SVの開発業務の原理原則と成功の方程式

先回はSVの開発業務と言うことでグリドルの開発を長々と説明したが、それだけの項目を理解し、解決するのには正直言えば10年以上の歳月を必要とした。皆さんの中には自分はエンジニアでないからそんなことは出来ないと思いがちであろう。筆者もそう思っていた。しかし、調理機器も良くて見るとそんなに複雑な機械じゃないということに気がついてきた。自動車の構造と原理がかなり調理機器と同様だったのだ。

また、色々な開発を手がける内に開発には共通の原理原則、成功の方程式があることも分かった。グリドルでも最初は皆目分からないことだらけであり、グリドルと睨めっこの毎日で、夢の中にも出てくるような状況だった。それがある日、頭の中ではじけるように全ての項目が理解できるようになった。その糸口となったのは一つの方程式だった。一旦その方程式が分かれば後は簡単な物で、他の開発業務も軽い物だった。

ここで明確にしておきたいのはSVの開発業務は全く新しい調理機器を開発したり、発明をすると言うことではないと言うことだ。SVの本来の業務は、店舗のオペレーションがやりやすくなる、調理機器の能力が上がり料理が美味しく出来る、サービス時間が短くなる、生産性が向上し人件比率が下がる、効率の良い機械で水道光熱費が下がる、などの店舗のQSCに直結する内容でなくてはいけない。新規調理機器開発や特許をとるような本格的な開発はSVの仕事でなく、本社のスタッフの仕事なのだ。その為に現実的な改善業務に取り組む必要があり、決して格好の良い作業ではない。

店舗の調理機器の改善や開発など専門家に任せたらよいと思いがちだが、専門の技術者はこのような店舗のQSCを向上させる地味な作業を嫌う傾向がある。技術者の夢は世界に名を残せる発明をすることであり、現場の改善をすることではないからだ。店舗のQSCを改善するのは店舗を運営する店長やSVがやらなければいけないと言うことだ。そういう現実的な観点からどのように開発を進めるのか見てみよう。

読者の皆さんは技術の専門家でないから先月号のような内容は頭が痛くなるかもしれないから、皆さんが日常で使う車と比較しながら原理原則と方程式を整理してみよう。実は筆者の機械の知識の源は車である。ポンコツに乗っていた経験から最低限の修理、メインテナンスをやるようになり、機械の調整の経験を積んだ訳だ。その為には、修理屋に習ったり、雑誌を読んだりして修理方法を身につけていった。車は、燃焼工学、機械工学、電気工学、等の全ての知識を必要とするので、機械を浅く広く勉強するのに最適の対象なのだ。

「調理機器の開発のポイント」

  1. 性能がよい全ての機器に言えることだが、性能が良いというのが絶対条件だ。しかし、性能には色々ある。

    [車の例]

    外食産業は郊外型の展開も多く、忙しい時間の中で数少ない趣味として良い車を乗る方が多いようだ。若い方が車を買う場合は性能がよいというのが絶対条件だ。では車の性能が良いというのは何だろうか。

    まず、性能で言えば、加速がよい、最高速度が高いと言うことだろう。では加速を良くする方程式は何だろうか。まず、頭に思い浮かべるのは馬力だろう。しかし、同じ馬力の2台の車でも加速は異なる。加速を左右するのは馬力と、車の重量だ。1馬力あたりの重量が加速を左右する。スポーツカーといえるのは1馬力あたり8kgの重量以下でなくてはいけない。高価なスポーツカーであるとその数値が5kgを切るようになる。

    次に加速とは何だろうか。加速では静止した状態から400mを走りきる時間、静止した状態から100kmに達する時間など色々な指数がある。加速の絶対値は400mを走りきる時間で表現され、0ー400の時間という(英語ではスタンディングクオーターマイル)。この時間は16秒を切るとスポーツカーといえる。しかし、現実の交差点の加速を考えると50mの距離を加速するのに何秒かかるかという方が重要であるとも言える。0-400で加速の良い車でもターボチャージドエンジンを使った車は初期加速が悪く、それよりも遥かに馬力あたりの加重が重い車の方が早い場合もある。

    最高速度はどうだろうか。最高速度を決定するのは馬力あたり加重だけでなく、馬力とエンジン回転数。トルク(軸回転力)カーブと車の抵抗だ。最高速度を決めるのは単なる馬力だけでなく、車の空気抵抗(抵抗の少ない形状と全面投影面積で決まる)と走行抵抗(タイヤの面積、駆動系のフリクション)、トランスミッションのギア比などで決まってくる。カタログを見ると各ギアのトルクと走行抵抗が分かるからそれで最高速度が算出できる。

    このように車の性能は加速、最高速度だという事で、それぞれ色々な指数があることが分かった。では、加速が速くて、最高速度が速い車が一番性能がよいのだろうか?

    ここで大事なのはその車の用途だ。日常使う車なのか、レースで使う車なのかと言うことだ。外食で言えば家庭で使うのか、業務用なのかという事だ。外食産業の調理機器は車で言えばレース車という事だろう。

    ではレース車にも色々ある。単純な加速を競うドラッグレースは0ー400mを如何に短時間に走りきれるかという事を競うから、エンジンの絶対馬力とその馬力をどうやって路面に伝えるかが重要だ。速い車は10秒を切るような加速をしめす。そんな車が全てのレースで速いわけではない。ドラッグレースは直線距離を走るから曲がることは想定していない。短時間の競争だからエンジンの耐久力を要求していない。同じレースと行ってもそれぞれのレースにより車に要求される条件が異なると言うことだ。外食であれば、ファーストフードとファミリーレストラン、高級レストラン、給食では要求されることが異なるのと同じだ。車のレースでも加速を競うドラッグレース、絶対最高速度を競うレース、周回コースでのレース(度胸と最高速度とコーナリング性能が必要)、距離や時間で決めるサーキットでのレース、最高速度と耐久力を競う24時間耐久レース、砂漠や山岳地での耐久力を競うラリーなど、用途別に分かれている。そして、それぞれの用途により車に要求される条件が異なるのだ。

    カーブの多いサーキットでの24時間耐久レース(有名なルマン24時間レース)では加速や最高速度の絶対値だけでなく、ブレーキの性能、カーブを安定して回るコーナーリング性能、エンジンや車の耐久力、給油時間が少なくてすむ燃費性能なども要求される。つまり、車としてのバランスを要求されるわけだ。そういう意味では日常使う車の条件に非常に近く、レース用のプロトタイプと、市販車の部門があり、自分が日常使っている車が性能を競うので人気がある。外食産業は土日のピークの売り上げが高いが営業時間は長いという矛盾があり、ルマン24時間レースに出るような物で調理機器には短時間の性能だけでなく、壊れないと言う安定性や、経費の面からも燃費という考え方も重要になる。

    [グリドルの性能]

