や、客の導入などの作業が必要になってくる。

次に売上に応じて必要な調理や接客の労働時間だ。これを生産性労働時間(変動労働時間)という。生産性労働時間というのは売上により変わってくる物だ。売上が少ないとアルバイトは一人か二人で店舗を切り回すことになる。人数が少ないと、調理、サービスなどを一人でこなす必要があり、歩き回ったり、手を洗ったりする余分な時間が生じる。人数が多くなると自分の持ち場を動かずに仕事が出来るから一人当たりの生産性が上昇する。そのために生産性労働時間は時間当たりの売上が増大するにつれて、数字が大きくなる。

本来は、非生産性労働時間(固定労働時間)をスケジュール表に書き込み、次に、売上に応じた生産性労働時間(変動時間)を記入するわけだが、当時はまだこれらの概念がなかったし、売上に応じた生産性労働時間というチャートもなかった。そこで、時間帯毎の売上に合った適正な人員を算出する必要が出てきた。

人時生産性(人時売上高)とは時間当たりの従業員一人の売上高をいう。よくマクドナルドの人時生産性はどうですかと言われ返事に困ることがある。あるサービス業のチェーンの店長会議に出ていたときに驚いたことがある。店舗を月間の人時生産性の高い順に並べて評価していたからだ。人時生産性を月間で見ることは大変危険なのだ。実はそのチェーンは数ヶ月前から売上の減少という減少を抱えていた。その理由は人時生産性を上げるため一人の顧客に必要なサービス時間を削減し、その通りいけるかどうか月間の人時生産性の順位で評価していたのだ。先程も述べたように時間当たりの人時生産性は売上により傾斜的に高まるために売上の規模により、または、売上のパターンにより異なるということだ。それを知らないで数字だけ一人歩きし、生産性は高くなったがその結果顧客を待たせる結果となり売上を落としてしまっていたのだ。

人時生産性を論じる場合には人時生産性を高めた場合のデメリット、例えば待ち時間が増加する、サービスのレベルが低下するなどを慎重に検討し、その数値を計測する手段を計らなくてはならない。例えばマクドナルドの場合人時生産性と同時に、サービングタイム、顧客満足度調査などを設けて、顧客が本当に満足しているかをチェックしながら生産性を上げるようにしている。これらの仕組みがない場合には人時生産性を論じるべきではない。さもないと売上の減少という副作用を生じてしまう。ある月に労働時間を削減すれば人時生産性を向上させることは簡単だ。しかし翌月になると顧客がサービスに満足せずこなくなる。そうすると売上が下がり、人時生産性は低下する。そこで、さらに人件費を削減すると、さらに売上が下がるという悪循環に陥るのだ。

人時生産性を高めるには先ず、非生産性労働時間(固定労働時間)をどうやって少なくするかという事を検討するのが最初だ。現在のマクドナルドの人時生産性はかなり高いが、そのために実施したのは先ず非生産性労働時間(固定労働時間)を短縮することだ。例えばビッグマックのレタスは当時は玉で購入し店舗で洗浄し、カットしていたが、現在では産地で収穫後直ちに洗浄、除菌、脱水後、カットしパック詰めして店舗に配送する。フィレオフィッシュのタルタルソースはタマネギを細かくカットし、レリッシュ、マヨネーズ、などを混ぜてカートリッジに充填していた。家事などしたことがないアルバイトにその作業をやらせると、作業に時間がかかるだけでなく、味の統一はできないし不衛生だった。また、売上の高い店舗ではフロアーコントロールをボーッとしてやっていると、いざというときにビックマックソースやレタスを切らして販売ができなくなってしまう。これらの調理作業を衛生状態の良い工場で行うことにより品質は安定しただけでなく非生産性労働時間(固定労働時間)の削減に成功し、販売チャンスを失うという事もなくなった。

