NEWSな外食2006「一酸化炭素中毒と危機管理」(商業界 飲食店経営2006年9月号)

瞬間湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故による多数の死者発生がマスコミを賑わせている。家庭用のガス機器は検査協会が検査をし、使用中に危険なレベルの一酸化炭素を発生しないか確認をしている。それなのに事故が発生したのは安全装置の基板の亀裂に対する誤った修理が第一原因だと言われている。次に、その事故の発生に対する製造メーカーと経産省のリコール対応のようであり、メーカーの対応の悪さに非難が集中している。しかし、自動車メーカー最大手で高い品質管理に定評のあるのトヨタ自動車でも、欠陥自動車部品のリコールを放置していたと非難されるように、どんなに品質管理をきちんとやっている大手企業でも商品数が多い現在社会では完璧な品質管理とリコールを実施するのは不可能だ。

日本の飲食店でも2003年9月にラーメン屋の一酸化炭素中毒死の事故が発生していた。運の悪いことにガスコンロは燃焼等の安全性の検査認定を受けていなかった。さらに、このガスコンロは弱火にすると一酸化炭素が大量に発生する欠陥があった。そして、ガス機器を使用しているにもかかわらず、調理人が換気扇を回さずに酒を飲んで寝てしまったことから不幸な死亡事故が発生したのだ。この事件では今年に入り、メーカーの担当者が業務上過失致死の疑いで書類送検された。

上記の事故はメーカーがすべて悪いのかと言う論議があるが、家庭と飲食店の事故は同列に論じることは出来ない。飲食店で調理器具を使うのはプロフェッショナルであり、それだけの知識を持ち、具体的な危機管理の実践が必要である。現在のように商品の溢れている社会では完璧に安全な商品はありえないと言う前提で使用するべきだ。各ガス会社から家庭用と業務用に不完全燃焼時には警報を鳴らしたり、ガスを遮断する安全装置が販売されている。また、換気扇を動かさないとガスに点火しないような電気回路の工夫をすることも可能だ。チェーン企業の場合、安全に対する基礎研究を行い、自社で使用する調理器具の安全性の確認を行うと言う地味な活動が従業員と顧客の安全を守るのだと認識するべきだろう。

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