外食ニュースクリップ「四十八漁場(よんぱちぎょじょう)」(商業界 月刊コンビニ2012年2月号)

2011年3月11日に発生した東日本大震災で外食業界は大打撃を受けた。震災後の企業や人々の自粛ムードや電力不足により、夜の営業が中心の居酒屋の売上は激減した。大手居酒屋チェーンの大庄も100店舗近い店舗の閉鎖に踏み切るなど、体力のある企業も苦境に追い込まれている。
その中で元気なのが中小の居酒屋だ。経営不振の大手外食企業を退職したベテランが小型のワインバーや個性的な居酒屋を経営して大繁盛だ。
景気低迷はテレビ番組にも現れている。制作費の安い食をテーマの番組が増えている。2011年9月15日にテレビ東京系列の『カンブリア宮殿』で「生産者直結」の居酒屋企業エーピーカンパニーが紹介されて大評判だった。
同社は創業10年ほどで地鶏、鮮魚、ホルモンの3業態を軸に16業態96店を経営している。同社の強みは自ら農場を運営したり、漁船を所有して漁業に従事したり、生産者と直接契約するなどして、生産から販売までを一貫しているのが、売り物だ。
同社の最新業態が五反田に開業した四十八漁場(よんぱちぎょじょう)だ。社員が自社所有の漁船で漁をし、漁師からも直接魚を買い付けるという、食材の顔が見えることが売り物だ。五反田の駅上アトレに7月に開店した。
先日訪問して感心したのは店内内装、メニュー、従業員の説明に至るまで、産地直送を丁寧に訴求していたことだ。そして、従業員の教育訓練も徹底しており、食材の特徴から調理方法まで丁寧に教えてくれる。感心したのはサービスで、大盛りのお刺身の盛り合わせを1/3ほど食べたら、テーブルの上を空けるために小皿に盛りつけし直す際に、わざわざお洒落なサラダを作ってくれた。刺身に使うワサビをお魚の形にしたり、青のりを星型で出してくれる。鯵のタタキを(ボリュームたっぷりの)を途中まで食べたら料理をし直してくれるという。何とハート型に整形してから、薩摩揚げのように軽く揚げてから焼きあげてくれた。思わず歓声をあげたくなるサービスだ。
食材のこだわり、従業員の教育、お店の雰囲気、等、バランスが素晴らしくこの不況下で成長を続けている理由がよくわかる。

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