FFの低価格路線の方向(商業界 飲食店経営1995年3月号)

千円札から500円玉の低価格戦争への突入
CVSが最大の競争相手だ。
1.CVSと飲食FFのシステム力の差
兵庫南西地震の際、本来緊急の炊き出しなどをするべき飲食業は、電気、ガス、水道が止まった事により、調理することが不可能であった。更に物流が寸断され売ろうにも食材の供給が追いつかなかった。

一番活躍したのはセブンイレブン、ローソン等のCVSコンビニエンスストアーのようだ。セブンイレブンではヘリコプターを動員し、物資の供給を行った。まず被災地から離れた食品加工工場で調理をし、それをヘリコプターでとバイク便で被災地に運んだようだ。CVSのおにぎりは加熱調理を必要としない物であったから、被災地から離れた食品製造工場で製造した加工済みの食品を送り直ちに供給し食べてもらうことが可能であった。

セブンイレブンでは兵庫県に店舗をまだ開いていないが、被災者救助のために、地震の翌日の18日より21日まで、毎日16000個のおにぎりを届けたそうだ。店舗が60ほどある京都、滋賀も地震の影響で交通渋滞するのでそれに対して、ヘリコプターとバイク便の手配をして欠品をしないようにしていた等、万全の対策を直ちにとっていたようだ。

戦争で最も大事なのは戦力であり、戦闘部隊が戦力を維持するのに重要なのは武器弾薬だけでなく、食料の供給だ。その為、軍隊では兵たん部が大変重要な部門となっている。兵たん部隊とは物流の部隊である。世界の軍隊でもっとも優れているといわれているのは米軍であるがその兵たん部の活躍が米軍を支えているといわれている。海軍でも兵たん部があり、その部門の最高責任者は提督だ。提督といっても戦争の実践経験はない、兵たんの専門家だ。その最大の任務は全世界にわたる物流なのだ。世界中の基地に送る食材を乗せた専用船を、偵察衛星でモニターし、完璧な食材供給を行っており揃えられない物はないと豪語している。

今回の地震後の対応のすばやさを見ると、日本のCVSのシステムは正確さにおいて米軍の物流より優れているのではないと思われる。筆者の経験では、米国海軍のシステムは優れているが、それを運営する人間の熟練度が十分でなかったり、官僚主義による行動の遅さなどがあり、物流の正確さが今一歩だからだ。

CVSのヘリコプターとバイク便を使用する配送システムは、なにも緊急用ではないのだ。夏場などのリゾートの道路混雑等のために6年ほど前より、ヘリコプターとバイク便による供給を実践していたのだ。つまり実践で鍛えられた完成されたシステムである。

ガス、水、電気をたたれさらに物流をトラックにしか頼れない飲食店は、本来活躍しなければならない災害時に無力であった。このシステムの大きな差は実は店舗の営業にもでているのだ。先月号の記事で書いたが、米国でのセブンイレブンなどマクドナルド社の2/3の店舗数しかないし、FF部門の売り上げは、マクドナルド社の1/10以下であるのに引き替え、日本では売上トップのマクドナルド社の年商2125億円に対し、セブンイレブンのFF部門の年商は2820億円と推定される。つまりセブンイレブンが日本の最大の飲食チェーンとなる。では米国と異なり、日本でCVSの方がFFより強くなった理由は何であろうか?

2.日本のFFの戦略上の誤り。
25年前に大阪万博の時に日本に導入されたFFは、当時の飲食店の半分の価格を達成することにより急成長を遂げた。

当時のマクドナルドはハンバーガー80円、コーヒー50円という驚異の値段で販売を開始したのだ。当時の喫茶店の値段はコーヒーが120円。ハンバーガーはあまりなかったがそれでも200円くらいの値段であり、半分以下の値段であった。特にコーヒーが50円というのは当時の喫茶店から見ると驚異であった。しかし、現在のマクドナルドのコーヒーは180円と、それより安いコーヒーを売っているチェーンはざらにある。

ベトナム戦争前後にヒッピーがはやっり、日本からも多くの若者が米国に放浪中した。その彼らが、最も安いマクドナルドのハンバーガーで飢えをしのいだという話がある。本来FFは最も安い食料品の筈だ。FFは何故価格競争力を無くしたのだろうか?

