店舗管理に必要不可欠な店舗データー管理、店舗の履歴

フードサービス地区部長の仕事 第5回(商業界 飲食店経営2003年)

地区部長が店舗を訪問する際には、売上げと利益のというビジネスの観点で冷静に店舗を観察する。その判断を助けるのが詳細な店舗のデーターベースや履歴だ。店舗訪問前にその問題点を確認し、現場のQSCを見ながら頭の中で本当の問題点を解析して行く
店舗データーベースと履歴とは以下の内容だ。
1) 店舗基礎資料
店舗開店日
店舗改装日その1
店舗改装日その2
店舗営業内容、業態
客席数
構造(1階、2階、独立店舗、ビルイン等)
店舗面積(厨房    客席  )
事務所、倉庫、休憩所、の面積
敷地面積(ドライブインタイプのみ)
駐車場(ドライブイン、ショッピングモール)
設備投資額(建物、内装、什器備品、厨房設備、その他の設備、等)
保証金(保証金、建築協力金、額と返済条件、償却、撤退時の特記条項、等)
家賃(固定、変動、最低保証など詳細に)
共益費
オーナー名  担当者
ショッピングセンターの規模 (開業日、売り上げ、面積、キーテナントなど)
店舗周辺の状況(駅、バス、ショッピングセンター、学校、病院、市役所など)

できたら地図を作り、人が集まる施設の開店日を記入しておくと良い。

その他、特記事項のコメント

2) 売り上げ記録
開店以来の売上げ推移と、売上げの上下の理由、例えば近隣にショッピングセンターができた、競合が開店した、改装、成功した販売促進、等の、売上げに大きな影響を与えた現象を記録しておく。
年間の売上げ額だけでなく平日と土日の変動、月別の売上げ推移、ゴールデンウイークや夏休み、正月休み、春休みなどの特別な時期の売上げ動向も記録しておく。土日やクリスマスや正月などの売上げが異常に高い場合は時間帯売上げも記録しておく。そうすると祭事等や特別な日に対応が可能になるし、改装の際の設備投資を計画する際に最適の規模にできる。

3) 過去の販売促進計画の記録

年度別月単位の売上げと客数、それぞれの前年対比、を一覧表に記入する。グラフにしておき、売上げに大きな影響を与えた行事や現象を記入しておくとわかりやすい。
大きな影響を与えるのは広告宣伝や販売促進、新商品発売だ。テレビ、ラジオ、新聞、折り込みチラシをどのくらい使ったのか、その地域はどのくらいか、を記録しておく。販売促進であれば、割引の商品や顧客が使った費用だ。
販売促進計画は年に2回ほど店舗で作成させ、その結果を記録させておき、店舗データーベースと一緒に見ると今後の対策、問題点が一目瞭然となる。
単に数字だけでなく、何が効果があり、何が駄目だったか、こうしたらもっと効果があった、効果がある内容だが時期が悪かった、競合が同様な販売促進を行った、競合の近所にショッピングセンターができて効果がなかった、新しいバイパスができて交通量が大幅に減少した、等のコメントがより重要になる。

また、過去の事例だけでなく、今後どのように売上げを上げる予定があるのか、販売促進の担当者への教育、育成は行われているのか、予算は十分に確保しているのか、今後の地域の開発状況、競合の出店状況、道路計画、電車の新線や新駅の計画、等を書いておく。
販売促進計画は店舗の所在する県庁や市役所、商工会議所、商店会、地元の有力者、ショッピングセンターの担当者、大手小売業の店長、等と面談で資料を手に入れるわけで、店長や担当SVがどのように地元にとけ込んでいるかを判断する資料ともなる。

4)利益

年度別の利益額と売上高対比、前年比の利益とそのコメントを表にしておく。利益が特別に上がった月があれば、その原因が何かを明確にしておく。チェーン展開で店舗近隣隣接店の出店に備えてあらかじめ社員を採用しトレーニングする場合には人件費は高くなり、利益が下がる。しかし、新店舗が開店する際には、社員をその店舗の派遣したり、移動させたりする必要があり、人件費が減り利益はよく見える。そのような必要経費は除外して本当の利益額を判断する必要がある。
店舗基礎データーには詳細な利益動向を書き込むことはできないので、毎月の売上利益報告書を作成させる。その他、月次報告書を作成する。水道光熱費の場合、損益計算書では単純に金額しか計上しないが、実際の使用量が多いのか、オーナーからの請求単価が高いのか、ショッピングセンターなどで共益費を水道光熱費に計上されるのか、等、を月次報告で記入させておく。
そのほか、金額の高い、人件費、食材コスト、水道光熱費、雑費、原価に大きな影響を与える商品の売上比率、なども原因を記録しておく。

