新しい衛生管理HACCP 第7回「つけない その5 受け取り時の検品と保管」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年7月5日)

さて、先回は良い食材を作る業者や問屋の選定の方法を説明しました。でも安心してはいけません、どんなに良い食材であっても貴方の店が受け取る際にチェックを怠ると、ひょっとして品質が低下しているかもしれません。信用するしないはともかく、搬入される食材は注文した品質や量などの基準を満たしているか確認する必要があるわけです。

HACCPというのは基本的に原材料の段階から、加工、保管、調理の全ての工程で、危険温度帯、5℃ー60℃以上に4時間以上放置しないと言う原則です。幾ら正しく加工した食材でもそんな危険な温度帯に放置されては、食中毒を起こすに十分な量の食中毒菌を育成してしまうわけです。

どんなに良い食材メーカーや問屋であっても資材を受け取る際には正しいチェックが必要となります。普通は口約束なのですが、受け入れ状態をきちんと文書で交わすことが必要でしょう。搬入時間、荷姿と状態、温度、検品、保管方法、等をきちんと決めておくことが肝心です。普通何時に搬入するか分からないことが多いのですが、昼時や仕込みの忙しい時間に搬入されると検品を正しくできなくなりますから、搬入時間は前もって決めておきます。荷姿と状態は、段ボールが汚れていないか、破損はないか、虫等がいないか、異臭がしないか、解凍していないか等の受け入れ可能な状態を決めておきます。当然、製造月日が外に記入してあるのが条件です。

次に温度ですが、冷凍品、冷蔵品の温度帯で搬入されなくてはいけません。普通、冷凍品はマイナス18ー22℃、冷蔵はプラス1ー5℃と言うのが温度です。温度というのはその温度帯で保管されていたというのではなく、食品の温度そのものを言います。倉庫からトラックに積み込んだ際にはマイナスの18℃以下であっても、貴方の店舗へ配送の途中に他のお店に何回も配送をするために扉を開けておくと、幾ら冷凍車であっても、庫内の温度が上昇し、マイナス18℃以上に温度が上がり、食品の温度もそれに伴い上昇します。冷凍品の場合、マイナスの18℃以下でなくても細菌は増殖をしませんが、あまり温度が上がると食肉などは細胞膜が破損され、肉汁(ドリップ)が多くでて、商品の品質が低下します。そのため、冷凍温度以外に受け入れ可能温度と言う温度を設定し、それ以上の温度であれば受け入れないと言う取り決めをしなくてはいけないのです。

これらの検品を長いつき合いのある業者にやるのはなんか水くさいと思われるかもしれませんが、大事なお客様のことを考えれば止むを得ないでしょう。よく話し合い、きちんと検品をする習慣を付けましょう。検品は衛生の観点から重要なだけでなく、食材コストと品質上からも重要な仕事です。筆者の経験でも検品を怠ると食材の重量が少なくなったり、品質の低下を来したことがあります。業者との良い関係を築くのと検品とは表裏一体にありますから、良い人間関係を築くためにもキッチリとしたつき合いをするように心がけましょう。業者からの仕入れだけでなく、自社のセントラルキッチンからの仕入れでも、検品というのは必要不可欠です。身内だから大丈夫だろうと言うのは甘い考えです。身内ほど慣れからいい加減な仕事になり勝ちですから、妥協を許さない姿勢で検品をきちんと行いましょう。

さて、検品をきちんとやった後は貴方の責任です。冷凍品、冷蔵品、常温品の順番に搬入をして、きちんと保管しましょう。冷凍品の場合でも段ボール箱や、外包みに搬入月日を記入し、ローテーションをきちんと行いましょう。冷凍品は腐らないからローテーションは不要だと思うのは間違いです。油脂を含んだ食品は油脂の酸化で味が低下しますので、冷凍品であってもなるべく早く使い切るのが美味しさのポイントです。賞味期限の記入がない場合には食材メーカーに問い合わせ、賞味期間を聞き、それを外箱に記入するなどの工夫が必要です。

冷蔵品を段ボールのまま冷蔵庫に保管するとスペースを消耗するし、中の食材が良く冷却できません。段ボールから空け冷却の良い状態にして保管することも心がけましょう。なお、冷凍庫、冷蔵庫に保管する場合でも、野菜、肉、魚、乳製品はなるべく分けて、相互汚染がないように心がけましょう。野菜など加熱しないで食べる物の場合には特に注意して取り扱いましょう。 冷蔵保管の商品は時々変わってきます。従来は生卵などは常温保管でした。鶏卵はサルモネラに汚染されていますが、従来は卵の外側にサルモネラ菌が付着しても、外側を洗浄殺菌すれば大丈夫だから、常温保管で大丈夫だと言われてきました。しかし、最近はサルモネラ菌が卵内部を汚染している場合があり、卵といえども冷蔵保管が必要になってきました。時々基準の見直しをしましょう。

さて、常温保管の穀物や缶詰であるからと言って、炎天下のプレハブ倉庫の30℃以上もあるような場所においては、味が劣化したり、場合によっては腐敗する場合がないとも限りません。常温というのは少なくても20℃前後であると思ってください。なお、倉庫内の場合、ネズミやゴキブリが進入しやすい場合があるので、定期的な殺虫殺鼠を心がけてください。

以上

著書 経営参考図書 一覧
TOP