ハロウィンとノヴェッロ

南イタリア美食便り

10月最後の週末にヨーロッパでは夏時間が終わり、時計を1時間後ろ戻します。これで日本との時差は8時間となります。今年は丁度月末とも重なりました。10月31日はハロウィンですが、イタリアではアメリカのような大々的なお祭りではなく比較的最近親しまれるようになったイベントです。とは言え大人も仮装して大騒ぎするのはカルニヴァーレ(カーニバル、謝肉祭。例年2月末か3月初め)の時で、地元プーリアの田舎町ではハロウィンには各商店で用意しているお菓子を求める子供たちが魔女やドラキュラのコスチュームを着て目抜き通りを練り歩く姿がちらほら見られるくらいです。むしろ、翌日11月1日の万聖節の方が大事な祝日で、2日の死者の日にはお墓参りに行くのが習慣になっています。また11月は死者の月とも言われ、今は気にしない人も多いようですが、伝統的には結婚式は行われません。大きな宴会場を持つ店では1ヶ月間店を閉めるところもあります。クリスマスの繁盛期の前にレストラン関係者が一息つく時期です。

日本でも新酒が出回る時期かと思いますが、ヴォジョレー・ヌーヴォーより早い10月30日にイタリアワインの新酒、ノヴェッロが解禁になります。ノヴェッロはイタリア各地の様々な品種のブドウで作られますので、ヴァラエティに富んだ味、色、香りが楽しめます。熟成させずに飲むタイプのワインで、全般的にフレッシュで飲み易いのが特徴です。イタリア国内よりも海外市場向けに作られる傾向があり、プーリア産も日本で数種類入手可能です。和食を初めどんな料理にも合わせ易いと思いますので、是非お試しあれ。我が家では暖炉の灰で焼いた栗と一緒に飲むのがこの時期の楽しみです。この時期にしか出回らないオリーヴェ・ドルチェのソテーとも相性はバッチリです。
オリーヴェ・ドルチェとはスイーツではなく、渋抜きをせずに生のまま炒めるだけで食べられるオリーヴのことを言います。品種的には数種類ありますが、黒紫色の皮、実は大きめで柔らかく水分を多く含んでいます。香りはヴァニラにも似て、塩漬けのテーブルオリーヴとは全く違った趣のもの。旬はこの時期2週間くらいと短く、オリーヴ王国、プーリアでも希少価値があります。冷凍も可能ですがやはり風味が落ちます。イタリア人でも食べたことのない人の方が多いような珍しいものですが、このような流通されにくい品種ほど日本国内で生産出来れば欲しがるシェフはたくさんいると思います。

ワイン同様、オリーヴはイタリアの食文化には欠かせない食品です。食文化と切っても切れない関係性にある観光業。アグリツーリズム、ワインツーリズムに加えて、オリーヴオイルツーリズムも盛んです。北ヨーロッパから車で数週間のバカンスにプーリアに訪れる人々は皆、車に載せられるだけ目一杯ワインやオリーヴオイルを買って帰ります。その多くがリピーターとなりネットで生産者から直接買い付けると言う流れです。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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