2000年の展望と課題(商業界 飲食店経営2000年1月号)

1)2000年度中に解決すべき重要課題
単品�単一チェーンコンセプトからマルチコンセプトへの変化

外食産業は経済不況の中で苦戦しているだけでなく、消費者の嗜好の変化という問題を抱えだした。嗜好の変化とはチェーンや大きい企業に対するアレルギーだ。以前はチェーンの店舗数が多いことに対して�顧客は信頼感を抱いた。しかし、最近は店舗数が多すぎることや、チェーンそのものに対するアレルギーを感じるようになってきた。

絞り込んだメニューの単一コンセプトでは顧客が飽きを感じると急速に人気が落ちだすという現象を引き起こしている。対策として、ファミリーレストラン業界ではすかいらーくが�すかいらーく本体のほかに�ガスト、ガーデンズ、グリル、宅配、マルコデポーロなどに分散をさせている。マクドナルドはハンバーガーの単品だが、販売チャンネルの多様化を目指し、ガソリンスタンド、食品スーパー、空港、学校、社内給食などに出店をするようになってきた。

企業給食も同じだ。企業のリストラという嵐のおかげで、従業員と言う客が減少し、さらに外資の進入という脅威にさらされている。日本企業が不振の中で米国企業による日本企業の買収や進出がおきているが、米国企業ではワールドワイド契約ということで米国本社の契約した給食会社を指定するようになってきている。

そのために、売上を確保するためにに企業給食だけでなく、社外への進出という業態開発をしている。とんかつを主体としたお総菜家、カラオケ、病院給食�宅配、などに乗り出している。ある大手給食会社経営者はマルチコンセプトの時代だと明確に発言をしている。

このように従来のチェーン理論では対応できないような厳しい時代になっているようだ。米国でもごく少数の全国チェーンが生き延びているだけで、特徴のないチェーン店は淘汰されつつある。以前ローストビーフのチェーンでビクトリアステーションというチェーンがあり大人気であったが、米国では10年以上前に撤退してしまった。その元ビクトリアステーションのチェーンの経営者が再起を期して開始したのがカリフォルニアカフェというチェーンだ。

チェーン展開の初期からカリフォルニアカフェ、カフェ・デルレイ、ブラックホークグリル、ナパバレーグリル、アルカトラスブルーイング、と言う複数のブランドを使い分けている。あの大繁盛したビクトリアステーションがあっという間に飽きられた苦い経験を元に、個性的なチェーンを築いているのだ。チェーン展開の初期から、各店舗で独自のメニューやサービス�イメージをシェフに演出させ、チェーン本部としては経営管理面だけを厳しくコントロールして�利益を最大限にあげるようにしている。

日本でも、客の目から見たら個性的な店舗の集合体であるが、利益管理面ではきちんとした統一の管理ができるチェーン店を築き上げる必要が出てきているのだ。

2)今年注目するべき異業種、業態、or 企業
客の目から見たら個性的な店舗群を築き上げているのは、グローバルダイニング�ちゃんとフードサービス、際コーポレーション、ラムラ、などだ。これらの企業はチェーン展開の最初から個性的な店舗作りを心がけている。特に注目されるのはメニューそのものではなく、やる気のある従業員を集め、楽しいサービスを実現しようとしていることだろう。そのためにはグローバルダイニングは従業員に対して厳しい選別と1ヶ月にも上る訓練を課し、一定の水準にならないと客席で働くことを許さないほど徹底した厳しさだ。ちゃんとフードサービスでは最近は一流のホテルマンが働き甲斐を求めて入社してくるようになったほどだ。若い従業員は終身雇用と年功序列が一体となった旧態依然とした企業に見切りをつけ、躍動的な企業に転進を図ろうとしている。

しかし、これらの企業は個性的な店作りに成功しているが、経営管理面で継続して十分な利益をあげられるかどうかと言う課題を抱いており�今年も注目されるだろう。

また、アウトバックステーキハウスが日本に進出してくる。同社は店長をパートナーとして採用し、人事異動はない、セントラルキッチンを使わない、利益還元の報酬制度など、のユニークな人材活用を行い10年で650店と急成長した。その日本進出でどのような人材活用の手法を取り入れるか注目されだろう。

以上

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