3.米国の価格決定方法と日本の価格決定方法の差
日本は米国から多くのことを学びながらも、経済面での摩擦が絶えない。日米の通商のトラブルの原因は商習慣が異なるからである。日本では、まずマーケットシェアーをとろうとする。その為には利益を度外視してもまず売上高を向上することを目指す。米国では売上高ではなく利益高を重視する。

たとえば、日本でゴールデンウイークなどで車などの遠出をするときにはガソリンが安くなる。安くなることにより販売量を増加し、マーケットシェアーを高くしようとする競争なのだ。マーケットシェアー獲得のためには、短期的に利益を上げない値付けを行うことは企業戦略上当たり前だ。

米国では独立記念日やメモリアルデーの休みに家族が集まるので遠くの田舎に帰る習慣がある。その際、ガソリンの値段は逆に上昇する。つまり市場のニーズが高くなると、値段が上がる。消費が下がると値段は下がる。つまり日本と逆の価格戦略なのだ。もちろん米国でも需要が高いときに値段を下げマーケットシェアーをとろうとするのだが、その場合でも利益を度外視した値段をつけることはない。大企業が利益を度外視して値段を下げれば、卑怯な手段をとると非難されるのだ。これが米国のいうフェアーな商売という考えだ。

もちろん値段を下げてマーケットシェアーを獲得し成功する企業はある。ただし、技術革新を達成することにより従来よりコストを大幅に下げることが可能になった場合だけが認められるわけだ。日本の企業のように現在の利益を度外視し、マーケットシェアーをとることは彼らにとってはアンフェアーであると写るのだ。この商習慣が日米の大きな摩擦の原因なのだ。

また、米国では成功した商売のまねをしない。もちろんまねをする企業はあるが、馬鹿にされるのだ。競合と差別化して、成功することにより名誉を獲得できるのだ。

この日米の商習慣の差は一見今回のFFの低価格路線と関係がないようだが実は大ありなのだ。大手FF及びFRのチェーンは米国流の商習慣に従っている。当初はもっとも値段の低いのはチェーンであったが、2回の石油ショックの際に業績がよかったこともあり、値段をどんどん上げていったのである。その結果客数がじりじり落ち始めたが。悪いことにバブル経済が勃発し、その客単価を補う高単価商品の売り上げが好調であり、各社新商品開発、客単価アップに走り出したのである。客単価の向上に従い、店舗も豪華になり、本社も豪華な高層ビルに入ったりして、本社人員もどんどん増加していき損益分岐点は高くなっていった。

もう一つの問題は、本来の米国流のFFのビジネスの主流はフランチャイズであるということを理解していなかったという事である。フランチャイザーの投資を少なく、大量の出店を短期間に可能にするシステムを取り入れなかった。それが米国流の店舗運営システムは入ったがマクドナルド社等は日本にはFCシステムはそぐわない、オペレーションを統一できる直営主義でいくと主張し、多くの飲食チェーンは追随したのだ。(フランチャイズチェーンを当初より展開した、KFC、ミスタードーナツにおいても、米国のような個人のフランチャイジーではなく優良企業を中心にFC展開した。)

日本の飲食チェーンも指導するコンサルタントがフランチャズシステムは個人からの利益の搾取だ、直営の方が利益が上がるし、コントロールも旨くいく、という意見に左右され直営中心に展開をしていた。

初期の直営店舗中心の営業方式は成功した。しかし、数多くの直営店舗を開店するためには、人材の採用が急務であった。しかし当時の飲食チェーンのイメージは水商売であり、優秀な人材を集めることは難しかった。そこでマクドナルド等のチェーンは当時では破格の給料でもって店長を募集したのである。そして、それが各社に影響し、多額の給料を出すようになり、大卒の人材や、大卒新卒を集めることに成功したのだ。

しかも多くのチェーンの本社は東京に所在し、その高物価が人件費に与える影響は大きなものがあり、人件費の面で大手チェーンの人材面の硬直性が本社経費を押し上げる要因となっていった。

食材原価では日本進出時のマクドナルド等のFFは40%を越えていたし、殆どの飲食チェーンの食材原価は40%を越えるのが当たり前であった。この低価格の構造が受けて外食産業が急成長していった。

しかし、その成長している外食産業を2回の石油ショックがおそった。そのときに多くの外食産業は足並みを揃えて価格改定を実施した。米国的なプライス戦略で、ニーズがあるのなら値段を上げようという考え方だ。また、外食産業そのものがファッションビジネス的な捉え方をされて、高付加価値が可能なのだという誤解を各チェーンが持ち、最もやすい食事を提供するという使命感を忘れ去ってしまった。

