地区部長は業界のトレンドを性格に把握しなければならない

フードサービス地区部長の仕事 第12回(商業界 飲食店経営2003年)

同じ業態で数十年もチェーン展開可能できる良い時代は過去のものとなり、競争は激化し、消費者の好みの変化が早くなっている。地区部長はその外食業界のトレンドを正確に把握する必要があるのだ。 外食産業のデフレ経済に巻き込まれ価格破壊の荒波に揉まれ続けてきたが、変化の兆しが見えてきた。世界最大の外食チェーンであるマクドナルドは9月11日のニューヨークテロ事件以後の低迷を続け、CEOの入れ替えと会社のリストラを行うなどの大手術を行ってきた。その結果、今年第三四半期の数値は大幅に改善を遂げている。
その回復の秘密は従来と同じ商品やサービスを提供しているのではなく、顧客の変化に対応しミールサイズ・サラダと言う食事になるサラダの開発が成功したからだ。このマクドナルドをよみがえらせた新商品開発は偶然ではない。 外食業界はファーストフード、ファミリーレストラン、カジュアルレストラン、ディナーレストラン、と言うカテゴリーに分類されていたが、ファーストフードとカジュアルレストランの間にファースト・カジュアルという新しい業態が出現した。ファーストフードをちょっと高級化した業態と思われるが実は全く概念の異なる業態だ。

1)ファースト・カジュアルとは
ファースト・カジュアルの元祖は1982にレストランコンセプト作りの天才 フィル・ロマーノ氏が開業した、ファドラッカーだと言われている。ロマーノ氏は中食で有名になった、イーチーズ、イタリアンの超繁盛チェーン、マカロニグリルを作り上げた天才経営者だ。
氏は、マクドナルドやバーガーキングなどのハンバーガーチェーンは冷凍の食材を使って、調理工程を見せていないことに注目し、全ての素材を生から調理する工程を見せるようにして大人気を得た。
そのファースト・カジュアルの特性を明確に物語っているのが、急成長を遂げているメキシカン料理のBaja Fresh(バハ・フレッシュ) だ。調理行程が全部見えるカウンターの下がり壁には、

FOOD CANNOT BE MADE AT MICROWAVE SPEED
調理済みの食材を電子レンジで温めるだけのファーストフードとは違い、注文後、生の材料から調理するので、少々時間がかかる。
NO CAN OPENER
缶詰などの保存食料品でなく、生の素材から店内調理する。
NO FREEZERS
冷凍食材でなく生の食材から調理する。
NO LARD
動物性油脂を使わない。
NO MSG
うまみ調味料を使わない。

と言う標語を誇らしげに掲げている。

これらの標語はファーストフード業界に対する消費者の批判である。ファースト・カジュアル業態は一見ファーストフードと同じようなセルフサービスであるが、食材を生の状態から健康や安全に留意して丁寧に調理していると言うことを全面に打ち出す差別化作戦であり、従来のファーストフードとはコンセプトが全く異なるわけだ。
メニューは大人にターゲットを合わせ、客単価は6ドルから9ドルの間。アップスケールな内外装デザインを採用し、セミセルフサービスで、注文してお金を払ってから客席につき、料理は後から運ばれる。ファーストフードと決定的に異なるのはワインやビールなどのアルコールを提供し、ディナーにも対応できるようになっている。

