水道代の節約(日経BP社 日経レストラン1997年9月16日号)

水道代の節約
古くから飲食店を経営されている方は安全と水は無料だったと、古い時代を懐かしがっているようですが、時代は変わりました。今では、水は無料ではなく、飲料水にいたってはビン入りの水を買って飲む時代になりました。以前のように売上が右上がりの時代は終わり、経費管理をしっかりしないと利益の確保ができなくなっています。たかが水ですがきめ細かく管理をする必要があるようです。

水道栓のパッキンが摩耗して1秒間に1滴のしずくがしたたると1月で約1トンの量になります。東京都の上下水道料金は1トン750円ですから、1年間で9000円の浪費になるわけです。これは細かい例ですが、これから水の具体的な節約の手法を見てみましょう。

現状を把握する
使用量
水の節約にはまず水をどの位使用しているかを把握することから始めます。水の使用量は請求書のベースではなく自分で水道メーターを読んで計算します。その頻度は最低週に1回、できたら毎日計算し、売上と水の使用量が比例しているか、昨年と比較して多くないかを見ます。

水漏れのチェック
次に店舗を運営していないときに全ての水栓を閉じた状態で、下水口に水が流れ出ているか、水道メーターが回転するかをチェックして水漏れを確認します。

部門別の水使用量の把握
現状を把握したら、何時、どんなところで水を使用しているかを分析します。そのためには閉店後帰る前、翌朝一番、開店時間、昼の繁忙時間後、夜の繁忙時間後、営業終了後、と細かく水道メーターを読みどの時間帯で最も水を使用しているかを見ていきます。そして、最も水の使用量の多い時間帯の作業を見て、どうやって水を節約できるか考えます。

水の使用量の多い部門とその対策
では水の使用量の多い部門別にその原因と対策を見てみましょう。この使用量は皆さんの営業形態によって変わります。

洗い場
一番多いのは食器や、調理機器の洗浄作業です。ここで注目するのは水やお湯を出しっぱなしで洗浄していないかという事です。

<対策>

湯をためて洗剤を規定量の希釈で洗浄するようにします。水を流しっぱなしにするのは水道の蛇口の開閉がやりにくかったり、湯温の調整が面倒くさいからです。そのためには混合栓を使用し、レバー一本で開閉が簡単にできるようにします。

次に蛇口からでる水量を調整します。これは洗浄用のシンクだけでなく、手洗いシンク、解凍シンクにもいえることですが、必要な量になるように水の勢いを調整します。これだけでかなりの水の節約になります。 食器洗浄機を使用していない場合はなるべく導入しましょう。食器洗浄機は洗浄水を循環して使用するため、手洗いに比べて30%以上も水の節約が可能です。洗浄温度を高くできるために衛生的で、作業が簡単なので従業員の定着性が高まります。

ドライキッチン
厨房は営業中には水を撒かないようにしましょう。営業中に水を厨房の床に流しっぱなしでいるのは水の浪費だけでなく、湿気が高くなり空調が効かない大きな原因です。

<対策>

厨房の床は水をこぼさないのだという考え方で対処しましょう。最近では中華や和食、蕎麦などでもドライキッチンを実現しています。下拵えをしっかりしてピーク時に混乱をしないようにすることが基本です。

トイレ
案外水を使用しているのが客用のトイレです。特に女性用のトイレの場合、使用前、中、後と大量に水を浪費する傾向があります。

<対策>

シスタンク方式(家庭のように水を一回ためて流す方式)の場合にはタンク内のレバーを曲げたり、煉瓦などを入れて水量を少なく調整します。シスタンクでない場合には水の勢いを調整します。勿論あまり水を節約すると詰まりますから状況をしっかり把握しながら水量を調整します。

水冷機器
案外水を使っているのが、製氷器、空調、冷蔵冷凍庫、アイスクリームマシンなどの水冷の機器です。新品の時には正しく調整されているのですが、老朽化が進むにつれて、節水弁という水の節約する部品の調整機能が効かなくなり水の垂れ流しがおきます。売上に関係なく24時間垂れ流しになるので微量の水でも大きな使用量になります。

<対策>

まずどの機械が水冷なのかを知らなくてはいけません。そして、各水冷機器を閉店後全て止めて、水が排水溝に流れ出てこないかチェックします。もし水が流れてくるようでしたら、そのメーカーに連絡するか、自分で節水弁を調整します。節水弁を自分で調整するのは余り進められませんが、節水弁を開閉することで直ることがあるので、メーカーのサービスマンが修理する際にその方法を教わると良いでしょう。

製氷器の季節調節
製氷器は製氷に水を大量に使用します。夏は大量の氷が必要ですが、冬にはそんなに使用しませんから製氷量を調整します。

<対策>

製氷器は貯氷槽に氷がいっぱい溜まると自動的に製氷機能を停止するので年中同じ貯氷量の場合が多いようですが、氷がいっぱい溜まった状態で使用しないと段々解けて水となり流出します。貯氷量を調整できる機種の場合には一日に必要な量だけ製氷するように調整します。場合によってはタイマーなどを取り付けて調整することもできます。

水冷機器の調節
アイスクリームマシンなどは水冷の場合が多いのですが、アイスクリームを製造中には水を流しっぱなしです。(クーリングタワーで循環式の場合は別です)

<対策>

ステンレス製のチャンバー内部のアイスクリームを攪拌するスクレーパーブレードの幅が規定以上ないと製造時間が長くなりそれだけ水を無駄に流すので、普段から部品の状態をチェックしましょう。

冷凍食品の解凍
冷凍食品を流水で解凍するのは水の無駄です。

<対策>

冷凍食品を使用する24―36時間前から冷蔵庫で解凍します。もし十分に解凍していない場合だけ流水で解凍すれば良いでしょう。

植木の水やり
駐車場や庭の植木に無駄な水を撒いていないでしょうか。

<対策>

日中の暑いさなかに水を撒くとすぐに蒸発するので非効率的です。夜間か、早朝の涼しいときに水やりをしましょう。タイマー制御のスプリンクラーを使用している場合には、散布時間と量が正しいか時々チェックしましょう。

受水槽や配管の水漏れ
店内の水の使い方に問題がないのに水の使用量が異常に多い場合には受水槽や配管の水漏れが原因の場合があります。

<対策>

店内の全ての機器と蛇口を止めても水道メーターが回っている場合にチェックします。受水槽はボールタップなどで一定の水量になると停まるようになっていますが、ゴミが溜まったり老朽化が進むと停まらなくなります。年に1回の清掃の際に正しく動くか点検し必要なら部品を交換します。

配管の破損については交換が必要になります。放置すると水の使用量が高いだけでなく、駐車場などの土が流出し大きな穴があくなど修理代が高価になりますので早めに修理しましょう。

効果
業種業態売り上げにより効果は異なりますが、筆者の経験ではこの手法で最低10%、場合によっては50%も水道使用量を削減したことがあります。皆さんも是非一度水の使用量の現状調査からやってみてください。思いがけないところで水を無駄にしていることが発見できるでしょう。

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