キッチンスタディー 93年NRA報告#2(柴田書店 月刊食堂1993年9月号)

キッチンの能力を高める最新機器の知識

キッチンスタディー第九回

NRA現地リポート<下>

飲料機器
(1)スペシャルティコーヒー機器
現在、シアトルを中心とした米国西海岸でスペシャルティコーヒーが爆発的に流行っている。マクドナルドやバーガーキング等でもエスプレッソやカプチィノを売っている位なのである。今回のショーでもエスプレッソバーやキオスクスタンドが数多く出ていたので、その機器と、レシピーを見てみよう。
米国ではこの30年間に大人のコーヒー消費量は1日3カップから、1.75カップへ落ちているのにも関わらず、スペシャリティーコーヒーの消費量は増加しているのである。1994年までにはスペシャリティコーヒーの消費量は全体の1/3までになるであろうといわれている。スペシャリティコーヒーは4つの種類に分けられる。

1)ストレートコーヒー
ブレンドをしていないキリマンジャロとかブルーマウンテン等のストレートコーヒー。
2)ブレンドコーヒー。
3)フレーバーをつけたコーヒー
フレーバーをつけたコーヒーはスペシャリティコーヒー全体の50%をしめる。ただフレーバーには流行がある事に注意する必要がある。今年の流行はヘイゼルナッツ、アイリッシュコーヒー、チョコレートアーモンド、シナモン等である。また季節にあったフレーバーをつけたりもする。一般的に好まれているのは、ココア、バニラ、フルーツ風味等である。フレーバーはどのタイプのコーヒー豆にもつける事が出来る。フレーバーは新鮮なローストしたての熱い豆にフレーバーのオイルやパウダーをかけてつける。保守的なコーヒー愛好家はフレーバーコーヒーを嫌がるが、新しい物好きの若い人や、ローカロリーのデザートを必要としている人達に愛用されている。
4)エスプレッソコーヒー
コーヒーをガブ飲みする時代から、エスプレッソ等の大変高品質の濃いコーヒーを小量飲むという時代になってきており、特にエスプレッソは全年齢に好まれるようになってきている。エスプレッソとは濃いめにローストした豆を細かくグラインドしそれに高圧の湯を通して、クリーミーな濃いコーヒーをいれるのである。エスプレッソコーヒーの機械は2、000~5、000ドル位と大変高いが1パイあたりの原価は25セント位であり、売価が普通のコーヒーが1ドル位に対し、最低でも1.5~2.5ドルになるので1年以内で償却できるといわれている。
それでは,エスプレッソコーヒー類の作り方を見てみよう.
1)基本のエスプレッソ ESPPRESSO
1パイのコーヒー粉の分量は7g。かける湯の量は、59.2CC。湯の温度は93℃である。コーヒーの粉をファンネルに入れ、スタンピングといって、粉を固める作業をする。これにより圧力が8.8kg/cm2になった時に湯がコーヒーの粉の間を通って、クリーミーな泡立ちのコーヒーをいれる事が出来るのである。この、スタンピングの作業にムラがあると、クリーミーなコーヒーをいれる事が出来ず、泡がすぐ消えてしまうのである。出来上がりのコーヒーの量は37ccである。写真1は、コンピューターで常に一定の圧力でバルブが開くようにしたエスプレッソマシンであり数少ない米国製の信頼製の高い機種である。
2)カプチーノ CAPPUCCINO
1/3の量のエスプレッソコーヒー、1/3の量の65℃に加熱したミルク、1/3のミルクの泡で出来ている。
全体の1/2が飲料部分となる。泡の部分に好みにより、粉ココアやシナモンを振りかける。

3)カフェラテ CAFFE�LATTE
1/3のエスプレッソコーヒー、2/3の65℃に加熱したミルクで出来ており、泡はいれない。
一般的に、ヘイゼルナッツ等やアーモンドのシロップを入れる。