    ではグリドルの性能の方程式は何だろうか。

    1. 加速=温度回復力グリドルで加速に当たるのが温度回復力だ。生の肉を焼く場合にはそんなに問題ないが、冷凍のハンバーガーパティを焼くようになると温度回復力が必要になる。ここで必要なのは常温のハンバーガーパティと冷凍ではどの位の熱カロリーが必要になるかという事だ。小学校の理科の時間を思い出していただきたい。水1ccを加熱し1℃ 温度を上昇させるのに必要な熱エネルギーは1calである。1ccの水を氷にするには80cal、1ccの水を蒸気にし蒸発させるには539cal必要である。ということは冷凍のミートパティは70%位が水分であるから、かなりの熱量が必要だと言うことが分かるだろう。ミートパティには蛋白質、水分、油脂が含まれそれぞれの比熱が異なるからそれを計算すると先月号のように45gの冷凍肉を焼成するのに必要なエネルギーは、1枚あたり15kcalとなる。1時間に600枚を焼くには9000kcal必要になる。という計算は以上の小学校の時の理科の計算だ。

      だから、もし、貴方の店舗が冷蔵温度の食品を焼くなら温度回復力をそんなに気にしなくても良いが、冷凍の食品を大量に焼く場合には温度回復力の早いと言うことが必要になる。

      温度回復力を左右する指数は、車で言うと0-400mと0-50mだ。0ー400mも重要だが、スタートラインからまず先頭に出ないといけないので0ー50mのダッシュ力も必要になる。それがミートパティをグリドルにおいてからサーモスタットが感知しバーナーに点火する時間だ。その為にサーモスタットの精度、感度、位置、埋め込み方法、バーナーの着火時間が重要になってくることが分かるだろう。

    2. 最高速度=時間当たりの製造能力車の最高速度に当たるのが1時間当たりの製造能力だ。これは温度回復力だけでなく、グリドルの総面積(温度が一定の温度が安定している実際の焼成可能な面積)と1枚あたりの調理時間だ。1人の動ける範囲は前後左右決まっているからそれから、必要な面積を割り出し、作業工程と調理時間を計算すれば1時間にどの位焼けるか算出できるわけだ。さて、皆さんは自分の車の性能を語るときに200km出たとかスピードがどの位出るかを物差しにするだろう。ところで、皆さんの車のメーターが200kmを指しているときにその精度はどうなんだろうとチェックをした方はいるだろうか。実は、日本では車の最高速度が180kmを越えないように車搭載のコンピューターを制御しているし、メーカーもスピードメーターを高速で甘め(実際のスピードより高い数字を表示する)ようにしている。本当にそのスピードが出ているのか、その精度はどうなのかをチェックしてからスピードを語るべきだろう。スピードメーターの精度というと車検場に持ち込んでチェックするのが一般的だが、40kmの低速の精度だけで100kmの高速のチェックは出来ない。

      スピードメーターのチェックは自分で簡単に出来る。一定のスピードで1km区間を走った際の秒数をチェックすればその速度を計算できる。1km区間の測定は簡単だ。高速道路の路肩には基点からの距離が100m単位で記されているので、それを目安にすればよい。後はストップウオッチで時間を計ればよいのだ。皆さんはクロノグラフという時計を知っているだろうか?時計にストップウオッチ機能が付いており、文字盤周囲に数字が刻まれているものだ。あの数字は飾りではない、1km区間を走りきる時間を計測すると、スピードが直ちに分かるようになっているのだ。1km区間を計測し、36秒かかったとする。そうすると1時間は3600秒だからそれを36で割り、その数字に1kmを掛けると1時間の走行距離つまり、スピードを算出できる。そうすると100kmになるのが分かるだろう。その36秒の位置に100という数字を刻んであるのが、クロノグラフだ。このように特殊な機械がなくてもストップウオッチだけで車の速度の精度を簡単に算出出来るのだ。どんな機械でも工夫をすればその性能を簡単に計測、測定が可能なわけだ。筆者は調理機器の性能測定にこの手法を取り入れられるのではないかと考えた。

    3. コーナーリング(温度の安定性)カーブの多いレースの場合、加速や最高速度だけでなく、どの位安定してカーブを曲がれるかという、サスペンションやボディの重量バランスなどを考慮しなくてはいけない。グリドルの場合昼のピークを考えたときに温度回復力の早いのは大事だが、品質を考えると温度が安定していることも重要だ。温度を180℃にセットしてもサーモスタットによっては20℃以上も温度が上下するようでは調理した食品の品質にばらつきが出てくる。温度を安定させるにはサーモスタットだけでなく、食材の並べかた、グリドルの材質、厚さ、排気ダクトの設計、バーナーの設計など色々な要素が出てくるわけだ。
  2. 効率がよく、使いやすいか

    [車の場合]

    レースは勝たなくてはいけないからガソリンの消費量の燃費は気にしなくても良いと思いがちだが、ルマン24時間耐久レースなどでは燃費が悪いと給油でピットインする回数が増加するのでかえって平均速度が遅くなると言う欠点がある。その為、エンジン出力のみでなく、エンジンの熱効率を最大限に高めるような工夫をしている。燃費は1リットルあたりのガソリンで、どの位の距離を走れるのかで表現する。

    また、レース途中のタイヤ交換や、部品交換も時間ロスになるので、耐久力のある部品を使用し、交換を容易に出来るようにしている。

    市販車のメインテナンス性については車メーカーにより大きな差がある。Tメーカーは製造段階からメインテンスをどうするかを考えるが、Hメーカーはユーザーのメインテナンスは全く考慮しないから、特別な工具や部品が必要で、メーカーの指定の工場に持って行かなくてはならない。車を選ぶ際には町の修理屋や個人タクシーのベテランに、どの車が整備しやすいか聞くと良いだろう。また、新車に添付される説明書は情報不足で車の整備をきちんとすることは出来ないから、メーカーが修理工場に配布する詳細な説明書を入手すると誰でもメインテナンスが出来るようになる。

    [グリドルの場合]

    1. 水道光熱費グリドルも車と同じく幾ら性能が良くてもガスや電気を大量に消費するようではいけない。その為にはグリドルのインプット(入力)とアウトプット(出力)を比較する熱効率が重要だ。グリドルにはどの位のガスの消費をするかの入力をkcalで表示してある。これはグリドルを1時間つけっぱなしにした際のガスの消費量を示している。この数値が高ければ性能がよいのではなくて、その入力が燃焼しどの位鉄板を温めているかという熱効率が重要になる。そのやり方については先月号を参考にしていただければよいのだが、どうも難しいと感じる場合の簡単な比較方法を述べてみよう。