5)店舗のオペレーションの状況

店舗のQSCの観察記録を確認し、評価を一覧表にしておく。一覧表で大きな変動があれば、観察記録を詳細に点検する。QSCに大きな影響を与えるのは店舗の人材と、店舗の施設と売り上げに対するキャパシティ、老朽化等だからだ。
店舗の人材が如何に優秀でも、売上げ規模に対する店舗のキャパシティ、客席サイズ、客席動線、厨房能力、駐車場台数、等が適合しなくては、良いQSCを実現することはもできない。
QSCに大きな影響を与えている現象や理由のコメントはキチンと記録させる。その対策を考えるのが地区部長の仕事なのだ。

6)人事記録

1から5までの項目に大きな影響を与えるのが店舗に在籍する社員だ。店舗のオペレーションが悪いと激怒する前に、何が原因か店舗人事記録をじっくり見ることが大事になる。

氏名
入社年月日(会社在籍年数)
職位と該当職位の経験年数
当店への移動日(在籍月数)
年齢
過去の店舗経歴
過去数年間の評価推移
トレーニング状況
過去の職歴、学歴
家庭状況(転勤の可否)

の全員のデーターを一覧表にしておく。

店舗のオペレーションが悪いのは社員の能力だけでなく、入社以来の経験と期間、今の職位での期間、配属店舗での在職期間、等が原因だ。その場合、各職位についてからの経験年数と配属店舗の在籍年数を平均にして、その数値を見ると店舗のオペレーションと密接なつながりがあるのがわかるので参考にしていただきたい。
人事録は社員だけでなく、アルバイト全員の記録、退職率などを見て、その店舗が安定しているか、人の扱いが丁寧か判断できるようにする。

7)社員の教育計画と進行状況

チェーン企業の場合には迅速に新店舗を開店する必要があり、店舗を管理する社員の教育が必要不可欠だ。
社員のトレーニングカリキュラムや本部での研修計画、社外の研修計画への予定があるのか、店内で定期的に教育を行っているのか、勉強をする機会や時間を作り、店長は丁寧にフォローアップしているのか、店長の下で、何人のアルバイトが管理職に登用されたか、何人のアルバイトが社員になったか、何人のアシスタントマネージャーが店長に昇格したか、を記録に残しておく。
また、教育だけでなく、店内のコミュニケーションの状況を把握する上で、社員の会議、アルバイトとのミーティング、アルバイトの満足度を測定する会議などの状況もわかるようにする。

社員だけでなくアルバイトへのモチベーションはより重要であり、在籍のアルバイト人数、必要なアルバイト人数、早朝から勤務可能なアルバイト人数、深夜勤務可能なアルバイト人数、年間の退職者数、等も記録しておく。

8)危機管理

最後にキチンと確認する必要があるのは、危機管理、特に衛生管理と防火管理、防犯管理だ。(危機管理の内容については2000年9月号で詳細に述べている)
衛生管理に関しては店長、又は社員が保健所の食品衛生責任者の講習を受けて資格を取っているか、少なくとも3年以内の講習を受け最新の情報を入手していなければならない。ゴールデンウイーク前などの気温が上がる頃には従業員に対して食品衛生講習会を開催させる。

防火管理については消防署の行う防火管理者講習会を受けて資格を持っていなければならない。そして、店舗の防火計画を立案し、年に一回は消防訓練や避難訓練を行う。
防犯については内部犯行と外部犯行に分けてキチンとした対策を行っているかを確認する。特に、売上げの管理、納金は正確に行われているか、不明金が机などにないか、食材の管理、施錠はしっかり行っているか、従業員の出入りは正面玄関から行い、夜間の裏口の施錠、照明はキチンと行われているかなどを確認する。
(終わり)

お断り
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。

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