米国レストランピリ辛情報 「ファースト・カジュアル世代交代」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2003年11月号 NO.445)

アメリカ外食の新潮流Fast-Casualの動向 その4
競争の厳しいファースト・カジュアルの 世代交代

数多くある、ファーストカジュアルの業態を分析すると
1)有名シェフが経営するカジュアルレストランや高級レストランのメニューを絞り込んだ業態
2)有名シェフのブランドを使い、企業化した業態
3)チェーンレストランまたは、経験者がマーケットリサーチの結果作り上げた新業態
4)大手チェーンがファーストフードやカジュアルレストランで人気の商品を研究し作り上げた業態

等に分かれる。
初期のファーストカジュアルである1)の業態で有名なのはウオルフギャング・パック・エクスプレスだ。

経営者のWolfgang Puck(ウオルフギャング・パック)氏はフレンチの有名調理人で、フランス修行時代は日本の有名シェフ、石鍋裕さんや熊谷喜八さんと一緒に働いていた。

その後、米国西海岸のLAに渡り、フランス料理のお店を開業しようと思ったが、当時の米国はすでにフレンチの時代は終わり、サンフランシスコ対岸の学生街バークレーにあるシェパニーズ http://www.chezpanisse.com/ のようにフレンチをベースにカリフォルニアの新鮮な野菜や魚介類を組み合わせた、ニューアメリカンが人気を呼んでいた。

そこで、ウオルフギャング・パック氏はイタリアンをベースに新鮮なカリフォルニアの野菜と海産物を組み合わせたスパーゴを開店した。次にカリフォルニアの多民族(特に東南アジア系の)にあわせ、カリフォルニアスタイルの中華料理店シノワ・オン・メインを開業、その新鮮で素晴らしいサービスのお店は大成功をおさめた。そして、パック氏は米国で開催されたサミットなどのシェフを努めるなど米国のトップシェフの座を獲得した。
その名声を背景に、氏の名前を付けた、パスタとピザを中心としたカジュアル業態のウオルフギャング・パック・カフェを開発した。オープンキッチンの中央には石釜を設置し、その石釜の周囲等にパック氏の奥さんのBarbara Lazaroff氏(有名なインテリアデザイナー)がデザインした、原色のカラフルなタイルを張りつめ、店内の内装はその色とコーディネートした新鮮なイメージのお店で、LA名物として全米で大人気となった。

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次の開発はファースト・カジュアル業態のウオルフギャング・パック・エクスプレスだった。ピザとパスタ、そして調理済みのお持ち帰り惣菜などを組あわせたセルフサービス店舗で、LA空港やサンフランシスコダウンタウンのメーシーズ百貨店などに開業し、大成功をおさめた。その他、氏の名声を元に冷凍食品を製造販売する会社を設立するなど、会社の仕事の拡大を続けた。
しかし、数年前にファースト・カジュアルタイプのイタリアンチェーンを買収してから、その業績にかげりが出てきた。
2003年9月15日付けのニュースによるとWolfgang Puck’s casual-restaurant company, Wolfgang Puck Worldwide (以下WPW社と省略)が, 数店舗を閉店するか、業態変更をすると伝えてきた。
会社の創始者であるパック氏はカフェ業態の見直しと、買収したワシントン州に本部を構えるCucina! Cucina! Inc. の14店舗の見直し又は売却を検討し、ファースト・カジュアル業態に専念する。WPW社は25店のエキスプレスと15店のフルサービスの ウオルフギャング・パック・カフェ、21店舗のCucina! Cucina!を展開をしているが、複数の業態を抱えるのは難しいという結論に達したようだ。
すでに、2001年にはWPW社は冷凍食品部門を20ミリオンドルでコナグラ社に売却し、2001年末には業界の専門家をスカウト、ファースト・カジュアル業態のエキスプレスに集中する予定だ。エキスプレス1店舗の平均年商は1.8ミリオンドルにのぼり、収益性が高く、フランチャイズ化により2007年までに300店を開店する計画だ。しかし、業界筋は300店舗ものフランチャイズチェーン展開を行うにはかなりの資金力が必要であり、大幅な資本力の増加が迫られると見ている。
筆者が5月にLAを訪問した際は空港などのウオルフギャング・パック・エクスプレスは賑わっていたが、LA最大規模のサウスコースト・プラザ・ショッピングモールのウオルフギャング・パック・カフェは目の前に開店したローストビーフの名店、ローリーズの新しいファースト・カジュアル業態のカーバースに完全に負け、閑散としていた。
パック氏のようにブランドのある有名シェフであっても複数の業態を展開するのは難しく、大手チェーン傘下に入りファーストカジュアル業態に専念するか、パック氏の一番の強みである高級レストランビジネスに専念するか、の選択を迫られていると言うのが、厳しい米国外食業界の実状なのだ。

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