現在のマクドナルドでは、包丁、まな板、缶切りは存在しない。店舗では包丁で加工する物は無いようにしているからだ。(勿論新商品などの例外はあるが)缶切りもそうだ。缶切りには時間がかかるし、手を切ってブドウ球菌による食中毒の危険もあるからだ。今ではケチャップ、ピクルスはプラスチックバックなどで包装し、簡単に開封できるようにしている。結果的にはゴミ処理の手間も減ったというおまけまで付いた。

掃除も同様だ。床の材料の見直し、清掃用のモップ、デッキブラシ、洗剤をきちんと開発することにより清掃の時間を短縮することに成功した。

しかしながら当時のマクドナルドはまだ非生産性労働時間と生産性労働時間を明確に分けていないし、売上比例の人時生産性の表もなかった。残念ながら現在でもその表は無いはずだ。その理由は標準化にある。米国マクドナルド社は店舗特に厨房の標準化をしており、どの店舗も同じレイアウトで同じ生産性の基準を使えるわけだ。日本の場合には残念ながら狭い国土という制約があり同じレイアウトを実施することができなかった。又、米国とは異なる種類のメニュー、と異なるメニュー構成(プロダクトミックス)により、日本独自で開発する必要があったからだ。

人時生産性の向上手段

そこで筆者は先ず、平均売上を算出し、それぞれの時間帯どれだけの人が必要か実際に目で見て作業配分することにした。先ず行ったのは、それぞれのアルバイトの仕事に無理無駄がないかという事だ。無理無駄とは先ず、歩く距離が多いかという事だ。生産性を最も上げるには如何に歩かないで作業を行うことができるかだ。歩くことが最も疲れるし、歩いている間は調理作業をすることができないからだ。先ず、調理器具、食材、などの配置に無駄がないかを見直し、一つの作業中に何回もいったりきたりすることがないようにした。

次に疲れるのはからだの上下と腰を曲げることだ。人間の姿勢は休めの姿勢が最も疲れないわけで、資材がしたに置いてあり、しゃがまないととれないとか、背伸びをしないととれないという置き方をやめることにした。

それには、資材の供給をスムーズに各セクションに行う必要があり、必要な資材のストック量の決定と資材専門のアルバイトの養成を行った。また、カウンターの女子の作業もきちんと見直した。注文で、フレンチフライト、コーラ、ハンバーガーの注文を受けたら、マニュアルでは、コーラを作りカウンターの顧客の前に置く、次にフレンチフライ、最後にハンバーガーとなっている。ハンバーガーは冷めるから問題の無いコーラから先に出すようにする。その際にフレンチフライをフライステーションに取りに行きカウンターまで持っていく。次にハンバーガーをトランスファービン(ウオーマー)から持っていくとカウンターから各ステーションまで3往復することになる。そこでフレンチフライを取った後、帰りにハンバーガーを取りカウンターまで持っていくことにより2往復ですむわけだ。ここまで細かい指導はマニュアルには書いていない(VTRでそのやり方は述べてあったが)ので、マネージャーたちにその指導をさせることにした。

ピーク時にはコーラを作るドリンカーという作業をアルバイトにやらせることによりさらに生産性が上がるわけだ。ここで最も時間がかかるのがコーラを注ぐ作業だ。マクドナルドなどのファーストフードではコーラの販売量が多いので瓶や缶などを使用するのではなくポストミックスといい、原液のタンクを運び込み炭酸水の製造装置と飲料の冷却装置、ディスペンサータワーを組み合わせて作る。コーラを作るにはディスペンサータワーのレバーを押して数秒間待っていなければならない。後で、米国を視察したらタイマー式のディスペンサーがあったので、日本で最初にタイマー式のディスペンサーを開発し、採用することによりこの生産性は大幅に向上した。