      まず、グリドルの入力がカタログ通りかどうかを確認する。これは、車の速度の精度チェックと同じで、距離と時間で計測できる。車の場合は高速道路の距離表示だが、ガスはガスメーターでチェックする。店内の全てのガス機器の火を消して(湯沸かし器やその他の機器の口火も消す)グリドルに着火して一定時間のガス消費量を計測し、それを1時間に換算すればグリルに対するガスのインプットが分かる。この数値がカタログの数値とプラスマイナス10%以内であれば問題がない。この手法は全てのガス機器や、電気機器に使える手法であり、同じメーカーのグリドルでも店舗によって性能が違えば入力をチェックするわけだ。

      さて熱効率だが、先月号のように正確にやらなくてはいけないのだが、店舗ではそうも行かないので、簡易方法で比較をすると良い。まず、先月号のように正確に調査した正しい状態のグリドルをもとに、グリドルが室温の状態から、ガスをつけて、100℃から150℃までに温まるに必要な時間を計測する。例えば正確なテストで計測したグリドルの温度上昇時間が5分間であれば、その時間とだいたいプラスマイナス10%位で加熱できれば熱効率は同じであるといえるわけだ。

      グリドルにチョークなどでマーカーをつけ、温度計測する点を決める。次に反応の早いデジタル表示の表面温度計とストップウオッチを用意する。そして計測するという簡単な手法だ。グリドルの表面温度はばらつくので計測点の平均温度の上昇時間で計測するわけだ。この温度回復力が車で言うところの0-400m加速だ。フライヤーやトースターも同様の手法で計測する。

      車でもそうだが、カタログデーターの燃費は当てにならず、実際はその70%位の燃費となる。その理由は、渋滞に巻き込まれて発進、停車などや、止まっている間のアイドリング時のガソリンの消耗が多いからだ。

      グリドルの場合も燃焼したガスが発生した熱カロリーの全部が食品に伝わるわけではない。実際の燃費は食品を調理してどの位のガスを使用するかで計測する。ここでハンバーガーパティなどを最大能力で調理し、その間にどの位の熱量を使用するかを計算すると1枚あたりの実際のガス使用量を計算できる。また、焼かない状態で(車で言うとアイドリング)どの位ガスを消耗しているかも計測しておく。そうすると後で、使わないときにこまめに消すとどの位のガス代を節約できるか分かるからだ。

    2. メインテナンスが容易どんなに高性能なグリドルでも清掃が大変だったり、部品交換が難しければ使いにくい物となる。なるべく工具が無くても脱着できたり、隙間に手が入りやすいようになっていなくてはいけない。機械の裏側などにバリが出ていて手を切ったりするようなグリドルは最悪で使いたくなくなる。このメインテナンスを容易に出来るように設計している調理機器はメーカーの姿勢がしっかりしており信頼が置ける。
    3. 耐久力が高い車と同じでどんなに瞬間的な性能が良くても耐久力が低くてしょっちゅう故障したり、2ー3年で交換しなくてはならないようでは、売り上げ損失を起こすし、経済的でないわけだ。車と同じで壊れないと言う事は重要な要素だ。
  3. 安全性

    [車の場合]

    車の安全性を考える場合、コーナリングの安定度、緊急時のブレーキ能力、万が一ぶつかった際のボディーの安全性、衝突時の防火対策、等を考慮しなくてはいけない。高速道路などでの安全性を考える場合ブレーキの性能が重要だ。その為に色々な安全装置がつけられている。

    現在の車のブレーキはディスクブレーキと言い、円盤状の鉄製のディスクを両サイドからブレーキパッドで挟み込んでタイヤの回転を止める仕組みになっている。タイヤの回転が制御される際にタイヤのゴムと路面で摩擦を発生させ、そのエネルギーで車を止めるようになっている。

    ブレーキの能力を左右するのはそのディスクの大きさ、耐熱性、放熱性、ディスクパッドの面積、タイヤの巾、タイヤのゴムの材質や形状、等である。

    ブレーキの安全性を左右するのは、当初の性能通りに作動するのかという定期点検と、作動確認だ。ブレーキペダルを踏んだ力はブレーキオイルに伝わり、それがブレーキパッドを作動させるわけだ。その為には、ブレーキオイルが入っているブレーキホースラインから液が漏れていないか、ブレーキのマスターシリンダー(ブレーキのオイルを貯めておく)の部品の老朽化がないか、を毎日点検しなくてはいけないわけだ。また、ブレーキパッドは数万キロメートル走行すると消耗し、警告ランプがついたり、音が発生し交換を促すようになっている。しかし、そこまで消耗すると言うことは初期の性能よりも低下するので、筆者は残量が50%以下になったら交換するようにしている。コストはかかるが安全性を考慮したらやすい物だからだ。

    ブレーキの部品そのものを変える訳には行かないが、ブレーキの性能を新車の時と同様に保つことは安全性のためにも重要で、その為には上記のような定期点検が必要だが、それ以外に性能を維持する基本はタイヤのメインテナンスと定期的な交換だ。タイヤの空気圧は燃費、コーナリングの性能を左右させるだけでなく、緊急時の停止距離を大きく左右する。タイヤもブレーキと一緒で交換時期がくるまで使い続けると停止距離が伸びてくるので新品の50%以上消耗すると交換すると最大限の性能を維持することが可能だ。

    新車を購入する際にはこのブレーキの性能の高い車にすることが重要で、その為にはカタログデーターの、スピード別の停止距離をチェックすることが重要だ。また、ブレーキ性能は停止距離だけでなく、緊急ブレーキをかけている間にハンドルを切ることが出来るかという事がポイントとなる。緊急時にブレーキを強く踏むとキーという音を立ててタイヤがロックする。音はけたたましいのだが、ブレーキがロックすると停止距離は長くなるし、その間はハンドルを切ることが出来ないし、ブレーキのバランスが悪いと車が回転して大きな事故になる。

    筆者は、高速道路の下り坂で120km位で走行中、前方路面にビールケースが落ちているのを発見し、急ブレーキをかけた。下り坂で後方の車輪の荷重が少なく、直前に受けた車検の際に後ろのブレーキを効くように再調整させたのがいけなかったのか、後ろの車輪がロックし、高速道路上でスピンしてガードレールに激突してしまった。幸い、安全ベルトを締めており、後続車もなく、車も自走できたので無事であったが、もう少し間違えれば死ぬところであった。それ以来、車を購入する際にはブレーキ性能に特に注意を払っている。

    最新の車はブレーキがロックしてスピンをするのを防ぐアンチロックブレーキ(ABS)を取り付けている。また、雨やぬかるみ、雪道でスリップしないようにノンスリップデフやコンピューター制御の出力制御を持っている。筆者が車を購入する際にはABSやノンスリップデフ付きの車を選定している。そのおかげで、今年の異常降雪量の際にも、道路で恐竜のようにのたうち回っている大型のベンツや高級車を後目にすいすい走れることが出来た。

    [グリドルの場合]

