飲食業界の動き(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1997年1月6日)

今後はよりきめ細かな価格戦略が必要
円安の傾向の定着により、輸入食材を利用した単純な低価格戦略は一息つくだろう。しかしながら価格が上がるのではなく、原材料以外の手法による安定した低価格提供が課題になる。建物、設備の標準化や仕様の見直し、店舗組織の見直しによる人件費の削減など基本的な組立の見直しがより広く行われるようになる。従来の低価格はファーストフードやファミリーレストランという底辺の分野であったが、今後それぞれの分野に応じた低価格が実現する。

今後はよりきめ細かな顧客戦略が必要
従来の安易な低価格の悪い影響でサービスが低下し顧客の離反を招いた反省から、従業員の教育が大きなテーマになる。また、単なる低価格でなく、その価格帯でのバリューの訴求というものが大きなテーマになり、QSC、商品、マーケティング戦略の見直しが行われるだろう。

例えば、すかいらーくグループが低価格レストランのガストをロケーションなどの違いを無視して展開し失敗した店舗を、ガーデンズやグリルに転換して売上を伸ばしている。ある好立地の実験店舗で、すかいらーくからガストに変わり当初はよかったが、顧客層が悪化してかえって売上が低迷した。その店舗をグリルに変えたところ、客層ががらりと変わり、昼時などきちんとした服装のビジネスマンが接待の食事をとるまでになった。

それらの転換後の成功例を見てみると、顧客は単なる低価格よりも立地別のリーズナブルなレストランを求めており、今後はよりきめの細かな顧客戦略が利益率からも必要になってくると思われる。

それぞれの分野に応じた低価格の実現
老齢化社会を迎え、なじみのある料理、おふくろの味、食べやすい味が求められるようになる。煮物などの野菜料理の和食と、少人数でも食べやすい小皿の中華料理が人気を呼んでくるだろう。

外食一般
96年は、オープンキッチンのイタリアンレストランが大流行だった。しかしながら本格的なイタリア料理や、脂っこい料理にはお客はついていけないのが現状で、97年はイタリア料理は選別されだし、食べやすい中華料理と和食にフォーカスが当たるだろう。従来の和食や中華とは異なり、一人二人の個人客でも気楽に食べられる2000円から5000円のゾーンの価格で気楽なものが望まれる。
昨年の暮れにはフグ料理コースを5000円以下で出す店が開店し大繁盛している。価格破壊といっても和食の分野はまだほとんど手づかずであり、今後新しいチェーンや業態が発生するだろう。

中華ではバーミヤンと高級な中華の間の分野が真空であり、今後いろいろな新業態が発生するだろう。

洋食の分野では環太平洋料理だ。カリフォルニア・イタリアンがハワイにわたり、東南アジア料理の影響を受けたものだ。醤油ベースの魚介類を多用し、脂っこくなく食べやすい味である。もちろんオープンキッチンでカジュアルな雰囲気だ。味が日本人になじみやすいだろう。もちろん値段は5000円以内が決め手だ。

ファミリーレストランの世界は、ステーキやローストビーフなど本格的な料理を3000円以内の値段で出し、ビジネス接待にも使える分野が都心などに誕生するだろう。高級レストランでの接待に取って代わるような価値のあるレストランを目指すのではないだろうか。

居酒屋は競争激化により原価の高い魚を使わないで和食をどう取り組むかの調理開発とトレーニングが重要になる。昨年の吉野家のように、他業界からの一層の新規参入があるだろう。また、店舗数の増加に伴い好立地の多面化という意味で郊外型の進出が求められているが、現実のところ利益を出す体質になっていない。郊外型でどうやって利益を出すかが大きな課題になってくる。

ファーストフードは円安の傾向から低価格戦争に一息ついて価格以外の訴求が大きな課題になる。マクドナルドに対しQSC、商品やオペレーション、広告宣伝戦略でどう対応していくかが勝負の分かれ道だろう。

中食
96年はオリジン弁当などの中食が注目を浴びた年であるが、97年はその展開が本格的に行われるだろう。昨年から、業界以外からの新規参入が目につくようになり、食品スーパーも本格的な取り組みを開始している。従来は作業所と呼んでいたが本格的に外食以上の設備を持った厨房の採用に取り組み始めている。特に惣菜は和食の煮物をどう調理するかのシステム開発をしたものが勝者になるわけで、熾烈な商品開発が行われるだろう。価格という商品力では外食はかなわないので、彼らの持っていないサービス、雰囲気という付加価値の確立に真剣に取り組む必要がある。

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