その為、石油ショックが収まっても、食材コストが30%にまで下がってしまったのだ。本来そこで利益を還元するために売価を下げるべきであった。しかし、利益率の高い商売は安楽であり、この利益構造に寄り掛かった店舗展開を各社が行うようになったのである。飲食業界は皆値段を上げたので競合は一見無いように思えた。更に円高が進行したが、その円高によりFF等では食材原価が30%の前半になるまでになり、このあたりから客数の減少という問題が出てきた。

この時点で低価格を実践するべきであったのだ。それが、5年ほど前にマクドナルドが開始した390円セットなのだ。この値付けはロッテリアの360円セットへの参入により、悲惨な結果に終わった。残念ながら、当時の日本はまだ、バブルの絶頂にあり、低価格路線は早すぎたようだ。当時の円価格は150円前後であり、まだ、360円セットの低価格路線を長期間バックアップする規模でなかった。

また、低価格を達成するためには、経費を下げるリエンジニアリングを実施する必要があったのだが、それをしないで、つまり損益分岐点を下げないまま値下げに突入したために長期間持続できなかったという側面がある。

当時FFやFRの想定する競合は、同じ業種の競合他社であった。誰もコンビニエンスが直接の競合相手であると認識していなかったのだ。

また、マクドナルドやロッテリア、KFC、ミスタードーナツ、すかいらーく、ロイヤル等の外食チェーンは、急速なチェーン展開を行うために店舗の全国展開を行いだした。

しかし首都圏や、京阪神は営業成績は良かったが、ひとたび地方に出ると売上は低い反面物流コストが上昇するという問題を抱えだしたのである。

首都圏と京阪神の店舗の利益により何とかやっていけたし、客数の減少をカバーするために高単価路線をとろうと、新商品開発に各社乗りだし、バブルの間はそれが成果を生み出すように見えていたのだ。それが、バブルがはじけ、一気に売上の低迷が始まった。

4.コンビニエンスストアー
コンビニエンスストアーの出だしは慎重だった。元々セブンイレブンが日本に進出するきっかけとなったのは、外食産業のデニーズである。イトーヨーカ堂がデニーズと提携交渉の際、何度が米国を訪問する際に目に付いたのがセブンイレブンであり、デニーズの交渉の副産物であった。当時のイトーヨーカ堂のトップもセブンイレブンの業態には疑心暗疑で展開したといわれている。

セブンイレブンの日本の展開で大きな違いは、最初からフランチャイズチェーンの展開を考えていたことだ。一号店は江東区の豊洲であり、最初からフランチャイジーであった。

直営店舗は基本的に新規フランチャイズチェーントレーニング店舗としての位置づけであった。これにより、短期間のうちに店舗数を6000店舗近くまで急成長させた原動力だ。これらの店舗を直営で展開していたら膨大な投資額と、社員が必要となったことであろう。

ちなみに、この一号店の豊洲店の日商は300万円といわれており、現在でもセブンイレブンの店舗群の中でもトップ5の売上を誇っている。

セゾングループのファミリーマートは独自のノウハウでコンビニエンスを展開したのだが、実は、オペレーションシステムは、シカゴのホワイトヘンパントリーにならい、フランチャイズシステムは、グループ内のダンキンドーナツのノウハウを投入したといわれている。米国におけるダンキンドーナツは優秀なフランチャイズチェーンとして知られている。皮肉なことに米国のダンキンドーナツはミスタードーナツを吸収合併したほど強力なのだが、日本では逆でミスタードーナツの後塵をはいしている。一見失敗のダンキンドーナツであるが、フランチャイズチェーン店展開のノウハウは大変優れた物があり、それがファミリーマートに活かされている。CVSの急成長の最大の理由はフランチャイズシステムである。店舗数は当然の事ながら利益を見てもセブンイレブンの利益は親会社のイトーヨーカ堂を抜くまでになっているのだ。

次に店舗展開の手法はドミナント戦略といい、一定の地区に店舗を完璧に配置終わるまで、他地区に転換しないということだ。このメリットは当然の事ながら、配送が効率的になり、コストが下がるだけでなく、食品の鮮度が上がり品質が大幅に向上するのだ。米国のCVSは店舗でサンドイッチの加工を行うのが主流であったが、日本ではこのドミナント戦略を徹底し、各地区に食品加工工場を建設し(もちろん、建設費は加工業者が負担する専用工場なのだ。)食品の品質を高めたのだ。

