米国外食FCの動向(日本経済新聞社 日経MJ2003年12月)

<<外食フランチャイズの動向>>
日本の外食フランチャイズを3つの分野に分け、それぞれの動向と将来を見てみよう。
1)大手ファーストフード型フランチャイズチェーン
ファーストフード型フランチャイズチェーンを中心に、各地の優良フランチャイジーを組織化し、ハンバーガー、フライドチキン、ドーナツ、牛丼、宅配ピザ、持ち帰り弁当、等の大規模なチェーンを築きあげた。しかし、業態の陳腐化と店舗数の飽和状態と言う問題を抱え、新たなフランチャイジーの募集を行わず、安定成長型となっている。
しかし、その大手に大きな動きが見えだした。それが先月に紹介した、米国ファースト・カジュアルという業態だ。新業態の可能性に光明を見いだした日本の大手ファースト・フードチェーンは続々と米国視察を開始し、新業態開発に取り組んでいる。
大手商社やデベロッパーは米国のファースト・カジュアル・チェーンにラブコールを送り新たな提携を模索し、来年には幾つかの新ビジネスが誕生する予定だ。
また、郊外型中心に店舗展開を行っていたファーストフード業界だが、人口の都心回帰や新規オフィスビルの増加を冷静に分析すると都心での出店が少ないことが判明してきた。従来は地代が高く都心に展開できなかったが不動産価格の低下に伴い、今後、郊外の売上不振店舗を閉鎖し、都心のビルに出店を開始するだろう。
加盟企業も20年以上経過し、それぞれのビジネスの見直しを行っており、場合によっては外食ビジネスからの撤退や業態変更も検討しだしている。
大手ファーストフード企業は新規ジーを募集していなかったが、上記の理由によりフランチャイズチェーン企業全体を活性化させるために新業態の開発、既存店の閉鎖と移転、等のために新規ジーの募集、を行うだろう。これからフランチャイズチェーンに加入しようと言う方はあきらめずにノウハウの確立した大手フランチャイズチェーンの門をたたいても良いだろう。
2)中小のフランチャイズチェーン
大手チェーンの成功を見て、ラーメン、うどん、牛丼、天丼、イタリアンレストラン、ファミリーレストラン、弁当、宅配寿司、宅配ピザ、等の小規模なフランチャイズチェーン展開が行われるようになってきた。
しかし、小規模でノウハウもなく、ファーストフードの展開に必要なテレビ広告などのコマーシャルを流すことができず、多くの企業が誕生しては淘汰されてきた。フランチャイジーに取って、加盟先を選ぶのはかなりリスクが必要なジャンルであった。
さらに、チェーン加盟後20年以上経過するそれらの店舗のジーが高齢化し、子供への相続を検討する時代がきている。相続するためにはしばらくの期間、一緒に働く期間が必要であるが、小規模なビジネスの場合は2つの家族を養うに十分な売上と利益を得ることができず、ジーの老齢化と言う問題を抱えている。また、チェーン本部は新業態開発能力がなく、時代や客の要望に応えることができず、売上がじり貧になるという問題も抱えだしている。
そんな中小のフランチャイズチェーン業界だが、直営店で30以上の業態開発を行い、そのうち最も成功したラーメンと丼、餃子を中心とした中華業態でチェーン展開を行い、急成長を遂げている元気印の企業がある。常に新鮮な業態開発を行うために自社にデザインと施工部隊を30名以上抱え、迅速でローコストな店舗設計を可能にしているのだ。
また、差別化し難い居酒屋業態分野では、九州で大人気を得た、釣り船居酒屋が東京郊外や東北でフランチャイズチェーン展開を行いだし、釣り好きの好きな日本人にとって楽しい日本的なテーマレストランとなっている。釣り船居酒屋は投資コストが高いのが欠点だが、同社は自社でデザインと工事を行ったり、撤退店舗後を借り受けるなどの工夫を凝らし、投資コストの削減に成功している。今注目のテーマ型居酒屋チェーンだ。
中小のフランチャイズチェーンに加入する場合は、業態開発能力や、斬新な新業態を提供できる企業のジーになるようにするべきだろう。