    グリドルの安全性で最も必要なのは火災防止と言うことだろうその為に色々な安全装置を装備しなくてはいけない。

    1. 温度コントロール当たり前の事だが、鉄板の温度を一定に保つように温度コントロールを行う必要があり、サーモスタットを装備する。サーモスタットには色々な種類があり、精度も異なるし、時々調整をしないと温度が狂う。
    2. 加熱防止器(ハイリミット)サーモスタットというのは機械であるから必ず狂ったり、壊れたりする。壊れてグリドルが加熱するとグリドル周囲で火災を起こしたり、ダクト内部の温度が上がりダクト火災を発生する。その為に温度コントロールのサーモスタットが壊れてもある一定以上の温度に上がったらガスを遮断する、加熱防止器を取り付けなくてはいけない。そして、サーモスタットと加熱防止器は定期的に作動するか検査をするわけだ。
    3. 立ち消え防止器グリドルのバーナーに着火する口火が火が何かの加減で消えてしまうと生ガスが流れ、爆発したり、ガス中毒を起こす危険がある。その為、口火が消えたらバーナーに生ガスが流れないように立ち消え防止器を取り付ける。
    4. ガス圧調整ガスの入力はガス圧とノズル口径により左右され、ガスの圧力が規定以上高いと、ガスの入力が増加し、不完全燃焼を起こすので、一定のガス圧以上にならないような調整器を取り付ける。ガバナーとかガス圧調整器、ガスプレッシャーレギュレーターという。
    5. ガス漏れ、不完全燃焼警報ガス漏れが発生したり、ガス圧調整器が壊れて燃焼不良を起こすと火災やガス中毒の危険があるので、色々な安全装置をとりつける。ガス漏れ防止のためには立ち消え防止器器の取り付けだけでなく、警報装置や、ガス遮断弁を取り付ける。ガス漏れ警報機はグリドルなどのガス機器の周囲に取り付け、ある一定濃度以上のガスを検出すると警報を出すようにする。設定以上のガスが流れが場合に以上を感知し、ガスメーターに組み込まれた安全装置が作動し、ガスの流れを遮断する装置もある。家庭用にはマイコンメーターと言い取り付けられているが、業務用は別途取り付けが必要になる。

      最新型のグリドルには燃焼ガスの濃度をチェックし、異常を発見した場合に自動的に作動を止めたり警報装置が警告音を出すようになっている。

    6. 防火対策グリドルなどのガス機器は燃焼した高温のガスを排出する。その燃焼済みの高温のガスを排出するためにフードとダクトで建物の外部にだす。ダクトが排気するためには屋上にモーター駆動の排気ファンを設置し、電気で作動させる。グリドルやフライヤーなどのガス機器を燃焼させた際にその排気ダクトを作動させないとダクト内部が高温になり、最悪の場合には火災を発生する。

      その対策として、排気ダクトの電気スイッチを入れないとグリドルなどのガス機器が作動しないようなインターロックを取り付けると安全になる。また、火災が発生したり、高温になると排気空気を遮断するヒューズが取り付けられているので、その予備と設定温度を確認しておく。

      その他、高温などの異常事態を感知し警報を出す装置や、出火時に自動的に消火する自動消火装置などを取り付けて万が一の際に備えるべきだろう。

  4. 有利なコストか

    [車の場合]

    車のコストは車両購入代金だけではない。使っている際のガソリン代、高速代金、駐車料金、修理代。車検代、税金、車両保険、など色々に分かれる。簡単に言うと車両代金そのものは全コストの1/3、ガソリン代や高速代金などが1/3、修理代、車検、税金、車両保険などが1/3となるだろう。車を購入する際には車両代金だけでなく、燃費、修理代、車検コストなどのランニングコストを考慮する必要がある。

    当たり前のことだが、値段やランニングコストだけでなく、故障がし難いかぶつかったときに安全か、ブレーキは良く利くか等の安全面もコスト以上に大事だ。

    [グリドルの場合]

    同じ事はグリドルなどの調理機器に言える。グリドルを購入する際に値段だけで選定するのではなく、どの位の熱効率か、修理代はどうか、耐久力はどうか、安全性はどうかまで考慮して選ぶことが必要だ。ま高性能なグリドルの方がトータルコストが低い場合があるからだ。

    チェーンの場合には値段だけでなく、故障した際にどの位で修理にこれるか、正月やお盆の休暇の際のメインテナンス体制はあるのか等もチェックしておかないと、忙しい際に売れないで客のクレーム処理に負われることになる。

  5. 健康診断

    [車の場合]

    車の性能を維持するための手段をチューニングという。この言葉は新車時の性能を維持すると言うことであり、まず、車の健康診断と定期点検、部品交換が必要だ。健康診断とは車の調子がよいかどうかを毎日の点検項目に従い、目で見たり、さわったりして確認することだ。また、日常から車を運転していて、調子が悪い箇所がないか、何か異音がしないか、動作に以上がないかをメモをしておき定期点検の際に工場に伝えなくてはいけない。工場に定期点検に持ち込む際に重要なのはその日頃の問題点や使い方を正確に伝えると言うことだ。工場は一般的な整備と点検しかしないから、貴方がスピードを出すのか、距離を走るのか分からないからだ。距離を走る人であれば次の点検までの予定走行距離を伝え、それに見合った部品の交換をしてもらうことが性能を最大限に保つ秘訣だ。

    [車のチューニングの秘訣]

    1. エンジンの調子を維持するには3つの流れに注意する車のエンジンは内燃機関と言い、空気とガソリンをエンジンシリンダーに入れ、爆発燃焼させて、ピストンを上下させ、それをクランクを通じて回転力にして、タイヤに伝えて走行する。エンジンで重要なのは空気とガソリンとが適切な比率で混合され、十分な量がシリンダーに入り、タイミングを見計らって、スパークプラグに高圧電流を流し、点火させることだ。つまり、空気、ガソリン、電気の流れがスムーズであるという事だ。新車の時には最大限の性能が出せるが、使用するにつてその流れがスムーズに行かなくなる。そこで、流れを妨げる汚れや異物を取り除くのが、チューニングである。

      [空気]

      汚れた空気をそのままシリンダーに吸入するとシリンダーが磨耗してしまうので、エアークリーナーという空気フィルターを取り付けて濾過をするようにしている。普通走行距離数万キロ単位で交換するが、これは空気の汚れ、渋滞の状況により異なるから日頃から最適の状態を自分で設定して交換する。エアークリーナーが詰まった状態でエンジンを燃焼させると、馬力が出ないだけでなく、燃費が悪くなったり不完全燃焼をおこして燃焼室にカーボンが溜まり規定の馬力が出なくなったりして性能が落ち、エンジン寿命を短縮させる原因となる。昔の車はキャブレターで空気とガソリンの混合空気を作った。空気の通路を絞ると流速が増し、負圧を生じる。そこにガソリンのノズルを置くことにより一定のガソリンと空気の混合気を作るのだ。だから、空気の流れがスムーズでないと一定の混合気が出来ないし、馬力も出ない。量産車の場合にはキャブレターからシリンダーまでの間のマニフォールド(吸気管)にでこぼこがあったり、バリがあって規定通りの馬力が出ない場合がある。そこで、ちょっと馬力を出したいときにそのマニフォールドやシリンダーの接続部分を研磨しスムーズにすることにより空気の流れが良くなり、シリンダーに入る混合空気の量が増加し、馬力を増やすことが出来る。