タイマー式のディスペンサーというと簡単に思われるが、実は、炭酸水の製造能力、ポンプの能力、冷却能力、糖度の調整装置、糖度の計測方法、量の計測方法などすべての見直し作業を行う必要があり、こんな簡単な仕事で数年の歳月を費やし、全店舗入れ替えるのにさらに数年という気の遠くなる時間を費やさなければならなかった。

タイマー式はボタンを押すと一定量のコーラが出るわけだが、冷却が不十分だったり量が安定しないと泡が多く立ちこぼれてしまうからだ。機械メーカーは独占的な企業であり当初はなかなか開発をしてくれないし、メインテナンスも不十分な状況だった。結局、米国の機械を購入しその性能差を実証したり、ポンプを自分で交換して性能の差を確認したり、米国コーラメーカーの機器のメインテナンスシステムの視察などを通じてそれらの問題点を一つ一つ解決していった。

時間をかけた甲斐がありこの成果は大きな物があった。1店舗1日200杯のコーラを販売するとして、1杯5秒の時間短縮になるとすると、1店舗年間、約100時間の短縮になり、時給800円とすると8万円。2000店舗で、年間1億6千万円のコスト削減となるわけだ。如何に秒単位の生産性の向上が大事かわかるだろう。しかも品質の安定により歩留まりも向上し、その原材料削減効果も大きな物があった。

さらに、この開発の過程を通じてコーラの値段決定の中で占める機械のコストの算出も可能になり、後に飲料価格の大幅なコストダウンが可能になった。マクドナルドが現在他社と比べ大幅なディスカウントを実現できる一つの要因として、圧倒的な飲料コストの優位性があると言えるだろう。

具体的なスケジュール作成方法

以上のような細かい作業を見直し、無理無駄をなくすように心がけ、生産性を最も高めながらスケジュールを作成した。そして、その基本スケジュールをスケジュール表に点線で記入した。基本スケジュールは1日4時間から6時間にした。アルバイトが最も疲れない時間、生産性を保てる時間を考えたわけだ。当時のアルバイトの時給は300円であり、彼らの月間に稼ぐ必要のある平均金額は2万円だった。そうすると月に66時間働けばよいことになり、月に10日として1日に約6時間となる。そこまで判断して6時間という数字を編み出したわけだ。高校生などは4時間とした。

この点線で基本スケジュールを書くということは色々メリットが出た。従来はアシスタントマネージャーが数時間をかけて作った基本スケジュールがコピーをするだけでできるし、店長にしても月初にアシスタントマネージャーと基本スケジュールを作ったら後はその通りに行っているかビジュアルにチェックできるからだ。また、アルバイトに対してもこちらのほしい時間を明示することで彼らも入れる時間を申し出てくれるようになった。従来は、人の過不足を把握しているのはスケジュールマネージャーだけだったが、点線の上にアルバイトが実際に入れる時間を実線で記入することにより、どのマネージャーも人の過不足がわかりアルバイトと交渉できるようになり、人の過不足という事態は解消されるようになった。

 もう一つの大きな成果が、人件費管理だ。売上が予定より下がり、予定の累計人件比率が高いのを労務費コントロールシートで発見する。そして、翌週毎日2時間づつ削減する必要がある場合、簡単に削減することが可能になった。人件費がオーバーするのを月末近くになってから発見し、コントロールするには毎日多くの時間を削減する必要があり、サービスの低下という問題を発生させる。しかし、早めにオーバーしているのを発見することによる日々の削減時間数は少なくて済み、社員がちょっとがんばればできるようになるわけだ。月間の労務費コントロールシートと、この点線スケジュールシステムにより、人件比率を予定に対して誤差0.1%と言うシビアーな数字で管理することが可能になったのだ。

 この過程で学んだのは、人件費を単に数値で管理するのではなく先ず、現場の作業の無理無駄を基本から解決し、それから、人件費コントロールするという現場主義の鉄則だった。皆さんも人件費コントロールを机の上で判断しないで是非現場を見て判断していただきたい。

続く

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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