95年ホテルレストランショー(商業界 飲食店経営1995年5月号)

3月に晴海で行われた国際ホテルレストランショーは、コンビニエンスストアーの中食への進出に代表されるように、CVS向けの調理機器とそれに対抗する小型厨房システムの展示が多いのが特徴だ。

1.ベーキングオーブン
店舗で粉から仕込むスクラッチ方式は、熟練と真夜中からの作業が必要な重労働であった。それを発酵後冷凍した生地を専用のオーブンで解凍焼成をするシステムが開発し誰でも出来るようになった。大手CVSの焼き立てパンに中小のCVSが対抗するためにこの店舗でパンを焼くシステムを導入しだしている。写真1、2

2.茹で麺機
写真3の茹で麺機は大量の湯気を出し厨房の環境悪化を防ぐためテフロンの蓋をつけ、麺の出し入れ以外は湯気が出ないようにした物である。湯気が少ないと言うことでCVSチェーンで採用を検討している。CVSではドンブリ物や焼き立てパン、麺等を店舗で調理することを真剣に考えている。

写真4は最近大手FRの和食店舗などで採用された、自動タイプの茹で麺機だ。バスケットごとにタイマーで調理時間の設定できるので、多品種の麺を茹でることが可能になっている。

3.小型高速オーブン
従来高速のオーブンというとインピンジャーがあるが、小さい店舗に導入しにくいと言う問題があった。そこで、コンベアーをなくし、内部の回転皿で回しながら上下から高速の空気を当てる物が出てきた、写真5は米国製で、写真は6は更にマグネトロンを加え(電子レンジ)高速にした国産オーブンである。

写真7はタイプは異なるが、食品中の含有オイルを利用し高速の空気を吹き付けることにより、油を使用しないでフライ出来るという物で欧米の小型店舗で使用され出している。原理としては昔からあったが、食品中の水分変化をとらえて自動調理するという点が特徴のようだ。

4.炊飯のシステムの高度化
高いご飯の品質の要求により、大型の炊飯器もコントロールの精度の高い物が出てきた。電気炊飯器は電気ヒーターでなく電磁誘導加熱と、マイコンにより精度を高め(写真8)、ガス炊飯器機はマイコンを利用しコントロールの精度を上げている(写真9)。

5.ローティサリーオーブン
ローティサリーオーブンを使用しているKFCのハーベスタークラブや、パークハイアットのニューヨークグリルなどが人気を呼んでいる。従来は電気が主力であったが、ガスタイプも開発された。 (写真10)

6.小型スチームコンビオーブン
各社から小型で多段式に組み合わせる機種が開発され、値段も下がり普及に拍車がかかりそうだ。 写真11。

7.フローズンカクテル  米国のバーなどで人気のあるのがフローズンカクテルだ。マルガリータなどを入れフローズンドリンクにしている物で、日本でも人気が出るのではないかと思われる。 写真12
8.輸入の低価格機器  この円高で、輸入機器が増加している。写真13のスチームコンベクションオーブンは、スペイン製であり円高を背景に低価格で販売しようとしているようだ。
ピザ調理機器も多店舗展開を考え写真14のようにピザテーブルからミキサーまで輸入機器が増加している。大手FFでは板金物、冷蔵庫まで東南アジアで製造し、輸入する動きもあるようで、今後のコストダウンを考えると注目される。

エスプレッソコーヒー イタリアンコーヒーというと、従来機械ばかりの紹介が多かったが、今回イタリアからベテランの職人が来て本格的なカプチーノの作り方を紹介していた。写真15、16。また、エスプレッソバーの店舗の紹介もあり、も出ていたので今後の普及が見込まれる。写真17
写真タイトル
写真1、2
コンビニエンスストアーなどを対象にしたベーキングシステム。発酵後冷凍生地と専用オーブンを使用し、誰でも焼き立てパンを作ることができるようになった。中小のCVSがテストしているが、大手CVSもこれを活用した新業態を考案している。
写真3
バスケットの下に見えるのがテフロン板で、バスケットを出し入れするときのみ左右に開き、普段は湯面を覆って蒸気を出さないようにしている。CVSの店内調理用として開発中。
写真4
大手FRの低価格和食チェーンに採用された。バスケットごとに時間を調整できるので多品種の麺を調理することが可能。
写真5
インピンジャーを製造しているメーカーが同種の特許を元にコンベアーの代わりにターンテーブルを用いたエアーインピンジメントオーブン(食品の上下から高速の熱風を吹き付け高速調理する方式)を発表した。今後マイクロウエーブの混合タイプの開発も考慮中。
写真6
ジェットオーブンを製造している国産メーカーが写真5と同様の機種を発表。昨年発表したが、使用を大幅に変更し本格的に販売を開始した。エアーインピンジメントタイプとマイクロウエーブを組み合わせている。
写真7
ヨーロッパで販売されている、油不要のフライヤー。食品中の含有油脂を利用し、高速の熱風を循環させることにより、揚げたように状態にする。従来からあった調理方法に、食品中の蒸気量を感知し最適な調理状態を実現させたのが特徴。
写真8
電磁誘導加熱を採用した大型炊飯器。家庭用で一般的になった電磁誘導加熱方式を大型炊飯器に応用した。細かいプログラムが可能であり、最適な状態の炊飯を実現できる。
写真9
ガス式の全自動炊飯器。あまり細かい設定の得意でなかったガス炊飯器もマイコンを活用し、細かい炊飯設定を可能にし、全自動洗米機と組み合わせた。
写真10
ガス式のローティサリーオーブン。従来のガス式は細かい設定が不得意であったが、コントロールの精度を上げ使いやすくした。
写真11
国産の小型スチームコンベクションオーブン。小型のガススチームジェネレータの開発に伴い、多段式の小型スチームコンベクションオーブンが開発されている。
写真12
イタリヤ製のスラッシュドリンクディスペンサー。簡単に言うとかき氷だが、ソフトドリンクの代わりにカクテルを凍らせたフローズンカクテルが米国で人気だ。
写真13
スペイン製のスチームコンベクションオーブン。価格が安い割に品質がよいということで大手厨房機器メーカーで取り扱いを開始している。
写真14
ピザテーブル、ミキサーなど、輸入の低価格の商品が増加している。
写真15、16
イタリヤで10年以上の年季が入ったコーヒーの専門家。まさに芸術家だ。 彼が入れたカプチーノはきれいな模様が入って飲むのがもったいないくらいだ。
写真17
エスプレッソバーも紹介されている。欧米ではショッピングモール、駅の構内、図書館などで設置され、気楽にコーヒーを楽しめるようになっている。

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