このドミナント戦略は広告宣伝上の効果にも多大な影響を与えている。筆者の別項の広告宣伝の記事に詳しく述べてあるので参照していただきたいが、 関東TVエリアマーケットに専念することにより、大量のTVを投入することが可能になり、「セブンイレブンいい気分」というコマーシャルとともに店舗の売上が急上昇していったのだ。セブンイレブンの広告宣伝量はマクドナルド社より大幅に多い物であり、売上の差は広告宣伝量に比例しているといえる。

もう一つCVSと飲食チェーンで大きく異なるのが、原価率である。CVSの原価率は物販で75%前後であり、店舗で調理するFFであっても原価率は45%前後かけている。

つまり、CVSの様に物販からスタートした物にとって、原価を75%もかけるのは当たり前なのである。

5.ミニストップのFF販売戦略
CVSでもまだ500店舗の展開である、ミニストップを見てみよう。 店舗の平均月商は1500万円であり、FF部門の月商は120万円。売り上げ比率は現場調理のFF(インストアー)と弁当�サンドイッチ�米飯の合計で20~25%である。現場調理FFはハンバーガー、ピザ、フライドチキン、フレンチフライ等を調理している。その年間の売上比率は平均で7~8%である。ということは店舗調理のFF部門で年商72億円あるということになり、現在でも急成長をしているのだ。ハンバーガーチェーンでいえば、大手の次のファーストキッチン当たりと同一になるのではないかと思われる。

荒利益は物販で27~28に対してインストアーは53~54%である。FFをいれたトータルで70%を越える原価をかけている。つまりCVSは飲食チェーン、特にFFより食材原価をかけている、バリューがあるという事になる。品質もFF各社に提供している大手食材メーカーを使用しており、かなり良い原材料を使用し、高い品質を誇っている。

FFの機器はオーナーに無償で貸与しており、新たにモスバーガーに加盟するよりも資金負担が少なくなるようにしている。既存のCVSに500~800万円かければ良いようにしている。

人件費は最近のCVSは安全対策上常時2名体制が必要であり、他のCVSと差が無く7~8%であり飲食よりはるかに低いのだ。

このような低投資で年商72億円もの売上を達成できるのは飲食チェーンにとって驚異だろう。(詳しくは食品商業95年2月号の拙稿を参照していただきたい)

6.米国でのFFの状況
米国の景気の動向は日本より3年ほど進んでおり、不景気も日本より早く進行していた。米国のFFも日本と同様に価格が上昇し、ハンバーガーが最もやすい食事ではなくなってきた。そこに、タコベルのりエンジニアリングによる、バリューミールが登城したのだ。マクドナルド社というのは見た目と異なり大変保守的で現実的な会社だ。マクドナルドが新規オペレーションを考案することは少ない。マクドナルドが開発したと言われているクラムシェルグリドルは実は第2位のハンバーガーチェーンのバーガーキングのコンベアーブロイラーの成功を見て、まず全自動の調理機器の開発をはじめそれがクラムシェルに進化したのだ。ドライブスルーも同様だ、元々ジャックインザボックスが始めたシステムを、バーガーキングなどが採用し成功しだしたのを見て導入したのだ。他社が開発したシステムを、徹底的に分析し、自分なりに完成熟成し、使えると思ったら、全店に導入しNO.1になる強引さが最大の武器なのだ。

そのマクドナルド社がタコベルの成功を黙ってみているわけではないのだ。まず、採用したのは、バリュー分析だ。タコベルはまず客がなにを望んでいるか分析し、店舗のオペレーション、設備、値段に生かすのだ。そこで発見したのは、マクドナルドの値段は人々が望んでいるより大幅に高くなっているということだ。つまり一般の人々にとって、高すぎる商品価格になってしまったということだ。当時は、新商品開発や、健康食品の開発を中心に行っていたが人々の関心は、値段であった。また、店舗も豪華に大型になっていたがそれは評価されていなかった。そこで全商品の、価格満足度調査を行い、客の望んでいる値段を探り出し、低価格路線に乗り出したのだ。

この低価格路線、バリューミールは不景気の米国で大ヒットし、そのコンセプトが日本に紹介された。

CVSとマクドナルドへの対策
短期的な対策
食材のコストを米国価格の1.3倍、最大でも1.5倍で調達できないといけない。その為には、直接調達できる能力を付けるべきだ。商社や業者に任せていては絶対にコストダウンは不可能だ。
メニューの絞り込みにより、商品の提供時間、品質を向上させ、トータルのQSCを改善する必要がある。特にサービスの向上が急務だろう。