      [ガソリン]

      ガソリンも同様に異物を取り除くために燃料フィルターを取り付けてある。これが詰まってくると一定量のガソリンが供給できないので、出力が落ちで最悪の場合走行できなくなる。また、粗悪なガソリンを使用すると成分がキャブレター内部のノズルに付着し、十分なガソリンが流れなくなることがあるので、定期的に添加剤を加えガソリンラインの清掃を行う。キャブレター内部も同様に汚れが溜まるので、カーボンクリーナーなどを吹きかけて綺麗にすると新車のようによみがえる。

      ちょっと馬力を出したいときにはガソリンのノズルの直径を大きい物に変更し、ガソリンの供給量を増やす。同時に空気もそれに見合った量を吸い込めるようにエアークリーナーの容量を増加したり、マニフォールドを研磨する。

      [電気]

      電気も同様だ。シリンダー内で圧縮した空気とガソリンの混合気に、スパークプラグに高圧電流を流すことによりスパークを発生させ点火させて爆発させるわけだ。古い車の場合はバッテリーの電流をコンデンサーからディストリビューターを通し、スパークプラグに送るが、ディストリビューター内部の電気接点の汚れや、スパークプラグの汚れがあると電気スパークが十分に発生しないから不完全燃焼をおこし、場合によってはエンジンの耐久力を落とし、燃費を悪化させる。その為に定期的にディストリビュータの接点やスパークプラグの清掃や間隔を調整する。また、ディストリビューターやスパークプラグなどが雨などで濡れると漏電し十分なスパークをせず、車が動かないときがある。そんなときには湿気を取り除くシリコンスプレーを吹きかけて湿気を防止する。

    2. 車の故障を防ぐ消耗品の定期交換車はエンジンが動いてその力を車輪に伝えて動くわけで、エンジンの燃焼だけではなく、全体のバランスが大事だ。エンジンの燃焼が旨く行っていても、エンジンの冷却機能が働かないとオーバーヒートしてピストンが焼き付いてしまう。一般的な車はシリンダーの周囲を水で冷却する水冷方式を採用している。シリンダーの周りを冷却した水は加熱されるから、ラジエターを通る際にファンで空気を吹き付けて冷却する。ファンはエンジンのクランクシャフトから取り出した回転力を、プーリーにつけたゴムのファンベルトを通して駆動される。ファンベルトが切れると冷却が出来なくなりオーバーヒートするから定期的に点検し、交換する必要がある。

      冷却液も同様だ。冷却液は冬場にエンジンが動いていないときには寒冷地では氷点下に下がり水のままであると凍結しシリンダーを破壊してしまう。その為に冷却しないようにグリコールを添加する。冷却液は夏場の温度が高い状態を想定して量を決定するから、冬場のように周囲温度が低い状態では冷却水の温度が低すぎて、エンジンの燃焼がスムーズにならないし、燃費が低下する。その為に、ラジエターとシリンダーの間にワックスの伸縮を利用したサーモスタットをおいて、水温によりバルブを開閉し、温度を一定に保つようにする。冷却液も定期的に補充したり、2年に一回交換しないと性能が維持できないので、時々点検と交換が必要だ。サーモスタットも同様で3年に一回くらい交換しないと開閉しなくなり、オーバーヒートや過冷却を発生させる原因となる。冷却水ラインのゴムホースも経年変化で堅くなったり、エンジンの振動で亀裂が入り冷却水を漏らすので、手で触り必要なら交換する。以前のゴムは品質が悪く、筆者は何時もトランクにバケツと予備のホース、ファンベルトなどを入れ、路上で蒸気機関車となった車を修理していた物だ。

    [グリドルの場合]

    1. グリドルの水道光熱費で述べたような計測方法を定期的に行いまず新品の状態を維持しているかを見ていく。

      [空気とガスの流れ]

      車を手入れする手法は調理機器と同じだ。清掃をきちんと行うと言うことだ。グリドルのバーナーはブンゼン式や赤外線式であり、ガソリンの変わりに都市ガスを空気と混ぜて燃焼させるわけだ。小学校の理科の時間でブンゼン式バーナーを使ったことがあるはずだ。これはガソリン自動車のキャブレターと全く同じ原理で、都市ガスが細くしたノズルから吹き出す圧力を利用して負圧にさせそこから、1次空気を吸入し、ガスとの混合空気を作る。その混合空気が燃焼バーナーに入り、口火によって点火され、バーナー周囲の2次空気と相まって燃焼するというわけだ。1次空気の取り入れを調整出来るようになっているから、燃焼する炎の色や状態を見ながら最適になるように調整する。

      使っている内にガスのノズルや一次空気の吸い込みのエアカラーに汚れが溜まるので、車と同様に定期的に清掃をする。また、一次空気のエアカラーの開き具合も定期的にチェックし必要なら調整するわけだ。

      [電気]

      グリドルのサーモスタットは電気接点を持っている。グリドルに埋め込まれたサーモスタット内の液がグリドルの温度上昇に従い膨張し、一定の温度を感知したら接点を開きガスの流れを止める。グリドルの温度が下がれば接点を閉め電流を流し、ガスバルブを開けてバーナーに点火する。この働きでグリドルを一定の温度に保てるのだ。しかし、長く使っていたり、調理場の空気が汚れているとサーモスタットの接点部分にカーボンが溜まったり、汚れが溜まり開閉しなくなる。その対策は車のディストリビューターやスパークプラグのメインテナンスと同様で、スプレーの接点復活剤や紙ヤスリを使用して修理する。車の馬力を左右するのはガソリンの噴出量とそれに見合った空気の供給だ。ガスバーナーの場合も同様にガスの供給量を増加することにより出力を上げられる。ガスの供給量を左右するのはガスの圧力とノズルの直径だ。ガスの供給圧力は一日の時間で変動をする。昼間や、夕方などの調理や風呂を炊くことによりガスを使用する場合にはガス管全体の圧力が低下し、早朝や、深夜などあまりガスを使用しない時間はガスの圧力が高くなる。

      ガスの圧力の変動によりガスの供給量が規定以上に増えると不完全燃焼を起こし危険なので、一定の圧力異常にならないようにガス圧をコントロールするガスプレッシャーレギュレーターを取り付ける。

