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運営部長、統括SVのための実力養成講座
第9回
「クレーム処理も統括SVの大きな仕事だ」


店舗数が増え、有名になるとクレームを受ける件数が増大してくる。決してQSCのレベルが低下するのではないが、「大手チェーンなのだからQSCはもっと素晴らしいはずだ」とか、「これだけ大きい会社だから、文句を言えば何とかしてくれるだろう」と言う期待感からクレームは増大してくる。

当初は店舗の社員も若いので客に謝りに言っても責任者を出せと言われたりするし、若さのあまり言い合いになってしまったりするので、経験のある年輩の担当者が本社で一括してクレーム処理を行っていたのだが、店舗数が全国レベルで増加すると、よほど大きな問題にならない限り、店舗できちんと処理するか、SV、統括SVの段階で処理をしなくてはいけなくなる。

クレーム処理の難しさは迅速性を要求されると言うことだ。顧客のクレームに対して的確に判断を下し、適切な処置をとり、問題点等を究明する。そして原因を顧客に誠実に説明し、当方に問題があれば率直にわびを入れ、顧客の要望に応えるようにする。もし当方に問題がなければ、その旨を納得していただくまで説明しなくてはならない。クレームが大きな問題になるのはクレームの内容ではなく、2次クレームに発展する場合だ。クレームを言ったのに言いがかりをつけているやくざのように扱われた。回答をすぐにしてくれない。責任者が誤りに来ない。たらい回しにされた。その都度同じことを説明させられた。客の方が問題があると言われた。などの2次クレームだ。そのためにはクレームを受けた後の情報を正確に伝達し、迅速に行動を起こす必要が出てくる。

最近、大きなクレーム処理が話題になっている。大手家電メーカーのT社のVTRレコーダーのクレームに対する会社側の処理が悪く、それが世の中の注目を浴びてしまった事件だ。事件の発端は客が2台のVTRを購入したが、画面にノイズが入るので、修理または交換を依頼した。その原因を顧客に正確に伝えず、各担当者が責任のある答えをしなかったので、客がメーカーの社長までクレームの手紙を入れた。その結果どういうわけか、特殊なクレームと間違えられて、渉外担当者(どうも総会屋などを担当する部署のようだ)に回され、その渉外担当者の暴言が客を激怒させた。

ここまでは良くある話しだ。普通は大会社の壁に阻まれ消費者は泣き寝入りとなるのだが、この客は何とホームページにいきさつを発表し、さらに、渉外担当者との電話の内容を誰にでも聞けるようにしたのだ。当初はメーカーも強気であり訴訟もすると客を脅かしたが、最終的に非を認め、副社長が陳謝せざるを得なくなったのだ。

この顛末をみてみると、原因そのものよりもクレーム処理のスピードの遅さと、担当者がくるくる変わり、誰が責任を持って対処するかというのが客に見えなかったという、2次クレーム事件の典型的な例だ。

クレームには色々あるが筆者が統括SV時代に経験したクレームと、処理の失敗と成功例をみてみよう。

「筆者の経験」

  1. オーナーとの交渉
  2. 筆者が統括SVとなり最初の開店でオーナーとの交渉をしなくてはならなくなった。店舗開発が店舗開店の交渉を結んだ後の細かい規則や納金方法、従業員規則などは、オーナーと店舗の責任者であるSVが行うのだが、SVからオーナーとの納金方法で揉めているので来てほしいという依頼を受けた。

    オーナーとの打ち合わせで最初に取り決めをしなくてはいけないのは、売り上げの確定方法と、納金、監査、のやり方だ。売り上げには2つの売り上げがある。レジスターの記録と現金売り上げだ。レジスターの売り上げ記録から打ち間違いと現金差をひくと、現金売り上げとなる。普通、百貨店やスーパーに入るテナントの場合、レジスターの売り上げと現金売り上げは同じになるように調整をする。マクドナルドの場合、間違いや盗難による現金差を容認しており、普通は現金売り上げを売り上げとして申告するようにしていた。今回の出店のショッピングセンターの責任者は大手私鉄の経営する百貨店から出向してきており、一般的なレジスターの売り上げ記録で売り上げを申告しろと言う。そうすると現金差はマクドナルド側の負担となってしまう。