写真2.3はいろいろなエスプレッソバーやキオスクのデザインであるので参考にして戴きたい。
写真4.5は現在シアトルを本拠地に急速にコーヒー専門店を展開しているスターバックスのシカゴ市内の店舗である。この店舗では朝の1時間にコーヒーを35ガロン(132リットル)売るとの事である。1パイ500CCのカップサイズが中心であるから、265杯も売れる事になる。

その為普通のコーヒーマシンでは間に合わないので、写真6の大型のアーンコーヒーマシンでコーヒーを入れそのコーヒーを下のタンクに注入し、それを写真7のカウンターのタワーにまで持っていき、空気の圧力で、ビールディスペンサーの様にお客様の方を向いたままカップにそそぎ込むような機種を開発している。従来のコーヒーマシンだとオーダー毎に後ろのカウンターに振り向きコーヒーをいれ、お客様の方に向き直り手渡し金を受け取る、という作業であったが、この方式により常にお客様に対面しながら作業を行える為サービスが早く楽になるのである。このような機種は駅の構内などの大量のお客様を捌くキオスクタイプの店舗での活用が考えられる。

(2)濃縮液体コーヒー機器
コーヒーの機械は二極分化しつつある。完全自動のコーヒーマシンと、インスタントコーヒーマシンである。完全自動のコーヒーマシンはスペシャリティコーヒーの専門店で使用されるようになってきており、高価ではあるが、味がよいのが特徴である。反面サービスのスピードを要求する現代では、インスタントコーヒーディスペンサーの需要が出ている。従来インスタントコーヒーディスペンサーというと、取扱いの簡単な写真8のフリーズドライのコーヒーを使用する物であった。味は悪くないのであるが、家などで飲み慣れている為にインスタントコーヒーである事がわかってしまうのである。米国では品質より大量に捌く必要性のある刑務所や夜間の工場の食堂等で使用されている。
しかし現代では、本物の豆から抽出したコーヒー液を濃縮し、フレーバーが飛ばないように冷凍したタイプが出てきた。使用するときに解凍し、フレーバーを維持するために冷蔵庫を備えたコーヒーマシンで、必要な希釈の湯と正確に混合し美味しいコーヒーを作ることに成功している。日本でもヨーロッパの機械が使用されているが、米国の特殊コーヒー機器製造メーカーも日本向けに開発をしている。写真9

このメーカーは御客様の要望に応じて機器の能力を変えるという柔軟さが特徴である。 濃縮液体というと味を心配される方が多いが、味の点では品質はかなり良くなっており、現在では高級ホテルで出されている位の品質にまでなっている。コーヒーアーン等で抽出してから長時間経過し、劣化したコーヒーより遥かに品質は良いのである。

また、現在問題になっているのは、都内ではゴミの処理が難しくなって来ているという事である。特に地方自治体の施設などではコーヒーやお茶などでだし殻を出さないで欲しいという要望があり、今後とも濃縮液体の飲料機器の需要は大きくなる物と思われる。

(3)コーヒー機器の応用
日本でもコーヒーは大変好まれているが、まだ嗜好品であり、消費量は米国とは比較にならない。日本ではコーヒーより飲まれているのが、日本茶と味噌汁、麺類等の汁がある。最近ファミリーレストランなどで味噌汁が出されるようになってきたが、味噌汁というのは作るのが案外大変なのである。ダシからキッチリ取るという作業はアルバイトでは難易であり、匂いが他の洋風の匂いと合わない。また作った味噌汁を火にかけ保温しておくと味が煮詰まり美味しくなくなるという問題もある。牛どん店等でフリーズドライのタイプの味噌汁も出ているが味が今一歩である。それを補うのが、ダシと味噌を合わせた液状の味噌汁ディスペンサーである。この場合味も手作りとほとんど見分ける事が出来ず大変品質が良い。現在日本で売られているタイプは、能力が低いので先に挙げた、濃縮液体コーヒーマシンを活用した能力の高い味噌汁ディスペンサーが開発されている。
これを活用すると、その他に、ラーメンや日本そば、うどん等の麺のスープのディスペンサーが考えられる。現在日本でも既に存在するが余りにも値段が高いので濃縮液体コーヒーマシン等を応用したコスト的に妥当な機械の登場が望まれる。

