衛生対策(日経BP社 日経レストラン2002年5月号)

衛生対策に必要な設備、備品、機器
1)食中毒の件数
堺市の学校給食でo-157による大規模な食中毒事件以来、厚生労働省は食品衛生のレベルアップのために米国で開発されたHACCPという衛生管理の手法を取り入れ、外食企業でもそれを自社の仕組みに取り入れるようになりました。中小や個人の飲食店でも衛生対策の強化が必要になっています。HACCPと言葉から難しく考えがちですが、基本的な考え方は変わりません。日本の保健所の行う衛生責任者の講習で、菌を「付けない、増やさない、殺す」と教えていますが、その基本的な衛生管理の手法に「具体的な温度、時間」を付け加えたのがHACCPなのです。そのためには使う調理機器の選定、温度管理、効果的な洗剤、害虫ネズミの駆除、その他衛生管理を明確にしていく必要があります。
調理人であれば、それぞれ自分の使う包丁セットを持ち、その包丁の選定やメインテナンスには気を遣っています。衛生管理に使う機械や資材にこだわり、丁寧にメインテナンスをする時代に来たのです。
勿論皆さんの中には長年飲食業に従事して今まで問題ないから昔からのやり方で大丈夫なんだと思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、今まで問題なくても急に問題が発生するのです。世の中進んでくると色々な分野で技術革新が行われてきます。10年前には携帯電話は高値の花でしたが、今では携帯電話を持っていない人の方が少ないでしょう。これは技術革新で安価な携帯電話が売り出されるようになったからです。それと同じく実は食中毒菌の世界でも技術革新が起きています。以下の労働厚生省のHPを見てみましょう。(食中毒の発生件数)

http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/jokyo/nenji.html

これによると平成7年までは減少気味であった食中毒感染者が8年の堺市の集団給食による大規模な食中毒発生以来、増加現象に転じているのが分かります。発生件数をグラフにしているのが、

http://www1.odn.ne.jp/‾cak40870/poison.html

です。食中毒が増加している原因は、新型の食中毒菌の出現と、従来の食中毒菌のパワーアップです。例えば、食中毒とは食中毒菌に起因する物を言うのですが、最近はウイルス性の食中毒も仲間入りしました。従来は温度の低い冬の間、生牡蠣は安全な食べ物でしたが、最近は小型球形ウイルスに汚染された牡蠣による食中毒が増加しています。
日本人は魚が好きで、海水中に存在する腸炎ビブリオ菌により食中毒が多いことは知られています。そのため衛生責任者の講習会では魚の取り扱いに気を付けるように教えています。そのため腸炎ビブリオによる食中毒は平成4年には99件まで減少していたのですがそれ以後増加して、平成10年には839件となっています。その大きな原因は新型の腸炎ビブリオ菌によるものだと言われています。従来の腸炎ビブリオ菌は7度C以下で保管すれば菌が増えないと言われていましたが、新型菌は4度C以下に保管しないと菌が増殖するようになりました。つまり、昔の知識の7度Cで保管していると危険だと言うことです。

愛知県衛生研究所のHPでは4度C以下に保存するように述べています。

http://www.pref.aichi.jp/eisei/tudkbiseibutu.html

サルモネラ菌も同様で、従来、卵の外側だけが汚染されしり内部は大丈夫だと言われ、冷蔵庫で保存しないで生食していました。しかし、新型菌のサルモネラ・エンテリデュス菌は卵の中を汚染し、冷蔵保存をしないと食中毒菌が繁殖し加熱して食べないと危険と言われるようになり、常温保管でなく冷蔵保管の食品となりました。

食中毒菌の種類については社団法人食品衛生協会の以下のHPを参考にしてください。。

http://www.jfha.or.jp/saikin/index5.html

食中毒の発生が多い状況の中日本医師協会もHPで注意を呼びかけています。

http://www.med.or.jp/kansen/index.html

2)外食業界の現状
<1>スシ
回転寿司で急成長の**港は中央線沿線一号店の大盛況の元に,2号店を横浜に開き飛ぶ鳥を落とす勢いでした。ところが北海道のN物産の引き起こした大腸菌o157に汚染されたイクラを提供し、店舗から食中毒患者を出してしまいました。この事件で、急速なチェーン展開をもくろんでいた同店は大きな打撃を受け、驀進的な勢いはなくなってしまいました。