    筆者はまだ統括になり立てであり、売り上げの建て方は現金売り上げしかないと錯覚していた。そこで、先方に対して「出来ない」と激しく突っぱねたが、先方が「そんなことは通常あり得ない、レジ売り上げを正としろ」と詰め寄る。そこで、開店すれば何とかなるかもしれないと思い、時間稼ぎをしようと思った。そこで「では、上司に出きるかどうか相談してくる」と言ったら、先方は「子供のつかいじゃないんだ。責任者だったら今すぐ答えを寄越せ」と詰め寄る。「子供の使いじゃないんだ」という言葉はずいぶん応えた筆者は「わかりました、すぐに返答します」と応え、本社にとって帰り経理部に相談した。その答えは「あ、わかりました。問題ありません」という拍子抜けのする答えだった。どんな交渉もお互いに譲り合いをする余地はあるわけで、筆者は色々なルール、交渉の現実の知識を持っていなかったと言う勉強不足と、上司に相談しますという言葉で時間稼ぎを出きると思ったのが間違いだったのだ。

    教訓:
    日本の大会社がクレーム処理を迅速に処理できないのは稟議制度の弊害だ。何か先方が要望をするとそれを会社に持ち帰って稟議を起こし、それから回答する。窓口の担当者が迅速な回答を出来ないと言うのは、権限がないぺーぺーを対応させていると言って客を怒らせる2次クレームに発生させるわけだ。

    筆者はこの事件以来、クレーム処理や対外折衝の際には先方の言い分を予測検討し、自分の決済権限を越える場合には事前に上司や必要部署の了解を得ておき、先方との交渉結果は事後報告や事後提案で処理するようにした。先方の要望に対して誠意を持って「できる、できない」を即答できる迅速な交渉が問題を小さい内に解決できるからだ。こうすれば稟議制度があっても迅速な処理が可能になるのだ。

  3. 出店に関するトラブル
  4. ある店舗を土地毎購入したことがあった。町の真ん中のものすごく良い土地が安く買えた。店舗の建設開始と共に店長が赴任し、アルバイトの募集などの活動を行いだした。店長が赴任してから1週間も立たない内に筆者にSVから電話が入った。「地元小学校のPTAから出店がけしからんとクレームが入っている。ついては、PTA等への説明会を開くから出席してほしい。」と言うことだった。風俗営業ではないし、何故PTAからクレームがあるのかと不審に思いながら、現地に赴き、会合に参加した。会場にはPTAと先生方がそろって険悪な雰囲気で待っている。先方は開口一番「マクドナルドが店舗を開店するのはけしからん、生徒に悪い影響を及ぼす。」当方は「風俗営業ではないし、問題はないはずだ」と答えたが、先方は「生徒が学校に行く前に買い食いをするので困るという」「それは生徒に食事を与えない親の問題だし、食べること事態は問題ないのではないか」と言う答えに先方は激怒し、まるで団体交渉の労働組合のつるし上げのような状態になった。よく考えてみるとその地区の教員から日教組の書記長を選出しているような過激な先生方のようであり、これは困ったなと正直思った。

    でも、正しいことは言わなくてはいけないので、「なぜ、朝の買い食いがいけないのか?」への答えに唖然とした。「食べるのは構わないのだが、食べる金を稼ぐために他の生徒を恐喝するのが困るのだ」と言う。「そんな行為を許す学校や親が悪いのではないか」と言ったら、「あんたは何もこの地区の実状を知らない」と言って侃々諤々の論議となった。

    当方としても開店の前に地元とトラブルを起こすのは得策でないし、先方の問題指摘が、早朝8時からの営業に絞っていたので、「わかりました、学校がある内は朝9時からの営業にします。そのかわりに学校のない夏休みや冬休みには朝8時から営業をさせてください」と御願いした。先方は筆者の即決の応えに納得し交渉は円満に解決した。

    このころには統括SVの権限の範囲を知っていたし、上司にその理由を説明できるから、本社に持ち帰って検討しますなどと馬鹿なことを言わないで即決で交渉を決めることが出来たわけだ。

