96年度予想(商業界 飲食店経営1996年1月号)

景気の低迷状態の中、会社ではリストラ、リエンジニアと息をつく暇がないが、いくら自分ばかり頑張っても良くなるものでもない、少しひと休みも必要だろう。96年のキーワードは「ちょっとひと休み」「リラックス」等だ。バブルが弾けた今、接待ではない自腹を切っての食事が中心だ。家族や友人とレストランに行く時間が増えるだろう。会社は従業員を絞るだけでなくリラックスさせる必要があり、気分転換のためにカジュアルフライデーが盛んになる。ネクタイをしないカジュアルの服装でいけるリラックスしたレストランが求められるようになる。

サービスもちょっと一息が必要で、従来の一期一会の緊張したサービスでない、リラックスしたほほえみが必要になる。

以下に96年のびる業種

オープンキッチンのレストラン(ニューヨークグリルや銀座キハチのようなカジュアルで価値のある料理)
洋食の雰囲気ので気軽に食べられる和食(ブラッセリー六三郎)
家では食べられない食事(すかいらーくグリルや、ステーキ&ステーキのローストビーフ専門店)
雰囲気の良いテーマレストラン、
インターネットによる新しいビジネスチャンス(インターネットカフェ、通信販売など)
以下参考資料
テーマレストランがはやる理由
ではなぜ米国でテーマレストランがはやるのだろうか。その背景を見てみよう。米国の景気は日本より5年は先行している。バブルがはじけたのも日本より早かった。当然レストランのトレンドも日本より早いわけだ。バブルの時にはヤッピーだのディンクスなどの人種が、着飾りグルメレストランに通った。単価は100ドルも越えるようなフレンチレストランに通ったのだ。それがバブルがはじけ高級なフレンチレストランに行ける金がある人がいなくなってしまった。また、フレンチレストランで高級な食材を食べてもあまり美味しくないことにも気がついた。フレンチレストランに行くには背広を着てネクタイをして、店の前にはBMWやベンツを乗り付けなければいけない。(一時の日本と全く同じだ)つまりかなり無理をして格好をつけて食べなければいけなかったわけで、あまり気取っては食べる物をじっくり味あうわけにもいかないわけだ。
そんな贅沢な生活が経済上の理由で出来なくなっても、破産したわけではないから、やはり美味しいレストランには行きたいわけだ。ところが、美味しい物は食べたいが、肩が凝るようなサービスのレストランではなく、ネクタイをしなくてもくつろいで食べるところを求めるようになってきた。フランス料理はバターを使いしつこいし、もっと普段食べていたような食事を気楽に食べたいと思うようになった。

基本的に米国人はステーキが好きであったが、栄養問題で肉を離れ、チキンや魚を食べるようになった。フランス料理店のように雰囲気はあるがもっとカジュアルで、料理もシンプルな健康的な物を求めるようになってきた。そこにでてきたのが、パスタ、ピザを中心とするカリフォルニアスタイルのイタリアンレストランだ。  酒もそうだ。従来は食事の後、強い食後酒を楽しんだのだが、健康の問題と飲酒運転取り締まりの強化により、食後はコーヒーを飲むようになった。でも従来のような薄いアメリカンコーヒーでは物足りない、酒に変わる変わったコーヒーがないかという事で、イタリアンコーヒーのエスプレッソが人気を呼んでいる。

最近の研究で、魚を大量に食べても心臓病の問題が減少するわけではないし、鳥肉も大量に食べれば牛肉以上のコレストロールの摂取になると言う事がわかってきた。それならたまには美味しいステーキを食べ用じゃないかという機運がでてきた。しかし、ステーキも従来のような高級ステーキやでネクタイをしていくのは嫌だ。気楽な格好で美味しい物を食べたいという要望がでてきた。そこでオーストラリアのクロコダイルダンディーのイメージをテーマにしたステーキレストランのアウトバックが出現し大成功した。同じコンセプトでローンスター、ちょっと高級でシカゴのモートンが支持されている。これらの店舗はテーマレストランのようにしっかりしていながら、サービス、食事の質が素晴らしいのが特徴だ。

米国の状況で忘れてはいけないのは人口移動だ。最近は老齢化が進んでいるのと、産業の盛衰のために、人口が南に移動しつつある。フロリダやメキシコの近くにだ。そして移動した土地の食事を食べる内にそれがすっかり気に入り、その食事を出すレストランが急に人気がでてきた。それが、カリビアン料理とテックスメックス料理だ。テックスメックスはテキサスからメキシコ周辺で食べる、トウモロコシや豆を中心にした料理と、バーベキュウ料理の組み合わせだ。あまり油を使わない、繊維質の多い食事が特徴だ。カリビアン料理はケイジャンや中南米、メキシコ料理の影響を受け、やはり繊維質の多い健康な食事だ。

そして、ステーキ、イタリアン、カリビアン、テックスメックスの各人気料理と、食事を楽しくさせるテーマレストランがドッキングし、有名チェーンが続々と出現している。

顧客満足度とテーマレストランの典型的な成功例・プラネットハリウッド
此のノードストロームなどで成功した顧客満足度を取り入れて急成長中のチェーンはプラネットハリウッドだ。プラネットハリウッドはスターのシルベスタ・スタローン、ブルース・ウイルス、アーノルド・シュワルツネッガーが出資して出来たテーマレストランである。正直を言うと筆者はテーマレストランは単なる際物であると思い最近まで興味を持っていなかった。
3月にサンフランシスコに行ったとき、マーケットストリートに工事中であり、9月に再度訪問したときには開店していたので、見るだけ行こうと行ってみた。ちょうど、筆者の好きなサウサリートのスコマに夕食を食べに行く前であり、ちょっと見せてよと声をかけた訳だ。見るだけだとあまりいい顔をしないだろうと思ったら、予測に反してにこにこと案内してくれて、どこでもみてもいいよという親切な応対だった。すっかり気に入って食事の後また訪問した。

入り口で並んでいたら番がきたのでマネージャーがウエイトレスの後をついていくようにいってくれた。普通なら席の用意が出来たからご案内します。などというのだが、ここでは「あのかわいい顔をしたおねーちゃーんの後をついていってください」と、にこにこしながらくだけた調子で話しかけてくる。

席に着いた筆者たちはスコマで腹一杯になっているから、飲み物と数品の料理を頼んだだけだった、しかし、担当のウエイターは嫌な顔一つしないでサービスしてくれ、僕たちが写真を撮り合っていたら、すぐに手伝ってくれた。帰りがけにトイレに寄って行ったらその管理のすばらしさに感激した。米国の高級レストランやバーなどではトイレに年とった老人をおき管理させている、手を洗うとタオルなどをくれ、帰りにチップを上げるわけだ。筆者は米国に住んでいるときから此のシステムになじまず、チップなど上げたことがなかったが、ここでは初めてチップを気持ちよく上げることが出来た。かっこの良い若い男の子が店舗のTシャツをきてきびきびとサービスをしてくれるのだ。会話まで楽しめるのだ。あの暗いトイレの印象がまるでない。ここまでサービスの行き届いたレストランは珍しい、まるでディズニーランドののりなのだ。

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