<2>ハンバーグ
2000年2月下旬に横浜のハンバーグレストランチェーンが腸管出血性大腸菌o-157による食中毒で5名が罹患、3店舗が営業停止処分となりました。30年経営している老舗優良企業がなぜ食中毒を出したのでしょうか。保健所や同社の発表によると米国から輸入した牛肉のハンバーグステーキパティが菌に汚染されていたとのことですが、それだけが原因ではないようです。
このハンバーグレストランでは拳骨ハンバーグと言って人間の拳骨大の大きな固まりの牛挽肉を、調理場のチャーブロイラー(炭焼きグリドル)で表面に焼き焦げをつけた状態で、熱々に加熱した鉄板に乗せ、客のテーブルに持ってきます。ウエイトレスは、熱々の皿の上の拳骨ハンバーグをナイフとフォークで真っ二つに切り分けます。肉の中は真っ赤な状態です。その肉の切れ目(赤身の方)を鉄板に向け、熱々の鉄板の余熱で焼き上げ、ハンバーグの肉は最後までピンク色が残っており、柔らかく美味しいので大人気を呼び大繁盛店となりました。しかし、肉がピンク色をしていると言うことは腸管出血性大腸菌o-157が死滅しない温度帯です。
従来の食中毒菌は多少食品に存在しても、ある一定量まで増加しなければ大丈夫でした。ところがこの腸管出血性大腸菌o-157は少量の菌であっても食中毒を引き起こし、死亡率が高かく、治療が大変難しいのです。そのため厚生省はこの菌を食中毒菌からより危険な指定伝染病に分類しましているのです。そのくらい危険な菌ですから、食材にほんの少しでも混入し、それをきちんと加熱処理しないと食中毒を引き起こすのです。つまり30年も事故がないと言って安心していると食中毒菌の新種に対抗できないのです。
さらに2001年9月のBSE事件で牛肉の消費量が落ち、BSE騒動で経営が行き詰まり、30店舗近いチェーン店を新進の企業に売却をせざるを得なくなりました。

<3>サイコロステーキ
ファミリーレストランチェーンでサイコロステーキによる腸管出血性大腸菌o-157による食中毒事故が2つの大手チェーンで発生しています。これはサイコロステーキを柔らかく食べるためにテンダライザーという針を肉に刺して筋を切る際に、菌が肉内部を汚染し、十分な殺菌温度に達しない状態で提供したための事故です。

日本医師会感染症危機管理対策室からの報告です。

http://www.med.or.jp/kansen/ag874.html

従来の加工方法を根本から見直さないといけなくなっていることがおわかりいただけるでしょう。

<4>アルバイトの目は厳しい
筆者は立教大学観光学部と女子栄養大学で非常勤講師として外食産業論を教えており、生徒には外食現場のレポートを提出させています。年間300通ほどのレポートになります。叉、インターネットのメーリングリストで色々な意見を交わしていますが、その中で一番驚くのは、衛生管理を無視した飲食店が多いと言うことです。

<実例その1>

調理長に衛生管理のことを少し話題にすると、「そんなことみんな全然やってないよ。友人の店なんか、夜、仕込みしてたら30センチほどもあるねずみが目の前を猛スピードで走ったりよくあることだ」と平気でそのようなことを言います。
手洗いの設備はなく、適当に空いているシンクで、市販のハンドソープで洗い、タオルは1枚ハンガーにかけているものでみんなが拭く。アルコールは買い置きがあるもののスプレーに入っていないので使えない。調理場用の靴ははいているが、一旦更衣室でその靴にはきかえたら、どこにいくにしてもはきかえない。もちろんトイレもその靴でいく。
オムライスのソース味見は、指を突っ込んで口に入れる。ポテトサラダの味見もボールに入ったポテトサラダを直接指でつまみ食べる。この飲食店はランチのみの営業なのですが、昨日魚やさんで焼いてもらったさばの塩焼きを朝受け取りにいき、8:30に入店するが、その塩焼きは厨房の調理台の隅っこにラップがかけられた状態でランチまで放置。
その後、ランチの皿に直接手でつかんでのせられ、お客に出される。私は夕方4:00にはあがるのでその後の最終の片付けは経験していないが、水拭きだけのようなことを言っていた。「殺菌する」ということが全く見受けられないのです。」