    ところが帰り際に、親しくなった先生方が、「いや、あんたの会社は大変な場所に開店したね」当方「?????」「実はコンビニなどは開店すると商品に対するクレームが多発しあっと言う間に閉店してしまう。」「外食も先日開店したRと言う全国チェーンは工事中や開店時に街頭宣伝車に囲まれて営業が出来なくなるような妨害を受けている」と言うではないか、どうも大変な地域らしい、それ以上は先方も口を濁して詳しい話はしてくれない。

    それから1週間しないうちに店長から電話が入った。「どうした?」「あのー・・・事務所にいるんですが」「なにしてんだ」「事務所でもちょっと違った事務所です」と言う。何と暴力団の事務所に監禁されているという。「店舗開店の際に挨拶がない」と言う言いがかりだ。

    慌てて、地元警察に電話した。その数分後だ。暴力団の事務所から電話があり、「おまえ、警察にたれ込んだな、ふざけるな」と言う。驚いた、警察とオンラインだ。警察を直接訪問し、何とかしろと言うと「それは民事だ。先方と話し合ってくれ」と言う。しかも、店舗の周囲は暴力団事務所20カ所ほどに囲まれているとか、店舗前の交差点を境に他の警察の区分となっており、事件を解決するのに難しい地域だと弱気なことを言う。なんて警察だと思った。そこでしょうがないので県警に怒鳴り込みに行った。県警には通称「丸暴」と言う暴力団対策の課がある。その課長を名指しで呼び出し、どうしてくれるんだと詰め寄った。先方の答えは「店舗が開店できるように協力する。しかし、この地区は難しい地区で色々問題が出るだろう。その際に被害をきちんと報告し、刑事事件として告訴してほしい。普通は暴力団が怖くて告訴を取り下げてしまう。それではこちらとしてはやりがいがない」と言う。「わかった、きちんと告訴する」と確約をし、県警が全面的に応援してくれることになった。県警の担当課長が暴力団の事務所に電話を一本入れるとあっと言う間に店長は解放された。その後の安全のために、店舗周辺を常時警官が巡回し、何かあったらすぐに県警に緊急連絡をできるようにした。

    開店時に嫌がらせをされるのが予測できたので開店時には警官を立ち会わせてくれた。普段、警官は店舗内に立ち入らないのだが、巡回時に必ず店舗を巡回する。客席からよく見える場所に県警の丸暴課長の名刺を貼るなどの対策をしてくれた。店内には嫌がらせでたむろすることを防ぐために、掲示板をだし、1時間以上の長居や、商品を購入しないで客席にいる場合には警察に連絡する旨を書いた。駐車場には無断駐車は直ちにレッカー移動し、罰金を徴収する旨を書き出した。とうてい客商売とあるまじき文面であったが背に腹は代えられない。

    開店の日だった。最初に来た数人の客を居合わせた警官がすぐに外に放り出した。筆者の経験の中で開店日に来た客を放り出した初めての経験だった。

    店舗の周囲には数多くの暴力団の事務所が存在している。普通は暴力団は2ー3の全国組織系列に所属するので一カ所の団体と話をするだけでその後はスムーズに行くのであるが、この地区は仕切る強力な暴力団が存在しない群雄割拠の地域だ。だから一つの暴力団と金を払って問題を解決してもその他の無数の暴力団が群がって来るという難しい地域だった。

    しかし、暴力団たちは当方の強硬な姿勢にそれ以上の要求を出すことはなかったが、「おれたち以上に難しい人間がいるんだぞ、でも、俺たちに相談されても何にも出来ないからな」と捨てぜりふを吐いた。

    関西は歴史が古い町が多く、昔から特殊な住民が大きな問題となっている。実はこの店舗を取り囲む住宅の多くはその特殊な住民であった。その子供たちがコンビニにたいして食事をして腹痛を起こしたと言って金を脅し取り閉店に追い込んでいたり、学校に行く途中に買い食いをする金を稼ぐために他の生徒を恐喝するのではないかと言うことがわかってきた。

