お店の活気の作り方「なかよくコンセルボ・岡野食品広報誌」売上げ促進 第二回目原稿

私は30年ほど前に百貨店の食品売り場でドーナツを売ったことがあります。レストラ
ン西武(現、西洋フードシステムズ)のダンキンドーナツです。ダンキンドーナツはイー
ストドーナツといってパンと同じく発酵して揚げるドーナツを販売していました。本格的
な店舗展開の前に百貨店の地下食品売り場のショーケース2本でテスト販売することにし
ました。他の食品と並べて販売することにより実力がわかるし、日本の消費者の評価も聞
けるという趣旨でした。
しかし、目論見と異なり、私の前任責任者の時代には売上がどんどん下がっていました
。店舗に赴任した私はまず、売れない問題点を調べて見ました。その結果わかったのは、
店舗のイメージ、挨拶、品揃え、陳列方法、商品説明、試食販売、等に問題があるという
ことでした。
豊富な食材を売っている広大な百貨店の地下売り場でお客様に買ってもらうには、数多
くの売場の中からドーナツの売場に立ち止まらせる工夫が必要になります。そこで目立た
せる事ために、ドーナツのポスターとドーナツの歴史をかいた派手なPOPを掲示しまし
た。
立ち止まったお客様に対しては、すかさず元気な声をかけて買う気持ちにさせる商品説
明が必要になります。その部下女子社員を見て驚きました。私の母くらいの女子従業員た
ちだったのです。しかも、制服はだらしなく、汚れたエプロンを着用し、靴も履かないで
サンダル、髪の毛も乱れて疲れ切った表情だったのです。その上、店舗売上がどんどん下
がっていったことが、従業員の気持ちや態度に現れ、暗い雰囲気となっていました。
そこで、まず服装をきちんとさせ、髪の毛の結い方、化粧の方法まで細かく指導しまし
た。年齢が高いパートの女性でも髪の毛や化粧をきちんとし、きれいなユニフォームを着
せれば、結構格好がよく見えるものです。
さて、彼女たちはレストランで働いていた女子社員でした。食品を売るのだからレスト
ランも地下食品売り場も同じだと思うのは大間違いです。食品のショーケース販売にはそ
れなりのノウハウと訓練が必要になります。必要なノウハウと訓練とは、大きな声を出し
、他のショーケース販売のマネキンに負けないようにすることです。そこで、「いらっし
ゃいませ」からセールストークまでの文章を色々な状況を設定して作り、毎日売場にたつ
前にロールプレイで、それを10回唱えさせました。しかし、ロボットのように喋られて
も効果がありません。そこで、笑顔を出す練習をさせました。笑顔なんていうのは単なる
顔の筋肉の動かし方です。お客様の顔を見たら条件反射のように笑顔がでるように訓練す
ればよいのです。まず鏡の前で冗談を言い笑わせます。そしてその顔の筋肉の状態を鏡を
見ながら覚えさせるのです。心からの笑顔がでるように、自分が楽しいときの光景を頭の
中に思い描かせ自然な笑顔を出させるようにしました。もちろん気分が良くないと笑顔が
スムーズにでませんから、常に冗談を言ったりして笑顔がスムーズにでるように心がけ、
私がまず実践して見せました。
 次に立ち止まらせるためにキャッチフレーズを作りました、「アメリカからきた、世界
最大のドーナツチェーンで52種類の新鮮なでき立てのドーナツです」と叫ばせたのです
。 
 彼女たちへのトレーニングだけでなく、私の仕事に対する熱意や情熱を見せる工夫をし
ました。コミュニケーションをとるために、勉強会を開催し、全員が会社の方針、やり方
を理解できるようにしたのです。最初の内、年上の女子従業員たちは、私のような若造の
言うことをあまり聞きませんでした。しかし、売り場に活気がみなぎり、売上が上がり出
すと、私のやり方を認め、ちゃんと言うことを聞くようになってきました。

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