中期的な対策
ローコスト建築、リエンジニアリング、TQMの導入など、全社的なコストダウンに取り組む必要がある。
経営判断を迅速に行えるようにコンピュターの導入を真剣に考えるべきだろう。現在はパソコンレベルでも以前のオフコンより性能が上がっているのだ。

長期的な対策
本格的なローコスト経営を実現しながら企業をのばすには、フランチャイズシステムに真剣に取り組むべきだ。
CVSに打ち勝つには
CVSの最大の武器は、ドミナント戦略による物流の徹底した合理化と、POSとコンピュータシステムをフルに活用した品揃えである。これだけ完成されたシステムに立ち向かうのはかなり努力が必要だろう。
完成したCVSのシステムに打ち勝つには商品にバリューがなくてはならない。CVSよりお値打ち感がなければならない。マクドナルドではハンバーガーのバリューセットを400円で販売しているが、それを300円以下で販売する必要があるだろう。400円のセットの食材原価は推定30%である。それを290円にすれば41%となる。つまり日本に上陸したときの原価になるのだ。この価格ゾーンがこれからのFFの基準になるだろう。早急に食材原価の見直しが必要になる。

しかし価格戦略だけがバリューでない。CVSに出来ないバリューを打ち出すべきだ。CVSのカウンターで販売する従業員の笑顔が無いのは最大の欠点だ。まるで自動販売機で買っているような気持ちになる。また、店内の客席が無く、持ち帰りが中心だが、家で一人で食べる食事くらい寂しい物はない。

最大のウイークポイントは温かくないということだ。これこそFFや飲食チェーンがCVSに打ち勝つ最大のポイントだ。つまり本来のQSCをしっかり固めることが重要だろう。早く、安く、温かく(食材とサービスの両方が)が勝つためのキーワードだろう。

マクドナルドの低価格に打ち勝つには
マクドナルドの低価格は食材のコストが低いからだけで実現するのではない。TQMというトータルクオリティマネージメントの導入が、損益分岐点の押し下げとQSCの向上を実現している。まず自社のオペレーションを客の立場から分析し、なにを求めているかゼロから組み立てあげる。それもチームを作り全員で考えるのだ。その為組織も見直し、権限委譲を行い改革がスムーズに行うようにしている。
また、精神論だけでなく、物理的な合理化を実施する。それはコンピューター化だ。価格を下げるためにはシビアーな利益管理が必要だ。従来はSVが人海戦術で管理していたが、中間管理層の合理化が必要な時代になっている。単にSVを省略すれば、管理能力が落ちるから、まず物理的に管理が出来るように、全員がラップトップコンピューターをもち、管理を維持しながら省力化を図るのだ。電話回線を使用しどこからでもデーターを引き出し、報告もペーパーレスで行うのだ。

皆さんが日本マクドナルドを見て行動を起こしても間に合わないだろう。上記のマクドナルドのTQMはタコベルのリエンジニアリングに影響されたものだ。タコベルの成功を見て多くの幹部をハーバードビジネススクールに派遣して学んだのだ。ハーバードビジネススクールでのケーススタディーはタコベルだったのだ。つまり、米国マクドナルドですら、タコベルよりも5年は遅れているのだ。米国マクドナルドより3年遅れている日本マクドナルドを見てから行動を起こしてはどうしようもない。

最近は米国から学ぶことは無いという風潮があるが、それは思い上がりだ。FF、FRの先進国、米国からはまだまだ、学ぶことが多くある。日本のマクドナルドを見るのでなく、米国の進んだ飲食チェーンや、小売業、最先端の企業をダイレクトに観察し、最新の経営戦略の先取りが必要だろう。
皆さんは日本のデパートのサービスは世界一であると思っているだろう。そう思っている人はすぐに米国に飛んでいく必要がある。現在世界で最もサービスが洗練されているのは、米国のノードストロームというデパートだ。靴の売場では、客が履いてサイズを確かめるときに、セールスの従業員はひざまずいて接客にあたるのだ。客はまるで貴族のような気分になる。商品は値段や品質だけでなくサービスが重要なのだということを認識させられる優れた実例の一つだ。

ちょっと前まで米国の航空会社のサービスは最悪だった。特にノースウエストのサービスはひどいし、食事は刑務所よりひどい物だった。しかし、TQMに取り組んで改善し、現在では米国の航空会社で最も優れたサービスと食事を誇るようになっている。

井の中の蛙にならず世界から広く学ぶ時期に来ているのではないだろうか。

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