    しかし、店舗を買ってしまった以上撤退は出来ない。そして、おそるおそる開店した。ところが心配をよそに店舗の売り上げは予想以上に順調で客であふれかっえっていった。心配した住民による嫌がらせもなかった。その理由は一つには店舗が毅然とした態度をとり警察と密接な関係を持っているということが一目瞭然だったからだが、最大の武器は子供に喜ばれる店作り、プレイランドという子供の遊技場を設置した楽しい店舗だったからだ。周囲の暴力団や住民たちも家族持ちであり、日曜には子供連れで店舗に来店したのだ。自分の子供たちが楽しんで遊んでいる店舗を恐喝したりすることはできなかったわけだ。しかも、皆商売を営んで金を潤沢にもっている人たちであり、周囲には飲食店が殆ど皆無で競争もないというわけで大繁盛店となってしまったわけだ。災い転じて福となすの典型的な例だ。

    教訓:
    どんなに難しい問題も、責任を持って体当たりでぶつかっていくと道が開けると言うことだろう。暴力団や難しい住民だからと言って怖がっていては解決できないと言うことだ。また、店舗が一致団結してきちんと営業を行えば問題を起こす人たちも固定顧客となりうると言うことだ。

    暴力団などとの交渉で注意するポイントは先方が2次クレームを期待していると言うことだ。対応する責任者をたらい回しにしたり、無責任なその場逃れの返事をすることがトラブルを拡大する原因だ。応対には細心の注意を払い、言葉遣いを丁寧にし、先方の要望を良く聞くことだ。「誠意を見せろ」という言葉でこちらに金銭的な代償をそれとなく請求するが、「誠意とは何ですか?」と丁寧に相手の要求を聞く。決してこちらから金額を言ってはいけない。先方が金銭的な要求などをすればそれが恐喝となるからだ。

    相手と口論をしたり、興奮して暴力や暴言で立ち向ってはいけない。相手の思うつぼだ。「民暴の女」と言う映画があったが、その中でホテルの従業員が乱暴な言葉で暴力団を撃退する場面があったが、そんな乱暴なやり方は危険を招く元だ。暴力団がクレームなどで相手に暴力をふるったり、危害を与えることは少ない。それが表面化すれば警察沙汰となり懲役刑を受けても組織で評価されないからだ。しかし、面と向かって相手を罵倒したり暴言を吐けば自制心を失ったり、メンツを失い、危険な行為に走ることがあるので、決して相手を刺激するような発言や態度をとってはいけない。

    警察と暴力団の関係や対応は地区により大きく異なる。対策はその地区地区の実状にあわせないといけないので常日頃からの情報収集が必要になる。

  5. 従業員と顧客の暴力事件
  6. 大都市郊外の新興住宅街の事件だ。深夜に電話がかかってきた。アルバイトの責任者であるスイングマネージャーが客に暴行を働いて大けがを負わせたという。先方は「医者の診断書をとっているので、警察に訴えをだすぞ、会社としてどうするのだ」と詰問してきた。そこで、店舗に直行し、担当のスイングマネージャと面談をした。閉店間際に酔っぱらって入ってきて、閉店時間になったのでお帰りくださいと言ったら、言い合いとなり、厨房内に進入しようとしたので、もみ合いとなり、酔っぱらった客が倒れてしまった。でも、決して殴ったわけでも暴力を振るったわけでもないと言う。しかし、警察の事情聴取も受けており、何らかの刑事処分を受けそうな気配であった。問題は、そのスイングマネージャーは4年生で、もう就職が決まっているという。その就職先が県警だと言うではないか。もし、この不祥事が事実となると就職が取り消されると言う深刻な状態だった。そのスイングマネージャーとじっくり話した結果、嘘はついていないと言う確証はつかんだ。しかし、客が怪我をしたのも事実だ。そこで、翌朝客と会うことにした。

    客の指定する喫茶店に行き、客と面談を開始しようとした。(面談は絶対に公衆の面前で行うのが基本だ。やくざの事務所などに決していってはいけない。)客はあまり態度の良くない客で、友人のやくざのような人間と一緒に待っている。そこでそのやくざのような風体の人に、「貴方は当日現場にいたのかと聞き」いないと返事をしたので席を外してくれと言った。余計な人間がいると話がこじれるからだ。「嫌なら交渉はしないで帰る」と強気で言ったら、当日いた人間だけになった。怪我をした人間は頭に包帯をグルグル巻いて如何にも痛そうな顔をしている。そこで先ず、先方の言い分を聞くことにした。閉店間際の店に入り、閉店時間だから出ていってくれと言われ、スイングマネージャーに突き飛ばされたという。そこで、その時の状況を詳細にメモをし、診断を受けた医者、担当の警察官の名前を聞いた。

