外食デフレに巻き込まれない重点戦略(商業界 飲食店経営2003年)

バブル後の10年間なんの対策もしていな個人経営店舗の多くは売り上げが半分に低下している。それらの飲食店に共通した現象は

・店頭の暖簾や看板が色あせ、掲示してあるメニューもごちゃごちゃしてわかりにくい。
・薄汚れた暗い店内では、汚れたユニフォームを着た活気のない従業員がうごめいている。
・店の中は汚れきっているだけでなく、新聞や雑誌が雑然とおいてあり、壁にはメーカーからもらったポスターや、汚い字で書いた手書きのメニューがそこかしこに貼ってある。
・料理を注文しても、レトルトのソースや出来合いのドレッシングを使った何処にでもある料理だし、昔ながらの盛りつけだ。
不振店舗の経営者は近所に吉野家や松屋、ガスト、サイゼリア、等の低価格店舗が出来て売り上げが落ちたという。対抗策として、あわてて値段を下げ、利益率を低下させたり、メニューを増やして提供時間が長くなり、顧客を失ったりしている。そんな危機状態に陥りながら、実際に自店周囲の競合店舗を食べに行っていない、最近流行っている店舗が近所の開店しても忙しくて行っていない。

従業員に聞いてみると、まず経営の実態を把握していない、店内会議を開いていない、経営者の方針がよくわからない、他の店舗を見たことがない、自分の目標が明確でない。などないないづくしだ。

デフレ対策として低価格政策に出ることは無益だ。低価格にしても儲かる原価構造や人件費、料理提供時間の短縮などの仕組みがないと危険である。まず、自分の店舗の位置づけを把握し、その商圏の中での競合相手を明確に定め、自店の強弱を自覚することをしなくてはいけない。

メニューに関しては、自店と同業態で繁盛している店舗を見学し、研究しなくてはいけない。バブルがはじけてから10年での外食企業の変遷は著しい物がある。今まで急成長していた居酒屋業態のワタミフードサービスでさえ、急激な売り上げ低下におそわれ、急遽同じ価格帯でよりファッショナブルな内装と、食器を採用し、今までの絶叫型のサービスから私服のソフトなサービスに切り替えている。

同業態のメニューの真似してはいけない。真似をすると競合を越えられないからだ。自社の価格帯よりも多少高い価格帯の店舗のメニューを学ぼう。その高価なメニューを自社でどのように低価格で提供するのかが重要だ。料理の質に関しては素材の品質と安全性の訴求、盛りつけの綺麗さ、他店にはない特徴のある味付けを行う。最近の消費者はBSEや輸入食材の農薬汚染の問題、牛肉の換装等の事件により、安全性に神経質になっている。問屋任せにしないで自ら食材を吟味する必要があるだろう。勿論良い食材を使うだけでなく、食欲をそそる盛りつけを行うためにお皿と盛りつけ方を変えるべきだ。ソースであれば、女性向けか男性向けかで、既製品のソースにちょっとした工夫をこらして見よう。

店舗の改装が出来ればよいが費用がかかりすぎる。まず、従業員とともに、冷静に新しい繁盛店の内外装を見て自店と比較してみよう。そして、自店に帰り、客の目線で店舗を点検し、新装開店当時と同じレベルまで、整理整頓と清掃をしてみよう。勿論、色あせたメニューやサンプルは交換をし、エネルギーだと言ってはずしてしまった、照明器具を省エネタイプの電球色蛍光灯にして開店当初の照度まで戻してみよう。次はユニフォームの点検だ。昔は格好の良いユニフォームでも数年過ぎればファッションは変わっているはずだ。従業員の意見を聞きながら最新のデザインに変えてみる。

これで大夫お店のイメージは変わるはずだ。この次は変わったお店をどのように客に告知をするかだ。今までの固定客にダイレクトメールを出したり、訪問して、新しいメニューやチラシを手渡し、再度来店してくれるようにお願いする。直ぐに効果は出ないかもしれないが以上の対策をきっちり行うことにより、お店の売り上げは上昇気流に乗るはずだ。そうすれば自信を失った店舗と従業員は元気を取り戻し、その活気は客に通じ、繁盛を取り戻せるはずだ。売り上げ低下を決してデフレのせいにしないで頑張ってみよう。

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