<実例その2>

あるハンバーガーチェーンである時大騒ぎになりました。フライヤーの油にゴキブリが落ちて唐揚げになってしまったのです。それを見ていた店長はあわてず騒がず、ゴキブリを拾い上げ「油は高温だから大丈夫だよ」と言って調理を継続したのです。その話は学校中で有名になったのは言うまでもありません。

<実例その3>

あるドーナツチェーンでは調理後、床に落ちたドーナツを客に見えないからと言ってそのまま出していたそうです。アルバイト1人だけが知っているからと思ったのでしょう。でも、そのアルバイトは10人にそのエピソードを話し、あっという間に数千人の人に口コミで尾鰭がついて広がるのです。

<実例その4>

また居酒屋の例ですが食器を洗う際に強力な洗剤を使用しているのにすすぎが雑だし、果物の皮は洗わず、落としてスプーンも平気で客に出したりすると言っていました。

3)衛生的な良いお店の例
衛生的なお店で売り上げが上がる例をご紹介しましょう。

<ケーススタディ その1ニューヨークのダニエル>

ニューヨークに1,2位を争うダニエルというフレンチのトップレストランがあります。夕食時を楽しんで、美味しかったので、オーナーシェフのダニエルに会えないかと頼んだら、客席に来て料理の説明をしてくれました。余り親切だったので、ついでに厨房を今見せてくれないかと頼んでみました。ちょうどピーク時であり、断られるのは承知で頼んでみたのでした。ところがダニエルは躊躇せず、「どうぞ」と言って厨房に案内してくれました。夕食時のピーク時にも関わらず、驚いたことに厨房はぴかぴか、床にゴミ一つ落ちていませんでした。従業員も真っ白なユニフォームに身を包み、突然の乱入者の我々をにこやかに迎え入れてくれました。その後、新店舗に移動ダニエルさんを再度訪問し、叉厨房見学を要望しましたが、何時でもどうぞと案内してくれました。その素晴らしい厨房は厨房専門誌のカラーグラビアを飾ったのは言うまでもありませんでした。
米国も日本と同じく衛生に対する消費者の目は厳しくて、高級店であっても消費者がキッチンを見たいと言ったら断らず積極的に見学をさせるというのがトレンドのようです。何時キッチンを見に来るかわからないと言う緊張感が帰って素晴らしい料理を維持する秘訣のようですね。また、訴訟社会の米国では政府や地方自治体も消費者保護に真剣です。日本と同じく保健所はレストランの新規開店に当たっては衛生設備をチェックし、開店後も年に数回は無予告で訪問し衛生状態をチェックします。保健所の衛生チェックが悪いことを指摘していたのに、食中毒を引き起こした場合に、その衛生チェックの内容を消費者に告知していないと米国では保健所が食中毒の被害者に訴訟を起こされる場合があります。そのために、ニューヨークし保健所はホームページで、全てのレストランの衛生状態を実名入りで報告しています。その指摘の内容は、従業員がトイレに入った後手を洗わないで調理をした、ゴキブリ、ネズミが厨房にいる、出所の明確でない食材料を使っている、等大変具体的です。米国ではレストランガイドブックとして有名なzagatがありますが、このニューヨークの保健所の検索ページはzagatと同じくらい有名な検索ページとなっています。

http://www.nyclink.org/html/doh/html/rii/index.html

<ケーススタディ その2 日本一のニューヨークグリル>

日本でも衛生的なお店が大人気です。もう6年ほど経つのですが、新宿のパークハイアットホテル最上階のレストラン・ニューヨークグリルは今でも予約待ちの大繁盛店の一つです。ホテルの最上階のお店を訪問し、受付を済ませ、客席に案内する際にまず、厨房を見せます。ガラスで囲まれた大型厨房と夜景の見える窓の間の通路を通し、調理をしている光景を客に全て見せるのです。厨房の真ん中には真っ赤に燃えたローティサリーオーブンが鳥の丸焼きを焼いており、隣の煉瓦の釜では赤々と燃えた火でピザやパンを焼いています。その臨場感あふれた厨房を観て客席に着く頃にはお腹がぺこぺこになるという仕掛けです。そして好きな人は厨房の端のカウンターに座って調理を観ながら食べることもできるのです。厨房が丸見えですから、天井から床、ユニフォームもぴかぴかになっているのは言うまでもありません。ごまかしようがないわけです。
この臨場感あふれた店造りのせいか、いまだに東京で最も予約の難しい人気レストランの地位を占めていますし、あのアメリカのzagat紙の評価でもトップ評価を続けてもらっています。