    次に病院の診察をした医師と面談をした。そこでわかったのは、「外傷はないが、客が転んで痛いというので頭部打撲という診断書を書いた」と言う事実だ。そこで「外傷はなかったのか?」と確認すると「ない」と言うではないか。そこで、もし、裁判になる場合にはそのコメントをもらえるように依頼をした。

    さて、店舗は駅前のショッピングモールの内部にある。当日客は酔っぱらってきたので、他の店でどんな飲み方をしたのか、トラブルはなかったのかを、担当SVに聞いてこさせることにした。その結果判明したのは、数件の店舗で飲食をし、一件の店でトラブルがあり、口論をし、店を出るときに「他で大暴れをしてやる」と言い残して出たという証言をもらった。どうも、確信犯の犯行だったようだ。

    それらの事実を元に、地元の警察に行き、これは恐喝ではないのかと担当の刑事に申し出をした。東京の警視庁管内であれば完全に恐喝事件として成立する。そう思って申し立てをしたら、何と、「それは民事だという」そんな馬鹿なと言うことでずいぶん論争をしたのだが、当事者で解決してくれという弱腰だ。少なくともどちらの味方にもならないと言う点だけがすくいだった。

    そこで、弁護士とも相談の上で、電話で相手と話をすることにした。当然のことながら電話の内容は録音をしていた。恐喝になる可能性が高いからだ。

    まず、医者の証言、ショッピングモールでのトラブルを説明し、「当社では慰謝料などの支払いは認めない。もし、不満であれば告訴をして結構です。」と強気で説明した。99%訴えないと言う自信があったからだ。

    電話口ではぶつぶつ言っていたが、結局それ以上お金の話などをすると恐喝になるので諦めたのか、それ以後連絡が途絶え一件落着した。

    教訓:
    問題が発生したら、すぐに解決しようとしないで、先ず事実関係を調査することが重要だ。当事者、病院の医者、警察、等の言い分を詳細に聞き、メモをきちんととり、正確に分析することだ。言いがかりをつける相手と話す場合には、相手の指定する場所で話し合うのでなく、喫茶店などの公の場で話しあう。その場に当事者以外がいれば席を外してもらい、余計なプレッシャーを受けないようにする。

    担当は終始一貫して応対し、わからないことがあれば、法務の担当者、弁護士、警察などに相談しながら対応する。会話などを録音したり、記録に残しておく。

  7. 従業員が働いた違法行為(捨て看板事件)
  8. SVから緊急の電話で店長が警察に逮捕され、拘留されているという。あわてて、担当の本社の部長と飛んでいった。店舗の販売促進策の告知手段として、捨て看板を道路におく。違法だが、現場で捕まらなければ良いというのが一般的な考えだった。ところがこの地区は条例で厳しい規制をひいており、警察が頻繁に取り締まりを行う。つい最近も摘発と警告を受けたばかりであり、日にちをおかず再度違法行為を行うのはけしからんと店長が捨て看板を配布している現場を摘発されたのだ。

    警察の担当者の前で頭を下げて許しを御願いしたが、送検すると強硬な姿勢だ。それでも食い下がりどうやったら許してくれるかと聞いたら、「おたくはルートがないのか」と言う。ルートとは何ですかと言ったらはっきり言わない。担当部長は部屋で警察担当者と二人きりにさせてくれと言う。どうも土下座をして謝ったようだが相手の態度は全く変わらない。食い下がる担当部長を引き留めて一旦外に出た。「おたくはルートがないのか」という言葉が気になったからだ。