    2. グリドルの故障を防ぐ消耗品の定期交換車の故障を防ぐ消耗品の定期交換と同様である。グリドルの場合燃焼した高温の排気ガスを排気ダクトを経由して建物外部に排気する。屋上にはモーターがあり、その回転力をプーリーとファンベルトを利用して排気ファンに伝える。車と同じファンベルトを使用するので、点検方法や交換方法は全く同じだ。排気ファンを作動させないでグリドルを使用すると高温の排気熱がダクト内に溜まり、最悪の場合火災を起こすから、日常の点検を欠かせてはいけない。

      車の場合のラジエターのサーモスタットと同様の物はグリドルのガスプレッシャーレギュレーターのバルブで使用しており、ゴムの硬化やカーボンの付着、バネの作動不良など点検や修理の方法はほとんど一緒であった。この冷却水のメインテナンスの手法は空調機器のメインテナンスと全く同じであり、大変役立った。

      車の部品交換の際には古くなるとねじなどがさび付いて動かなくなるが、それを動かすためにはシリコンをスプレーで吹きかければ、錆に浸透して簡単に動くようになる。それらの原理はグリドルなどのメインテナンスで大いに活用できたのだった。

  6. 原理原則と成功の方程式当時のマクドナルドにとって必要だったのは熱効率がよい以前に、高い売り上げに対応出来る高性能のグリドルだった。5回目にも書いたように当時のグリドルはフレッシュミート用の出力が低いものであり、さらには本来は取り付けてある筈のガスプレッシャーレギュレーターを取り付けていなかった。グリドルの設置と調整は深夜に行うので、ガスの圧力が高いから小さい口径のノズルに設定する。深夜の圧力をもとに設定されると昼や夜のピーク時にガスの圧力が下がって規定の出力が出ないのだった。

    その原因を知るのには数年の時間がかかったが、何とたった一つの方程式が全てを解決してしまうのが分かった。

    それがガス器具のインプットの計算式だ。

    I=Q×H=0.11×D2×K× (P/d) ×H という簡単な計算式だ。 I=インプット、入力(kcal/h, 1時間当たりの消費熱量) Q=ガス量 (m3/h 、 1時間当たりの使用ガス立方メートル ) H=使用しているガス種類の発熱量 (kcal/m3,1立方メートル当たりのカロリー) D=ノズル(オリフィス)の直径、mm P=ガス圧力、 mmH2O d=ガス比重 K=流量係数(配管抵抗などの係数) 、一般的に0.85~0.95だがガス種や配管 径、配管の抵抗によって異なるので実測する方が正確である.この計算を見てもわかるように、ノズル径を変更するとガス量はノズル径の2乗で増減する。ガス圧は圧力の平方根に比例して増減するという簡単な原理だ。

    ノズル径を2倍にするとガス量は4倍になり、1/2にするとガス量は1/4になる。ガス圧を2倍にすると1.414倍になり、1/4にするとガス量は1/2になる。

    つまり入力の微調整にはガス圧で対処し、大きく変更するときはノズル径を変更するということだ。

    このたった一つの計算式を使い、全店を回り、ガス圧の測定、ノズルの直径を計測し、問題のある店舗の改善を開始した。一つの方程式が全ての問題を解決したのだ。

    後にこの計測の手法をマニュアル化して、ガス機器のガス圧設定、ノズルの設定を、ガス種別、機器別に設定した。それをもとに機器設置業者のトレーニングを行い、全店舗の調理機器の標準化と性能の向上に大きく役立てることに成功した。

    このように必ず、機器の性能を左右する方程式があり、それを発見すれば後は簡単なのだ。その為には本を読むだけでなく、現場を徹底して詳細に調査、記録、を行い、専門家の意見を聞き、方程式を編み出す必要があるのだ。

    筆者が常にノートに記録して持ち歩いていたのが別紙のガス燃焼の基本知識だ。参考にしていただきたい。

    また、機械は知らないからと恐れてはいけない。身近な機械をまず理解して少しずつ機械になれていくことだ。今まで説明したように車だけでなく、デジタルの腕時計の操作方法を説明書を見て行うとか、カメラ、ビデオカメラ、パソコンなどの身近な機械を自分でいじることがまず第一歩だ。壊すことを恐れずに遊びながら勉強をしていただきたい。決して専門家になる必要はない。現状より良くなればよいのだからという気楽な取り組みをしてみよう。

    もう一つのポイントは車やカメラでもそのジャンルでベストの物を使ってみることだ。体でよい機械を経験すればどんな箇所が優れているか分かるはずだ。調理機器も同様で一番優れている機種を購入しそれを徹底して使いこなす中から何が優れた性能かが分かるようになる。優れた車や調理機器は決して高価であるとは限らない。それを見つけるのは皆さんの機械に対する経験から生まれる洞察力だ。真剣に取り組んでいくと、車や機械を見ただけで、それが優れているのかどうか瞬間に判断できるようになるのだ。その優れた調理機器に触れることが出来たのが米国研修旅行であったわけだ。

参考資料

ガ ス 燃 焼 の 基 本 知 識

最初に一般的なガス燃焼の基本を説明しておこう。日本の厨房業者の多くがステンレス板の板金業等からスターとしたために、ガス燃焼についての専門家が少ない。そのため複雑なガス器具の導入において、調整できない事が有り得る。特に輸入のガス機器の導入では多くの問題がある。店舗の運営の人達であっても、ガス燃焼の基本知識を理解しておく必要があるのである。

日本には約14種類以上のガスがあり表1のように分類されている。

表2は代表的なガスの組成成分の違いと、比重の関係を示す。

表1

   燃焼速度    種類 ウオッベ指数     ガスの発熱量  ガスの圧力(mm)  比重  燃焼速度
   の分類           最大    最小  kcal/m3      最高 標準 最低       cm/秒

  A(遅い)    4A  4,280  3,720  3,600~4、500
               5AN  4,970  4,320  4,200         200  100   50
                5A  5,400  4,700  4500~5,000

                6A  6,740  5,860  7,000         220  150   70  1.23 38

               12A  12,850 11,750 9,000~11,000                0.66 38~40
                                                250  200  100
               13A  13,800 12,600 9,500~11,000                0.65 38~40

                4B  4,330  3,770  3,600                        0.74 55~65
  B(中間)    5B  5,350  4,650  4,500         200  100   50
                6B  6,850  5,950  5,000                        0.61 47~63

                4C  4,550  3,950  3,600
                5C  5,890  5,110  4,500~5,000  200  100   50
  C(速い)    6C  6,530  5,670  4,200~5,000                 0.55 64~68
                7C  7,060  6,140  4,500~4,800

  参考         LPG                24,000             280        2.0  38~46
                  表2 代表的なガスの組成成分(JIS規格)