4)ではどうやって食中毒を防ぐのでしょうか。
これからは

つけない、増やさない、殺す + 温度、時間、等の具体的な数値管理

経験と勘の世界からより科学的な管理をしなくては行けないのです。そのためには衛生管理を具体的に見直す必要があります。これからそのポイントを見ていきましょう。

(1)現状を認識する
衛生的なお店にするためには見た目に綺麗だけでなく、食中毒菌などの危険な菌に食材や、テーブル、まな板、包丁、調理機器などが汚染されていないかチェックすることが望ましいのです。最近では店舗で簡単に衛生状態をチェックできる機器や資材が販売されていますし、外部の専門家に年に何回か依頼して衛生状態のチェックをしてみましょう。事故を起こす前の健康診断が必要なのです。

(2)つけない
食中毒菌を食品に付ける大きな役割を果たすのは、そこで働く従業員です。それを防ぐには、手を洗浄殺菌して菌を他に付けないと言うことが大事なのです。

<1>手洗いがつけない基本です
<手洗い>

先ず手に着いた汚れや菌を落とし、次に殺菌剤で手を殺菌します。手洗い洗剤や殺菌剤は、手に優しい効果的な洗剤を使いましょう。

<手拭き>

厨房であれば使い捨てのペーパータオルを使用し、客席やトイレでは温風乾燥機を使用しましょう。

<手洗いの頻度>

一回だけしか洗わないのでは効果がありません。30分に一回の手洗いは必要です。また、トイレに行った後、汚れた物にさわった後、肩より上に手を挙げたら必ず手を洗うようにします。

<衛生手袋>

サラダや刺身など火を通さない食品は使い捨ての衛生手袋を使用しましょう。

<手の身だしなみ>

指輪や、時計をして調理をしてはいけません。あた、手荒れをしないように,洗い場ではゴム手袋を使用し、水仕事の後は手荒れ止めのクリームを塗る等のケアーをしましょう。

<ネズミ、ゴキブリの駆除>

人間の次に危険なのがネズミやゴキブリです。筆者がある居酒屋チェーンに、お昼頃訪問してぞっとしたことがあります。昨夜から解凍するためにテーブルの上に置いてあった肉の塊がネズミにかじられその周辺にはネズミの糞が散らかっていたのです。そんな状態で食中毒を起こさなかったのは幸運としか言いようがありませんでした。ネズミやゴキブリの駆除には機械や薬剤を使用しますが、彼らは賢いし、薬剤に慣れてしまいます。専門の業者に定期的に駆除を依頼するのが一番安全でしょう。

<2>食品の交差汚染を防ぐ
サラダなどの野菜、生ジュース、生水、鮨ねたなどは火を通すことがないので、細菌汚染があると食中毒を起こしやすいのです。交差汚染を防ぐには食材ごとに手,包丁,まな板,調理機器を洗浄殺菌してそれぞれの食材に固有の菌が他の食材に移らないようにしなくてはいけません。包丁など錆びると汚れや最近がたまりやすくなるので、洗浄、殺菌のあと錆を防ぐようにしなくてはいけません。

<3>信頼のおける仕入先
仕入れをする際には値段だけで決定するのではなく、衛生管理がしっかりしていることを確認し、配送業者の食品の取り扱いまで丁寧な業者を選びましょう。

<4>受け取りの確認と正しい保管
品物の破損や損傷のチェックだけでなく、冷凍品はマイナス18ー22度C,冷蔵はプラス1ー5度Cと言う温度で搬入されていなくては行けません。

(3)増やさない。
細菌が繁殖する温度は5度Cから60度Cの間です。この温度帯に食品を4時間以上おかないと言うのが原則です。

<1>冷蔵庫冷凍庫の温度管理をしっかり行う。
冷蔵庫の温度は1-5度C、冷凍庫はマイナス18度Cーマイナス22度Cの温度帯です。
温度計はついているでしょうか?温度計は正しく作動しますか?