    そこで、取引先の担当者に電話を入れた。その結果15分後に「問題ありません。釈放されました」と折り返し電話があった。以前からその取引先と会議で一緒になっていたが、優秀なメンバーの中で担当者の彼だけがのんびり仕事をして、どうしても優秀な人間とは思えなかった。そこで取引先のチームリーダーに、「あんたのような優秀な会社で彼のようなのんびりした社員がいられるの?」と聞いたところ、「困ったときにもの凄く役に立つ男です」と言う。その言葉を覚えていたから声をかけたわけだが、その即効性の高さに驚いた。その取引先の担当者が問題解決をする正確なルートをもっていたわけだ。

    教訓
    世の中、正論だけで解決できない場合もある。違法な手段を講じるのは良くないが、先方の言い分に沿って適切な対処をする必要もあるのだ。そのためには日頃から各取引先や外部とのコミュニケーションを密接にとり、いざとなったら助けてもらえるような人間関係を築き上げるのが重要だ。

  9. やくざや難しい団体とのトラブル(失敗例)
  10. ある都市での暴力団とのトラブルでは失敗した。筆者が部長になり立ての頃の事件だが、店舗の倉庫へ資材を搬入する際に、入り口ぎりぎりに止めてあった車に資材の段ボールをすりつけて傷を付けたというクレームだ。どうも相手はわざと車を止めていたようだ。その対応に担当統括SVが当たらないで店長に対応させた。先方の要求は車を交換しろと言う多額な金額を必要とする物で、弁護士などを入れたが埒が上がらず、ずいぶん時間がかかった。その間、店長はずいぶん脅かされたようで、とうとうノイローゼになってしまった。

    教訓
    現場にいる店長は逃げ場がないので暴力団などとの直接の交渉にはむいていない。現場に常駐していない、またはその周囲に住んでいない人間が交渉するべきだろう。店長に最後まで責任を持たせて良い場合とだめな場合があるということだ。なるべく統括SVが応対するとか、専門の弁護士などを使うと良い。

    クレームがこじれたり、社員の不祥事の問題解決のために警察出身者を採用する場合があるが、向き不向きがある。地元の警察出身者にある事件を任せたらそれが隣の県警の管轄であり、仲が悪く情報がとれないと言う。警察官の場合、県警の課長クラス(キャリア組)でないと全国レベルの情報収集が出来ないようだ。 また、暴力団対策などで警察出身は役に立つと思うようだが、上の例のように案外役に立たない。警察以外の暴力団対策の経験のある人を雇う方が良いようだ。

  11. 選挙妨害
  12. 革新政権の都市の事件だった。丁度、市議会の選挙を行っている最中で、革新系の議員が怒鳴り込んできた。店長が選挙妨害をしていると言う。店舗でアルバイトが不足しており、前日の夜に店舗周囲にアルバイト募集のポスターを貼りに行ったが、誤って選挙用の候補者の告知版にポスターを貼ってしまった。それも革新系の候補者のポスターの上に貼っており、「確信犯だ。選挙妨害だ、選挙法違反で訴える」と息巻いている。

    そこで、店舗そばの喫茶店で話し合いをすることにした。まず、先方の言い分をじっくり聞くことにした。ノートを用意し、克明に記録をした。相手に対して真剣に聞いていると言う印象を与えるためだ。同時に先方が言いがかりや恐喝まがいなことを言わないようなけん制でもあるわけだ。

    さて、よくよく話を聞いてみると先方の怒った原因が段々判明してきた。先方はポスターを発見した後、店舗にいる店長に怒鳴り込んだ。その時の店長の対応が悪かったようだ。店長はびっくりして怖かったのだろう。自分の身分を明かすべき名刺の交換をしなかったので、先方が意図的な選挙妨害だと怒りだしたのだ。その時に店長が名刺を出し、陳謝すればSVや統括SVを引っぱり出さずに収まった話だったわけだ。

    そこまで理解した筆者は、その場で店長をしかり、「申し訳ありませんでした。私どもの教育不足でした。再度このような事件を引きを起こさないように十分教育を致しますので、お許しください。」と直ちに詫びを申し上げた。そうして、「他に何か当方で出きることがありますか?」と聞いたが、こちらが素直に非を認め詫びた以上のそれ以上の要望を言い出せるわけもなく、一件落着だった。

