レンズ豆のスープ

南イタリア美食便り

9月15日から娘が通う高校も新学期です。2020年の2月から今年の6月まで行われていたリモート授業も基本的には停止で生徒全員が登校する形での始業となりました。生徒本人が陽性もしくは濃厚接触者となった場合はリモート授業も並行して行われることになるようです。2週間ほど前から未成年者も親の同意を得て予約なしにワクチンを打てるようになりました。9月現在プーリア州全体では12~19歳のワクチン接種率は70%前後というデータを見つけましたが、娘の通う学校ではどのくらいかはわかりません。

小学校の時からお世話になっていたスクールバスは義務教育が終了する15歳までしか利用できないので残りの高校生活3年間は自力で通わなくてはなりません。学校から家までアップダウンのある4kmの田舎道、喜んで自転車で通うタイプの子ではないので、親が車で送り迎えというのが、現実的なところです。私自身も満員電車が大の苦手だったので高校時代は通勤する父の車に便乗して通学していました。時代も環境も大きく異なりますが、思春期の難しい年頃であることには変わりありません。毎日の送り迎えで片道10分間ほどの二人きりの車内が貴重な場になる気がしています。

朝夕はめっきり涼しくなってきましたので、今日の昼食はレンズ豆のスープを作ろうと思います。レンズ豆といえばインド料理のダールカレーが思い浮かぶ方も多いかもしれません。イタリアでは野菜のソフリット(香味野菜を炒めたもの)と一緒に水で煮るのが一番ポピュラーです。カレーのようにたくさんスパイスを入れることはありません。我が家では仕上げにたっぷりのオリーヴオイルとプーリア特産のリコッタフォルテというリコッタチーズを発酵させた豆腐窯のようなペーストを加えます。小さめのショートパスタや白米と一緒に食べることもあります。レンズ豆の良いところは鉄分やタンパク質が多くカロリーは少ないところ、そして乾燥豆なのに水につけておく必要がなく洗ってすぐ調理でき、短時間で煮上がるところです。日本ではアメリカやカナダからの輸入品が主流のようです。今後食肉以外のタンパク源としてもっと一般的に食されるようになり得る食材だと思います。

健康的な食生活の代表的存在である「地中海式ダイエット」でもタンパク源として肉食を抑えて豆類を多く食べるように推奨しています。プーリアで一番よく使われるのはそら豆ですが、ひよこ豆、レンズ豆もよく食べます。インゲン豆はどちらかというとイタリア北部のイメージです。やはり南イタリアは歴史的な中東、アラブ文化の影響が今も強く残っているという事かもしれません。
ちなみに、イタリア料理には大豆を使ったものは私が知る限りありません。和食人気の影響で豆腐、味噌、醤油が、健康志向の商品として豆乳が一般的になってきていますが、大豆はイタリア人にとってはエキゾチックな食材です。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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