3)新興急速チェーン展開型フランチャイズチェーン
大手の停滞と中小の伸び悩みをみて、新規参入を企て急成長をしているのが、フランチャイズ支援企業によるフランチャイズチェーン展開だ。フランチャイズチェーンを展開するには店舗経営のノウハウの開発が必要だ。ノウハウとはジーが加盟金とロイヤルティを支払った後でも十分な利益を出せるだけの高い店舗収益性だ。フードコストと人件費管理、初期投資コスト低減の仕組みを作る必要がある。しかし、経験のないザーにとってはコストダウンや仕組みづくりをするためには人材と時間が不足しているし、ジーの募集と選別にも大量の広告宣伝費用が必要だ。新興のフランチャイズチェーンに対してチェーン化知識とノウハウを供給し、チェーン展開を急速に行おうというのがフランチャイズチェーン支援会社の仕事だ。
その結果、多くのフランチャイズチェーン企業を店頭公開するまでに成功を納めたが、成功の副作用として、ジーの開店能力を超えて店舗開店権利を売りさばくと言う問題を抱えてしまった。また、新規フランチャイズチェーンの業態の陳腐化が思ったり速かったり、支援会社と新興フランチャイズ会社との意志疎通の問題、等を抱え、加盟ジーの評判を落とすことになってしまった。
しかし、新規フランチャイズチェーンを開発し、業態分析と改善を科学的に行うという技術では大変優れている。支援先の一つに、ビジネス街近辺にサラリーマンの昼食需要を獲得するセルフサービスの食堂があった。しかし、支援企業の分析によれば、もう少し客単価を下げてメニュー巾を広げれば、郊外二等地に和食ファミリーレストランを展開できる。そして、二等地であるから既存の和食ファミリーレストランと競合しないと言うメリットがあることがわかった。また、同じ食堂でもファッショナブルに店内内装を変換することにより、夜の居酒屋需要を取り込むこともわかった。支援会社は客の望む店舗デザイン、メニュー、一品の量、価格を徹底的に分析し、同じ調理システムでも三つの異なる業態、つまり、3倍以上の店舗展開を可能にしたのだ。その他、居酒屋などユニークなフランチャイズ展開希望のチェーンが同支援会社の元で収益性を確保する仕組みを考案中であり、まだまだ、新業態を誕生していくものと見られる。
中小の企業がフランチャイズチェーンに加入したり、事業の多角化をはかるためには最適のフランチャイズチェーンである。勿論、全ての業態に将来性があるのではないので、自分で各店舗を訪問し、その実力を判断するようにしよう。
<今後のトレンド>
フランチャイズチェーンに加盟するにはその業態が世の中のトレンドに適合し、寿命が長いか慎重に検討しなくてはいけない。
トレンドのキーワードは、人口の老齢化と個食化だ。
人口の老齢化は家庭内調理から、惣菜などの中食への移行、在宅配食、個人で食べられる食堂、等の新業態を生み出すだろう。料理の動向で言えば洋食から、より食べやすい和食に嗜好が変化している。
家族がいてもそれぞれが食べる時間や料理の好みが異なり、同じ家庭内でも食べる時間や料理が異なる個食の時代となり、個人で気楽に食べられる和食の業態が望まれている。居酒屋と定食屋の複合業態が住宅地などで誕生していくだろう。
従来は家庭の食事は団欒の場であったが個食化現象から、団欒の場は家庭外に求められ、テーマ型の居酒屋や、個性のある居酒屋などの、楽しい場がより求められるようになるだろう。
業態別動向
タイプ 今後注目の業態
大手ファーストフード型フランチャイズチェーン 米国ファースト・カジュアルにヒントを受けた新業態。米国ファースト・カジュアル・チェーンの進出。都心回帰や新規オフィスビル対応型の店舗。大手ファーストフード企業の新規ジー募集。
中小のフランチャイズチェーン 自社の業態開発部隊による斬新なコンセプト開発をする企業。釣り船居酒屋のような独特のコンセプト。
新興急速チェーン展開型フランチャイズチェーン 業態分析と改善を科学的に行い、客の望む店舗デザイン、メニュー、価格、の開発設定を行いチェーン展開する企業

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