    教訓
    現場の店長が名刺をだして、きちんと詫びれば済むという基本的な教育が必要だと言うことだ。事件が起きてからでは遅いので日頃からロールプレイでしっかり教育をする必要があるということだろう。まず、名刺を常時もっている。名刺の交換をきちんとする。丁寧にお詫びをする等の基本的なことを教えるのが第一だ。
    そして、当方が悪ければ素直に陳謝することだ。先方の実害がない以上、素直に謝られてそれ以上の要求を突きつけられ場合は少ないからだ。

  13. 店舗の火災
  14. マクドナルドでは店舗設計や機械設計の仕様を明確にし、店舗にはメイテナンス教育をしており、店舗マネージャーたちは火災が出ないように日頃から注意をしている。そのために、過去店舗を丸焼けにしたのは2軒ほどしかない(ぼやは結構あるが)。

    関西の地方都市の店舗で火災が発生したと一報があった。幸いなことにぼやで天井の一部を焼いただけで消し止めたが、消防車の出動を御願いしたということで、大事件となった。技術担当者の予測では漏電か、店舗のメインテナンスの問題ではないかと言うことだった。火事の原因によっては担当者の処罰の問題も出るので早速現場に直行した。その結果判明したのは人災だったということだ。その店舗は鉄骨の独立店舗であり、客席天井は軽天と言う、金属の材料で天井板をつっている。その天井板には照明器具を埋め込んであり、照明器具が加熱して天井材に燃え移ったのだ。普通天井材はアスベストなどの不燃材を使うので燃えるはずがないので、天井材と天井内部のチェックをした。驚くことに天井内部にはパルプを原料とした可燃性の断熱材が埋め込まれていたのだ。

    この店を建設する際に断熱材のテストということで安価なパルプを使った断熱材を天井中に埋め込んだのだ。そのため白熱灯を使用する照明器具の熱の逃げ場がなくなり、乾燥した断熱材が発火したのが原因だ。幸いなことに天井板は基準通りの不燃材を使っていたので店舗を全焼するという最悪の事態を防げたわけだ。

    店舗でのテストは一定期間を終えたら評価をして、問題があれば改善すれば良かったのにテストをしたまま、事後の評価をしなかったという担当者の不注意が巻き起こした事件だった。

    このままでは他店舗でも同様の危険が予測されるので、早速、設計図面のチェック、規格のチェック、店舗のチェックを開始した。当時は店舗のデザイン面を重視するようになり、天井の形状に変化を付けようとしていた。そのために天井材料に不燃材でなくベニヤなどの可燃材を使うようになっており、今回のような事件が多発する危険を感じたからだ。その結果、再度不燃材を使用するように店舗設計基準を変更することができた。

    教訓
    火事などの事件の際は、先ず現場に直行し、何が原因か明確にする。場合によっては担当者の責任が問われるかもしれないが、原因を明確にしないと再発を防ぐことは出来ない。そして、その問題が基本設計の問題で他店にも同じ問題があり得るのか、それともその店だけの問題なのかを明らかにして、対策を明確に立てて同様の事件を防げるようにしなくてはいけない。

    「その他のクレーム」

    その他に色々クレームがある。

  15. 購入商品の不足、釣り銭間違え、店内の忘れ物の紛失
  16. 店舗のクレームで多いのは顧客からの入れ忘れ、釣り銭間違えのクレームだ。基本的にはこちらのミスなので、商品をお届けに上がるのが基本だが、それを取りに来てくれとか、届けると言って忘れるなどの基本的な対応のミスがクレームを大きくしてしまう。

    また、傘や身の回りの品の忘れ物を誤って紛失し騒ぎが大きくなることがある。客の忘れ物はマネージャールームやロッカーなどに保管し、相手の身分証明書などを拝見してからお渡しすることが基本。また、連絡ノートなどで誰でもわかるようにしておかないといけない。

  17. 異物混入、食あたり、食中毒
  18. 食中毒の事件は少ないが、異物混入や食あたりのクレームは多い。異物混入の場合、まず、詫びて商品を交換するか返金を申し出る。怪我などがあった場合には直ちに医者に連れていき、治療を受けてもらい、原因を追究することを約束する。受け取った異物を直ちに本社の担当者や業者に渡し、原因を追究し、わかり次第、業者、本社担当者と共に詫びに行き、再発を防ぐ対策も同時に伝える。