特に、蕎うどん店等では、厨房の環境が悪いという事で、電化厨房を検討されている所が多い。電化厨房というと、厨房に熱気を出さないようにガスレンジなどを電磁誘導加熱等に変更するようであるが、従来と同じ調理方法では効果が少ないのである。厨房の環境を良くするには、裸火を使わないのと同時に、冷凍麺を使用しゆで麺機の代わりに密閉型のスチーム解凍加熱機を使用する。そして湯煙を出すダシ取りの鍋やゆで釜を無くす事が重要なのである。厨房で最も空調に負荷をかけるのは裸火と高温の蒸気なのである。

(4)ビールディスペンサー
米国に比べ日本が大きく遅れている機器はビールディスペンサーである。日本の生ビールは冷却しないで流通するタイプのものが主流のため、瞬間冷却方式が、主流を占めている。しかしビールの種類が増えるとともに、専門店ではビール樽を冷蔵庫内部で冷却しておき、それを、ディスペンサーまでパイプ内部を冷却しながら圧送するビール・サークルシステムシステムが見られるようになってきた。しかしながら、日本のシステムは炭酸飲料のシステムと同様に水を冷却媒体として使用するために、冷却能力が弱く、現在まだ長い距離を圧送出来ないという問題がある。ビールの消費量の増加にともない、水の変わりにプロビレングリコールを循環し冷却するシステムが出てきた。プロピレングリコールは車のラジエターの不凍液として使用されているように、凍らないという特性を持っている。グリコールと水の混合比を変える事により凍結点を変える事が出来るので、それを利用しビールの温度を最適にコントロールし、異なった温度帯のビールを100mも圧送する事が可能になっている。
また現在圧送する為に炭酸ガスを使用しているがその炭酸ガスがビールに溶け込んで、泡立ちが起こるのである。ビールメーカーは窒素を混入させ必要以上の炭酸ガスが混入しないような対策を研究中であるがコストが高いためまだ普及に至っていない。写真10のシステムはミクロフィルターでろ過し細菌を除去した空気を炭酸ガスと混合するシステムで安価に炭酸ガスの過剰混入を防ぐシステムである。

最近は、二毛作という考え方でコーヒー専門店が夜になるとビールを提供しだし、それに伴いファーストフード業界でも生ビールを出す時代になってきた。その為ビールといえども早くサービスする事が要求されてきている。写真11はタッチセンサーを使用し両手で2つのカップを持ち注ぐ事の出来る機種である。忙しい店舗ではこんな機種が必要になるであろう。ビールを早くカップに満たすのには、泡が出すぎないように炭酸ガスの混入量をコントロールする事とともに、冷却能力の安定化が大事である。