<2>庫内に余裕があり冷気が循環するか
保管中の食品の中心温度が冷凍や冷蔵の温度帯になっていなければ細菌の繁殖を防ぐことはできません。冷風が循環して食品を冷却するように、庫内スペースの50%くらいの余裕を持って食材を保管するようにしましょう。

<3>冷蔵冷凍庫の環境と手入れ
冷蔵庫は風通しが良く、室温が高過ぎない場所に設置し無ければなりません。コンデンサーに油分やごみが詰まると、風通しが悪くなり冷却能力が落ちます。フィルターがついている場合は定期的にフィルターを清掃するか、コンデンサーを直接洗浄して汚れを落とします。冷風を発生するエバポレーターに霜が付着し、氷のようになると熱の伝達が不充分になり、冷風の風量も減り、冷却能力が落ちてきます。霜取りを定期的に行いましょう。

<4>保温管理
調理後の保温は60度C以上で2時間までが安全な保温時間です。中途半端な温度で保管しないで60度C以上か、冷却して5度C以下で保管するようにしましょう。

<5>調理後冷却してから冷蔵保管
カレーやシチュウなどは75度Cまで十分に加熱し、味がしみこんだ状態から、シンクなどに冷水を張り,その中に寸胴をつけ攪拌しながら急速に温度を10度C以下まで冷却し、それから冷蔵庫に入れます。夏場などはアラ熱をとった寸胴をさらに氷を入れたシンクで十分冷却をします。
翌日再加熱をして提供する場合には寸胴を攪拌しながら全体の温度が75度Cになるまできちんと再加熱をしましょう。冷蔵庫の中で繁殖した菌も再加熱をきちんとすることにより死滅し安全に食べることができます。

(4)殺す
<1>加熱調理
加熱調理は、食材の中心部が75度Cで1分間以上又はこれと同等以上まで加熱しましょう。

http://www.mhlw.go.jp/search/mhlwj/mhw/houdou/0903/h0317-3.html

<2>調理機器を過信するな
(a)温度を一定に保つサーモスタット付きの調理機器

サーモスタットの温度計の設定が正しいと言って安心してはいけません。正確なデジタル温度計を購入し、毎日、サーモスタットの設定温度と実際の温度が合っているか確認する作業をしましょう。

(b)温度の安定性

サーモスタットが付いている調理機器でも、使い方により問題が出ます。各調理機器の特性を理解しましょう。

(c)調理機器能力と食材量のバランス

いくら性能の良い調理機器を購入しても、調理能力以上の食材を投入したら温度が下がりすぎて、一定の時間内に規定の温度まで上がりません。

(d)温度の回復力

売り上げや食材に適した調理機器を使いましょう。調理機器は電気でもガスでも長く使っていくうちに熱交換機にカーボンが付着し、熱を伝達しなくなります。定期的にそのカーボンを洗い落とす等の手入れが必要です。

<3>水質の安全性
安全なはずの水道水でも、屋上の高架水槽や受水槽に水を貯めてから配水する場合は、そのタンク内で汚染が進む可能性があります。年に1回の水質検査が必要です。

<4>殺菌剤
包丁、まな板、調理機器、テーブル、などの機器類の殺菌は次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用します。市販されている次亜塩素酸ナトリウム溶液は濃度が5~6%のものが多いようです。使用する際にはそれを水で希釈し、塩素濃度が100-200PPMになるようにして使用します。次亜塩素酸ナトリウム溶液はメーカーによりその効果の持続時間や安定性が異なります。実績のある信頼のおけるメーカーから購入しましょう。信頼のおけるメーカーは洗剤や殺菌剤の使用方法をわかりやすく指導したり、マニュアルを備えている事で見分けられます。

(5)お客様の目にきれいか、
きれいで、衛生的と言うのは厨房や客席だけではありません。店舗の外部などにある、グリーストラップやダクトの汚れや、悪臭は、お客様が店舗を利用しなくなる大きな原因となります。定期的な清掃とメインテナンスを専門の業者に依頼して何時もきれいなお店に見えるようにしましょう。

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