    食あたりを食中毒として訴える客が多い。特に夏場などの体力を消耗し冷たい飲みのもを大量に飲んでいる子供や年寄りは、食あたりを起こす場合がある。客は食中毒だと思いやすいので日頃から保健所や近隣の病院とコミュニケーションを取り、クレームを申し出た場合には近隣の病院で治療を受けさせ、保健所に相談できるようにする。同時に問題のある食材は冷凍庫に保管し、万が一の場合に備えて検査を受けられるようにする

  19. 地主とのトラブル
  20. 地主は店舗の近隣に住んでいることが多く、店舗の従業員と顔を合わせることが多い。新店舗開店の際にはみんな顔を知っているから挨拶するが、しばらくすると社員人事異動やアルバイトの入れ替えで、挨拶をしなくなる場合がある。地主にとって店舗は財産である。普段からの挨拶をしないで、店舗周囲を汚したり騒音を出したりすると、かんかんに怒り出すことがある。殆どのケースが挨拶がない、言葉使いが乱暴だという感情論だ。店舗の近隣に地主が住んでいる場合には社員、アルバイトに日頃から紹介すると言う気配りが必要になる。旨くつきあえば子供のようにかわいがってくれ、食事などをご馳走してもらえるが、旨く行かないと店舗契約を破棄されることがある。実際にフランチャイジーのオーナーが家主と旨く行かず店舗を移動させられた例も幾つかある。

  21. 近隣よりのクレーム
  22. 店舗に多いクレームは近隣からの騒音、異臭、照明、などだ。この場合も地主のトラブルと同様に日頃からのつき合い、挨拶のあるなしに影響される。問題が発生した場合感情的なもつれになる場合が多いので、当方が正しくても先方が納得できるように目で見てわかる対策をする。近隣も大事な固定客だからだ

  23. 店内人身事故
  24. 夏場になると子供やなれない旅行客が多く、店内外での事故が増える。店内で子供が駆け回り階段から落ちたりガラスにつっこんだりして大事故になる。階段の手すりや滑り止め、ガラスへのステッカーなどの事故対策が必要。

    駐車場も、夜間照明を明るくしたり、通行する車のスピードが上がらない工夫が必要。駐車場に子供が飛び出しての事故も多いので扉から直接駐車場に行けないように手すりなどを設ける。事故があってからでは遅いので普段から安全性をチェックする。

  25. 従業員による犯罪、事故、
  26. 事件で多いのが内部による犯罪とか事故だ。店内暴行事件、女性問題、金銭問題、人間関係、自殺、他殺、盗難、交通事故、など忙しい月に発生しやすい。普段から従業員の動向に目を光らせ、モラル教育を怠らないようにする。夏休みに若いアルバイトを採用した際に事故を起こしやすいので十分に注意する。

  27. 商品に対する問い合わせ
  28. 最近の消費者は権利意識に目覚めており、販売促進などへの不当表示、や食材への添加物などに神経質だ。問い合わせがあった場合には直ちに担当の部署に相談し、明確な答えを迅速に出すこと。

  29. 外部からの恐喝、暴行、強盗。
  30. 夏場や年末など外部からの恐喝、暴行、強盗の危険性が増加するので、店舗のセキュリティーチェックを定期的に行う。常日頃から地元の警察、交番とコミュニケーションをとり、警察官巡回の際店舗にまで入ってきてもらえるようにする。日頃から警察官と歓談している姿を見たら犯行をしようという意欲が失せるからだ。事件があってからの対策でなく、事故を未然に防げるような対策が一番望ましい。

    クレーム対策の基本は、普段からケーススタディを用いてどんなクレームがあり、どう対処するべきか訓練をしておくと言うことだ。ケーススタディのために、全店舗で発生している事故とクレーム処理の状況をデーターベースにして、問題点、解決の方法、どうやったら問題点を減少させられるかを全従業員が共通の知識としてもてるようにする。

    そして、クレームが発生したら責任者が一貫して迅速に処理をすることが、問題を小さい内に解決する基本だ。

以上

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。


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