(5)炭酸飲料ディスペンサー
日本の炭酸飲料ディスペンサーのマーケットはファーストフード以外余り大きくはなく、また米国製のディスペンサーは大型でスペースの問題があり殆ど国産が使用されている。しかし、この円高で国産の機種の値段が高価になりすぎたという事と、米国のメーカーが日本の事情を理解し、小型の機種を作るようになり、数社が輸入の検討を開始している。写真12の小型のディスペンサーは日本のマーケットに合わせて開発した機種である。また、写真13の大型の能力の高い機種も日本の大手ファーストフードに、国産品より能力が高くコスト的に有利であるという理由で採用されている。炭酸飲料ディスペンサーの世界はもう性能ではなく、コストパフォーマンスを考える時代にきているのである。勿論、日本に導入する時には、日水協の規格を通らなければならないので、そう簡単ではないという事は留意して戴きたい。また、ディスペンサー以外にも、製氷機やリーチイン冷蔵庫等も品質が高く、かつコストが低いので今後日本のマーケットに数多くの米国製の冷蔵機器が見られるようになるであろう。
(6)水の浄化装置
従来日本では美味しい水はただで無尽蔵であった。しかし近年の環境問題から大都市の水の品質は極端に落ちている。東京の多摩川浄水系の人はそんなに感じていないが、大阪の琵琶湖水系の水は、夏になると藻の為かび臭くとても飲める水ではない。もう大都市では水道水でも水の浄化装置は必需品である。水の浄化装置としての種類は、活性炭でカルキ臭やカビ臭を除く物が一般的であった。その後普及し出したのが、中空糸膜で0.1ミクロン以上の不純物をろ過する物である。現在最も進んだシステムといわれているのは、逆浸透膜である。これは、海水の淡水化に使用されていたシステムで、中空糸膜より更に微細な孔により不純物を除去する物である。
水の浄化装置の問題点は、ろ過した後の水からは、殺菌材としての塩素も除去されてしまうという点である。塩素のない水は雑菌が繁殖し易くかえって危険なのである。写真14の水の浄化装置は、逆浸透膜で浄化後の水を雑菌の繁殖から守るために、紫外線を照射し、更にオゾンを発生する装置をつけ加え、水の雑菌を完全に死滅させる事が可能になっている。

きれいな水というと、ガラスやプラスチックの大型ボトルに入れた水をオフィスや家に宅配するシステムが米国で盛んであり、日本にも登場してきている。現在問題になっているのは配送である、水は濃縮出来ず、さりとてそんなに高価には出来ない、そうすると、どうやって宅配のコストをカバーするか、また重い水を誰が配送するのか?という問題が出てきている。炭酸飲料の販売会社でもそれは深刻な問題である。労働人口の老齢化を迎え、重労働であるルートセールスに頼らない集中配送を検討しているくらいなのであるのだ。そこで、この水処理のシステムを利用し、水の自動販売機を作ったり(スーパーの店頭においてある)、プラスチックボトルクーラーに見せかけたディスペンサーを開発しているのである。

新しいレストランチェーン
米国では栄養の観点から、フライドチキンのマーケットは完全に縮小しつつある。しかしながらチキンその物はビーフより健康に良いという事でフライをしない調理法のローティサリーオーブンで調理したチキンのチェーンが新たに出現した。西海岸でもエル・ポヨ・ロコが盛んで日本にも進出したが、味が馴染まず失敗した。肉質がドライすぎたのが大きな原因ではないかと思われる。米国人はササミ等のホワイトミートを喜んで食べるが、東南アジアや日本では、もも肉などのダークミートを好むのである。また調理方法も肉がジュウシーでないと好まれないのである。
写真15~17はシカゴを本拠地にするボストンチキンである。オーブンで調理しているところをお客様から見えるようにし、焼き上がった丸毎の鳥を、目の前でカットしシズル感を充分に出している。また栄養対策として鳥肉のみではなくカウンターの下に温野菜やパスタのサラダを並べ、同じく焼き立ての温かいコーンブレッドと共に提供するようにしている。温野菜やパスタはスチーマーを使用し調理しており、売上の20%以上を占めている。日本にも進出している、ビデオチェーンのB社の元幹部達が入社しており、かなり早いチェーン展開を考えており、今後目の離せないチェーンであると思われる。すでに日本への進出も検討しているようである。味はエル・ポヨ・ロコよりジュウシーで柔らかく食べ易いので日本でも流行るのではないかと思われる。米国フライドチキンの大手のチェーンも栄養対策として、同様のプログラムを検討せざるを得ないようであり、すでに一部の地区でテストマーケティングを実施中とのこである。

*最後に
現在日本のレストランチェーンは建物のコストダウンを実施中であるが次には、厨房機器のコストダウンに入らざるを得ないと思われる。
米国のレストランショーでは日本の事情に合った機器の展示は少ない様に思われ易いが、良く機器の構造を理解しメーカーに説明できれば、日本で使える機械をより安く開発出来るのではないだろうか。

皆さんも9月のNAFEM(全米厨房工業会展示会)に参加されてはどうだろうか?

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