明暗を分けるポイントと有望コンセプト(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1998年1月5日)

固定客の確保
官官接待の自粛、銀行、証券会社の破綻などにより高級店の接待需要が激減している。
今後高級であっても客単価1万円を超える店舗はよほど特徴がないと成り立たなくなっていくだろう。そのためにも個人客をしっかり把握する努力が必要になる。個人客を確保するにはわざわざ飲食店に食べに来る明確な動機が必要だ。

すし、そば、中華、和食などは生業店が多いが、これからかなり厳しい状況になる。生業店は比較的地域の住民と密接な関係を保ってきたが、商店街の衰退と郊外のショッピングセンターの開店により顧客総数が少なくなってくる。

今後は同じ場所にしがみつくのではなく、環境に合わせて移転も検討する時期に来ているようだ。また、顧客もバブルの時代にずいぶんお金を使ったり、テレビ番組の料理の鉄人などの影響で勉強をしている。顧客のニーズに合わせてメニュー開発をしたり、店舗のイメージを変えるなどの投資を行う必要がある。何十年も同じ業態では続かない競争の時代が来ているようだ。

従業員教育の見直し
低価格戦争のあおりで業種の多角化をしたチェーンが不振を極めている。業種の多角化のためには従業員の教育の充実が欠かせないのに、リストラという錦の御旗のもと教育システムやマニュアルの改善を図っていないからだ。バブルがはじけた今、従業員は同じ会社で一生過ごそうとは期待していない。そのため、今までのような従業員の資質に依存したサービスを期待することは無理な状態だ。
また、従業員を上下関係だけで命令し、こき使うという前近代的な師弟制も成り立たなくなっている。今後は新教育制度、上下関係をもう一度確立し近代的な人の使い方ができるチェーンだけが生き残るだろう。直営一本槍の展開は投資効率から難しくなり、フランチャイズの本格的な採用が必要になる。フランチャイズシステムの展開で必要なのは、ロイヤルティーを取れるだけの利益が出せるという収益性の向上が必要になる。

バブルがはじけてからチェーン企業は経費削減ということで、広告宣伝費、特にTVCMを削減し、その結果チェーン企業イメージが低下、売り上げ不振を招いているという現象がある。

マーケティングは科学であり、少なくとも上場しているチェーン企業はもう一度マーケティングに真剣に取り組み、チェーンイメージを向上させる必要がある。

中華・韓国料理
従来はイタリアンが全盛だったが、ピザとスパゲティ以外は案外脂っこく悲鳴を上げている顧客が増加しているようだ。新規の商業施設など半分以上がイタリアンだったりして、顧客離れが始まっている。
接待需要が減り、個人客中心で食べやすい食事というと和食、中華、韓国料理が脚光を浴び出すだろう。その他の東南アジア料理も人気が出てくるようだ。

ポイントは一時のエスニックのように若者や珍しいものに飛びつく層ではなく、一般的な顧客に受けるような食べやすい味でなくてはいけないということだ。

東南アジア料理も一時は法外な値段を取っていたようだが、今後は町の中華料理と同じように、毎日食べにいけるような気楽な値段となじみやすい雰囲気が必要になるだろう

和食も今までのように気取った形態でなく、新規の若い顧客も獲得できるような入りやすく、お手ごろな価格の店舗が人気を集めるだろう。

居酒屋の業態もそろそろ新しい取り組みが必要であり、和食を本格的に取り入れたリーズナブルな価格の居酒屋が出てくる。

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