米国人1000名に行ったアンケート式の消費者調査によると、2002年はマクドナルドとバーガーキングは合計で$909.4 millionドルと言う多額の広告宣伝費用を使用したが、マクドナルドには4%、バーガーキングには6%の人がブランドロイヤルティを感じているに過ぎない。2大チェーンよりも売上の遙かに低い、サブウエイとウエンディーズは合計で $498.7 millionドルを広告宣伝に使用しているが、サブウエイには12%、ウエンディーズには10%の人がブランドロイヤルティを持っており、遙かに効率が高いといえる。
さらに、10人の内3人の消費者はどのファーストフードのブランドにもロイヤリティを感じてない。ファーストフードに行く顧客の内、5人に1人はたった一つのブランドにロイヤルティを感じているだけだ。顧客が最もブランドロイヤリティを感じているのは地域限定のチェーンだ。それらは、Panera Bread, In-n-Out(西海岸中心のハンバーガーチェーンで、日本のモスバーガーのように人気が高い), Chipotle(マクドナルド傘下のメキシコ料理チェーン。味は一番美味しい) 、Chick-fil-A(南部、アトランタ周辺のチキンサンドイッチチェーンで、味の評価はダントツ)等のファースト・カジュアル業態だ。
その結果、ファースト・カジュアル業態は外食売上の2%を占めているに過ぎないが、外食業界の売上成長率が4.5%に対して、ファースト・カジュアルのカテゴリーは今後5年間で年間15~20%伸びると予想されている。
主な顧客は、食の動向に敏感で所得の高い18才から34才の年齢層の支持率が圧倒的に高く、顧客の平均的な年収も75000ドルと比較的に高いのが特徴で、消費動向に大きな影響を与えていることも注目されている。

2)ファーストフード大手の対策
売上が低迷しているファーストフード業界大手は、消費者の批判に対応するために、ファースト・カジュアル成長ノウハウを自社のチェーンに取り入れることにした。そして、資本提携や買収を仕掛け、多くのファースト・カジュアルチェーン店が大手外食チェーンの傘下に入りつつある。

<1>Jack in the Box(西海岸のハンバーガーチェーン)
Qdoba メキシカンチェーン
直営28店、フランチャイズ店58店
今後15の直営と45のフランチャイズ店を開く予定。
5年間で600~700店舗を開店し、8年以内には1000店開店予測
Jack in the Box社は45ミリオンドルで買収

<2>McDonald’s
Chipotle メキシカンチェーン
マクドナルドの傘下に入り200店舗を展開している。
Boston Market
鶏の丸焼き等の鮮度の高い料理をテイクアウトできるようにして、一世を風靡したが、食品スーパーの競合に敗れ会社更生法を申請し、マクドナルド傘下に入った
Pret A Manger
イギリスでチェーン展開したフレッシュサンドイッチチェーンで、狂牛病
に苦しんだヨーロッパマクドナルド社が注目し、33%を出資した。買収総額は35~50ミリオンドル。現在ニューヨークを中心に13店舗開店。
Fazoli’s
日本のダスキンが出資して創立した中西部のイタリアンチェーンで、マクドナルド社はジョイントベンチャー契約を交わし、30店舗を開店する予定。
この契約は将来の買収の余地も残している。現在の会社はSeed Restaurant
Group。

<3>Wendy’s
Baja Fresh
メキシカンチェーンで、200店舗展開。2002年に272ミリオンで買収。
Cafe Express
カフェのチェーンで、Houston本社
Pasta Pomodoro
San Franciscoを中心に展開しているイタリアンパスタチェーン

<4>Yum Brands(KFC、ピザハット、タコベル等の親会社)
テレビ料理番組の人気者Martin Yan 氏と提携し、アジア料理店を展開予定。
その他、カリフォルニアのPasta Bravo と提携

このように、マクドナルドは最も積極的に動き、膨大な資金を投入し、ファースト・カジュアル業態を積極的に傘下におさめたのだ。この結果がミールサイズ・サラダの爆発的な成功であり、決して偶然の産物ではないのだ。

3)日本
日本も低価格戦争の終結の時が来ている。米国ファースト・カジュアル業態は日本のファミリーレストラン、ファーストフードにも大きな影響を及ぼすだろ。現に大手のファースト・フードチェーン幹部は頻繁な米国視察を開始している。
また、元気な個室居酒屋の顧客調査を行ったところ、丁寧なサービスを顧客は嫌がりだし、さりげないサービスを求める傾向が出ていることが判明した。このようなトレンドの変化を敏感に把握し、新業態や新サービスに即応出来るように常に業界を観察しなくてはいけないだろう。
以上

お断り
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。

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