              水素  メタン  エチレン  プロパン  ブタン   窒素  空気  ウオッベ 比重   総発熱量
              H2   CH4  C2H4  C3H8    C4H10  N4          指数


  13A(#1)  -     85.0 -     15.0    -      -     -     14000 0.704  11750

  6A        -     -    -     -       22.0   -     78.0  6,320 1.240  7,040

  6B(タイプ3) 30.0  13.0 -     12.0    -      45.0  -     6,000 0.714  5,070

  6C(タイプ1) 57.5  -    -     12.5    -      30.0  -     6,620 0.524  4,790

都市ガスとは、石炭ガス、石油から作るナフサガス、LPG(プロパンガス)と空気と混入、天然ガスとLPGと空気の混入ガス、等から構成される。一般的に頭の数字が4~7、アルファベット記号がA~C等のガスである。現在は天然ガスへの転換が進んでおり東京ガス、大阪ガスの地区では転換が終了している。しかし周辺の中小のガス会社ではまだ転換に時間がかかる。天然ガスは12A、13Aの2種類である。

ガスの燃焼の遅い速いにより3種類に分けられる。燃焼速度の数値が大きいものは燃焼速度が速い事を表す。Aが遅く、Bが中間、Cが速い。Cタイプはコークスガス等から作られ水素を多く含む為比重が軽く、燃焼速度が速い。また水素を多く含むため、燃焼ガスに水蒸気を発生しその水分が燃焼成分の酸と結合し金属を侵すという問題を発生させる。燃焼が速いという事は、逆火を発生しバーナーで燃焼しなくなるという問題も発生する。またカロリーとガス圧が低いため、能力がでないという問題も発生するなど、輸入のガス機器にとってCタイプのガスは対処に注意する。

なお余談ではあるが、都市ガスには一般的にCO(一酸化炭素)が含まれる。そのためガス自殺をする例が多くあったが、天然ガスの場合はCOを含まないため、ガス中毒による自殺は出来なくなった。それを知らずに自殺をしようとし、死にきれずにタバコを一服しガス爆発を引き起こすという大事故が増えている。

ウオッベ指数というのは、ガスの発熱量をガスの比重の平方根で割ったものである。この指数をさらに1000で割ったものが、ガスのタイプの頭にくる数字13とか6になる。この6Cとか13Aの数字とアルファベットの記号はガス器具の互換性を表す。一般的には、LPGと天然ガスのグループと、都市ガスのグループの2種類の器具に分かれる。これは特に、燃焼器具のバーナー、ガス圧、ノズル径のデザインに関係する。LPGは燃焼速度がもっとも遅く、比重も空気より重いため燃焼特性が悪いが、コスト的に安いため広く使われている。

ガス燃焼

ガスの燃焼方法は、ガスと空気が混合する場所や、あらかじめ混合する空気(1次空気)の量によって、次のように分けられる。

  • ブンゼン式燃焼方法
  • セミ ブンゼン式燃焼方法
  • 赤火式燃焼方法
  • 全1次空気式燃焼方法

まず最初にブンゼン式燃焼方法から説明する。

ブンゼンバーナーの燃焼
理科の実験で使ったブンゼンバーナーを思い出していただきたい。一般的に使われているバーナーである。 ガスの燃焼には大量の空気が必要である。ノズルから吹き出したガスの流速により、ガスバーナーのマニフォールドの吸い込み口(狭くなった首の部分)の所に負圧を発生し空気を吸い込むのである。ガス量が多ければ負圧が大きくなりそれだけ大量の空気が吸入される。この空気の事を1次空気と呼ぶ。更に、この開口部を大きくしたり小さくする事により空気の吸い込み量を調整するのである。これをエアーシャッターまたは、エアーカラーという。1次空気の量は燃焼に必要な空気の量の50~70% である。残りの30~ 50%の空気は炎の周囲の空気から供給される。この空気を2次空気と呼ぶ。

バーナー当たりのガス発熱量が同じ場合には、都市ガスの方が単位当たりのカロリーが低いためガス量が多くなる。バーナーに噴射されるガス量が多いため、バーナーのマニフォールドの所で負圧がより大きく発生するので、吸入される空気量が多くなる。

ところが都市ガス特に6Cの場合は燃焼速度が速いため、1次空気が多すぎると更に燃焼速度が速くなり、逆火を発生するので、エアーシャッターを閉じて1次空気の量を40%位に抑える。米国製のバーナーの場合改造の必要もある。

反対にプロパンの場合はカロリーが高いので、ノズルから噴射するガス量が少なく、1次空気の吸い込み量も少な気味である。また燃焼性も悪いので、エアーシャッターを大きく開けて、1次空気の量を多くするようにしないとススが発生する。

バーナーのデザインで大事なのはバーナーの先端にある穴の面積である。この穴の事を、炎孔と呼ぶ。バーナーのガス発熱量(バーナーに送られるガス量×ガスの発生熱量)をバーナーへ供給される穴の総面積で割る。kcal/mm2で表す。一般的に都市ガスは8~13kcal/mm2であり、天然ガスLPGの場合は5~8kcal/mm2である。

現在、日本ではユニバーサルバーナーといって両方のバーナーに対応する物になっている。この場合、炎孔の形状を工夫したりする場合もあるが、一般的には8~10位にこの炎孔負荷の値を設定しているだけである。業務用の出力の高いバーナーではそのタイプにあったバーナーを使用する方がよい場合がある。

輸入、特に米国製のガス器具の場合、米国内では天然ガスとLPGしか使用していないため、一般的に炎孔負荷を低めに設定している。都市ガスの地区で、特に6C等のように燃焼の速いガスの場合、逆火を発生しやすくなる。対策としては炎孔負荷をあげるために炎孔径を小さくする事などが考えられる。炎孔径を大きくするのはドリルで穴を開けるだけなので簡単であるが、小さくするのは出来ず、メーカーが対策用のバーナーを持っていなければならない。以前は米国のメーカーは対処できなかったが、最近は出来るメーカーもあるので事前に確認されたい。

都市ガスの地区で炎孔負荷の高いバーナーを使用していて、天然ガスやLPGに変換すると別の問題が発生する。天然ガスやLPGは燃焼しにくいガスであるため、炎孔径が小さいと2次空気を十分に取り入れる事が出来ず、ススが発生し清掃を頻繁に行う必要があり、不完全燃焼の危険もある。この場合は炎孔径を大きくするだけでよいので、計算をし直し必要な径のドリルで穴を拡大すれば良い。

