業種・業態別動向 「1999年度外食業界展望」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年1月4日)

キーワードは
低価格:
グレードアップ:
サービス:
立地戦略:
広告宣伝:
再投資計画:
1)低価格
500円の価格帯の和洋ファーストフードは低価格戦略をさけて通れない。いや当店は既に低価格で価格据置だといっていてはだめだ。このデフレ経済で物価は下がっているから、値段が昨年と同じであれば値上げと同じだ。物価スライドで値段を低くしないと客の価値観が低下する。
この経済の低迷は数年は続くことが予測され、低価格を仕組みとして実現できない飲食業は存続できなくなるだろう。人件費、材料費、水道光熱費、修繕費、消耗品費、の見直しをはかりより低価格を実現できるようにしなくてはならない。

2)グレードアップ
和洋のファーストフードやファミリーレストランは大手チェーンの価格競争力が強く生業店は押されがちだ。しかし、地方独特の食習慣や嗜好を理解した郊外型の回転寿司、居酒屋、中華料理店には大手チェーンでもかなわない。
この業態は、規模の大きさと地元を対象とした独特の料理を持っていることが条件だ。大家族で行く場合が多く子供もいるので、待つことをいやがる。家族や親族、友人の集まりだから、大きな宴会席を用意し、高い客単価を実現しなくてはならない。店舗やメニュー、値段、を標準化し、各地区のニーズに的確に対応することが出来ないチェーンの弱点を突かなくてはいけない。

このジャンルは昨年と同じ事をやっていては生き残ることが出来ない。超繁盛の寿司屋でも、すぐ隣りにより大型で、新鮮なネタを提供する店ができると、昨日までの超繁昌店に閑古鳥が鳴くようになる。

常に材料や店舗規模のグレードアップを怠らないことが必要だ。これは地方だけでなく、都会の生業店にも言えることだ。低価格を実現できなければ、より高い価値観を実現しなくてはいけないわけだ。

また、品質以上に大事なのは安全だ。東京の住宅街で大繁盛の**港と言う回転寿司がありあっと言う間に2店舗も開店して飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、北海道のイクラによる病原性大腸菌o-157による食中毒を出し、大打撃を受けてしまった。生ものを出す業態は食中毒に対する細心の注意を払う必要がある。

3)サービスの重要性
今一番元気なのは新進気鋭の中小のチェーンの勢いだ。ケンズダイニングバーや熱熱食堂/橙家を展開するちゃんとフーズ、ロイズやNOBUを抱える月川企業、ZESTなどの都会的な店舗のグローバルダイニング、オバカナールなどの個性的な店を抱えるオライアン、などが続いている。これらの個性的な企業は、店舗のイメージ、サービス、バリューというバランスを武器に昔のFRで感じた「外食のときめき」を再現している。特筆するのが従業員のサービスマインドだ。従来の飲食店のように笑顔のない、マニュアル化した紋切り型のサービストークではなく、個々人の気持ちを込めたサービスで大盛況だ。
米国で急成長中のアウトバックステーキハウスが日本に進出をするべく準備中だ。この不況の日本に進出をする最大の理由は、高いサービスレベルのアウトバックが勝つチャンスがあるという理由だからだ。アウトバックステーキハウスの社是は「ノー・ルール。ジャスト・ライト」だ。お客に色々な注文を受けても、それは出来ませんと言うのではなく、実現するように最大限の努力をはかり、客を喜ばせるのが会社の唯一のポリシーだという。

4)立地戦略:郊外型、郊外型の競争
この不況から脱出するべく政府が進めているのが規制緩和だ。その影響が強くてでいるのが大規模小売店舗法の規制緩和で、郊外型のショッピングセンターの急増だ。地方の駐車場を持たない駅前商店街はそのあおりを受けて急速に力を失っている。
郊外型のショッピングセンター内に店舗を移転しても安全ではない。郊外型のショッピングセンター同士の競合も激化しており、大手チェーンといえども、近隣のより便利な場所に大型の駐車場を備え、複数の魅力ある大型店舗を備えたショッピングセンターには対抗できない。郊外型に出店する場合にも慎重な選定が必要だ。

5)広告宣伝の変化:価格志向が浸透し、値段を訴求したチラシの効果がでてきている。
この不況の中価格志向が浸透している。暮れに行った大型店の消費税分の割引セールは大きな効果を納めている。従来は飲食店の折り込みチラシなど見向きもしなかった消費者は、新聞折り込みのチラシを慎重に検討し、より価値のある店舗に行くようになっている。昔行ったチラシの効果がなかったと言ってあきらめないで再挑戦しよう。勿論、単なる宣伝ではなく、割引券をつける、無料券をつけるなどの工夫が必要だ。そして、呼び寄せた新客をポイントカードなどを使って固定客にしなくてはいけない。ポイントカードも中小の店で使えるような仕組みの物が出始めている。
6)再投資計画:守りの姿勢では生き抜けない。人材教育も再投資だ。
既存店舗の売り上げがじり貧になってからでは遅い、体力がある内に衰退する商店街から移転する、失った客を取り戻すために店内の改装をする、販売促進をする、などの積極的な対応をしないと生き残れないだろう。従来と同じペースで仕事をしていると生き残れない厳しい時代が来ているようだ。
グローバルダイニングなどの店舗群が急成長しているのは偶然ではない。時間があれば従業員に教育を、良い仕事をすれば評価を、出来が悪ければ降格もする、という厳しさも持ち合わせているからだ。設備投資も重要だが先ず人材の育成がこれからの一番有効な対策だろう。

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