きれいに燃焼している炎は、バーナーの炎孔から離れすぎずに青白い光でしっかりと燃える。もし炎の色が赤くゆらゆらしている場合は1次空気の不足であり、バーナーの炎孔から大きく離れて青白い光で燃焼している場合は1次空気の過剰である。燃焼状態はガス種により若干異なる。また、周囲の空気中に細かい塵などが含まれていると燃焼する炎の色が変化する。1次空気が不足し赤火で燃焼するとススを発生し、バーナーの炎孔を詰まらせたり、ガス器具内部にススが溜まり燃焼効率を下げ、最悪の場合には出火する事がある。1次空気が多すぎると、逆火を発生しバーナーに火がつかないため、かえって熱効率が落ちる。また、バーナーや、オリフィスを痛める事になる。逆火とはガスと空気の混合物の炎孔からの噴出速度がその燃焼スピードより遅い場合に、炎孔面で燃焼せずオリフィスの部分まで押し戻されて燃焼する事をいう。

オリフィスはバーナーマニフォールド吸い込み口の中心に直角にガスを噴射するように位置決めをしなくてはならない。さもないと負圧が充分に発生せず、1次空気の吸い込み量が少なくなる。特に、LPGの場合噴射ガス量が少ないため、注意する必要がある。

その他の燃焼方式のセミブンゼン式燃焼方式は1次空気の混入量を30~40%に落とし、赤火式は1次空気が0%、全1次空気式は1次空気量が100%である。

業務用のガス機器は一般的にブンゼン式が多く、その他のタイプでは全1次空気式のタイプの赤外線燃焼バーナー、ブラストバーナー、パルス燃焼バーナー、触媒燃焼バーナー等が出てきている。そのほかの燃焼方法はあまり使われていない。

ガスインプット(ガス入力量)の調整

ガスバーナーの入力は供給されるガスの量で決まる。ガスの流量はガスガバナー(ガス圧調節弁、ガス圧レギュレーター)の圧力と、バーナーへガスを噴射するオリフィスの開口の直径でコントロールされる。

表1のガスの圧力とはガス会社から店舗への供給ガス圧力を意味する。最高と最低があるが、これは途中の配管や距離、周囲の使用状況により供給ガスの圧力が異なるためである。特に影響するのは、夕方各家庭で食事の支度をしながら風呂を炊くので、ガスの使用量が増え、店舗の夕食ピーク時に供給圧力が落ちてしまう。ガスの圧力が落ちるとフライヤー、グリドル、オーブンレンジなどの能力が落ちるのでそれを防ぐため、最初から機械のノズルの径を低いガス圧に合わせて大きく設定しておく。その場合もしガス圧が高くなると不完全燃焼を起こして危険なので、ガスガバナーを設置し設定以上にガス圧が上がらないようにするのである。ガスガバナーはガス圧が低いときにそれを上げる物ではない。

ガス入力が高くなるとダイヤフラムを押し上げその結果バルブが閉まりガスの流量を少なくする。ガスの圧力が下がると、スプリングによりバルブが戻され、バルブの開度が大きくなり、ガスの流量が増加する。ガス圧の調整は調整ネジでスプリングの固さを変えたり、スプリングを取り替えて行う。都市ガスなどの中で変更するときは調整ネジの調整ですむが、都市ガスから、天然ガスやLPGへ変更するときはスプリングを変更する必要がある場合がある。バーナーの炎の高さが変動したり、揺れて息つきをするときには店舗への供給圧に問題がなければ、ガバナーのスプリングの問題が考えられる。

ガス圧の測定はガスバーナーを燃焼中に検圧孔にガス圧測定器のゴムホースを差し込んで計測する。ガス圧測定器はガラスのU字管を使用する。U字管に水を入れ片側にホースをつなぎそのホースを検圧孔に差し込む。ガスを燃焼させると検圧孔からガスが入りU字管の水を押し上げる。その下限と上限の差がガス圧である。単位はmmH20である。ガスガバナーにはメインのガスバルブに内蔵されたタイプもある。

ガス器具のインプットの計算式(ガスインプットの調整に必要なので覚えておく)

I=Q×H=0.11×D2×K× (P/d) ×H

I=インプット、入力(kcal/h, 1時間当たりの消費熱量)
Q=ガス量 (m3/h , 1時間当たりの使用ガス立方メートル )
H=使用しているガス種類の発熱量 (kcal/m3,1立方メートル当たりのカロリー)
D=ノズル(オリフィス)の直径、mm
P=ガス圧力、mmH2O
d=ガス比重
K=流量係数(配管抵抗などの係数) 、一般的に0.85~0.95だがガス種や配管径、配管の抵抗によって異なるので実測する方が正確である。

この計算を見てもわかるように、ノズル径を変更するとガス量はノズル径の2乗で増減する。ガス圧は圧力の平方根に比例して増減する。

ノズル径を2倍にするとガス量は4倍になり、1/2にするとガス量は1/4になる。ガス圧を2倍にすると1.414倍になり、1/4にするとガス量は1/2になる。

つまり入力の微調整にはガス圧で対処し、大きく変更するときはノズル径を変更する。

天然ガス、LPGの場合はガス圧が高いので調整は比較的容易である。天然ガスの場合ガバナー圧で100mmH2O前後に合わせる。LPGは150~200mmH2Oで調整する。

都市ガスで特に5Cのタイプはガスのカロリーが低くガス圧も低いので、場合によっては40~50mmH2Oに合わせる必要がある。ガバナーによっては対応できずスプリングの変更が必要な場合がある。

どの位の圧が良いのかというと、実測するのが一番である。もし、ピーク時に機械の能力が落ちると思ったら夜間に、計測するガス機器のバーナーをONにし、ガスインプット(ガス入力)を計測する。その際、他のガス機器は口火も全て消すこと。インプットは備え付けのガスメーターのガスの使用量を数分間計測し、1時間当たりのガス使用量に換算し直すと算出できる。ガスメーターにも誤差があるのでこの値が設定値の±10%位であれば問題はない。インプット計測中にガバナーの点検孔のガス圧を平行して計測する。機器のインプットの計測が終了したら、他のガス機器の口火を全て点火する。計測対象の機器を点火しガス圧を見る、次に店内の全てのガス機器を点火する。特に湯沸かしも必ず点火すること。そして、もしガス圧が下がらなければ問題ない。下がる場合はその下がった圧でも設定のガスインプットになるようにノズルの直径を拡大し、ガス圧の設定を最低圧に設定し直す。再度ガスインプットの計測をし、再確認する。必ずメーカー指定のガスインプットになるように調整する。

*上記の計測はかまわないが、ガス圧の調整やノズルの調整は危険なので、勝手にやって はいけない。必ずメンテナンス会社か、機械の販売会社に依頼する事。

ただメンテナンス会社がこのように調整するかの知識とチェックは必要である。

*絶対にメーカーの設定値以上にバーナーの出力を上げてはいけない。炎孔負荷の設定値 が異なり不完全燃焼する危険性がある。

*ガバナーも長く使用していると、作動しなくなる事があるので安全の見地から、年に一 回くらいは設定値のチェックは必要である。

お断り

このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。

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